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きわものかと思って観たが、脱帽! 涙と感動のコメディだ。警官とサッチャーは共通の敵だと炭鉱労働者の支援に立ち上がるゲイとレズビアン達、両者の「連帯」と「団結」は成り立つか。この過激さ、自由奔放さ、社会を見つめるリアルな眼差し! 50年代に世界を席巻したアングリー・ヤング・メンの映画やフリー・シネマ運動の伝統がこの作品の根底を支えているようだ。後年同性愛者の権利が議会で認められた際、最も強い支援をしたのが炭鉱労組だったという後日談が泣かせる。
「ニキータ」「アサシン」「エンジェル ウォーズ」などから「キル・ビル」「キック・アス」に到る美少女キラーものも今や一つのジャンルになったと言って良いだろう。ラルフ・ジマンはスタイリッシュな映像でこの近未来アクションドラマを巧みに描いてはいるものの、どのシーンにも既視感がつきまとう。ヴァイオレンス描写を過激にするだけでなく、何か新しいアイディアを盛り込まない限り、マンネリ化は避けがたい。一昔前なら、斬新な作品とし衝撃を受けたかもしれないが。
今や移民の出ない映画のほうが少ない時代であるにもかかわらず、移民の生まれる背景を丁寧に描いた映画は少なかった。主演のリース・ウィザースプーンが登場するまで三十分以上使って、スーダンにロストボーイズと呼ばれる孤児たちが発生した部族抗争、千六百キロ歩いてケニアのキャンプにたどり着く彼らの苦難が描かれる。リースは主演というより狂言回しだが自然体で好演。スーダン人を演じた俳優がみんなすばらしい。以降の就活や土地との交流なども巧まざるユーモアが良い。
前衛作家トマス・ピンチョンが初めて書いたハードボイルド・ミステリ『L.A.ヴァイス』が原作。さすがPTA、小さな脇役にいたるまで登場人物の肉付けがしっかりしているので瞬時も退屈させない。ボギーのサム・スペード、ポール・ニューマンのハーパー、エリオット・グールドのフィリップ・マーローに並ぶ忘れがたい私立探偵像をホアキン・フェニックスは造り上げた。彼が好きなジョン・ガーフィールドを始め、沢山の映画への言及は割愛されているから、映画ファンはぜひ原作を。
出てくる人々の顔がことごとく素晴らしい。特にロンドンから支援に来た若者たちを受け入れるおばさま達(多くは炭鉱夫の妻)の点描が絶妙。「炭鉱夫支援レズ&ゲイ会(LGSM)」という題材選択の勝利だが、群集劇として高度の達成を示す。これだけ多くの人物の感情のうねりをまとめあげた演出の力量は大したものだ。同性愛への偏見とエイズへの恐怖。そうしたサッチャー時代の80年代ロンドンとウェールズのひんやりとした空気のなかで、パレードを行う人々の熱量が伝わってくる。
実写として納得いくかといえば微妙だが、固有の世界観は伝わってくる。近未来の荒廃した都市を構築した美術の貢献が大きい。アンニュイと無表情が入れ替わるような、つまり人間と人形の間を演じるインディア・アイズリーは魅力的だが、いちばんの驚きはオリヴィア・ハッセーの娘だったということ。彼女を助ける若者役のカラン・マッコーリフの清楚な感じもよいが、問題はサミュエル・L・ジャクソン。彼が出ると物語が安定し、未知の世界を垣間見る感じが薄まってしまう。
スーダンの内戦で両親を失った子どもたち。この描写で疑問なのは、客観を装おうキャメラ・ポジション。疑似ドキュメンタリー調だが、ドキュメンタリーでは有り得ない、銃から丸見えの位置にキャメラがいること。しかし、アメリカに舞台が移れば、文化のギャップによるコメディとなる。ここからはアメリカの別の場所に連れて行かれた姉を取り戻す三人の兄弟の奮闘のなかで、性格の違いが出てくるあたりから、シリアスさが勝ってくる。そうしてヒューマンさを際立出せる嘘へと……。
啞然、茫然、しばし覚醒。そして気怠い快楽。同時代的に、ロジャー・コーマンたちが描いたトリップ感ともまったく違う。常軌を逸した殆ど鳴りっぱなしの音楽。その音量の増減が物凄い。意識が音楽に左右され、映像はその遠くに見えている感じ。音楽はジョニー・グリーンウッド。物語はというと、PTA版「メイド・イン・USA」の世界。事件の断片が脈絡なく(ではホントはないのだけど)、ぶつかり合う。ハマって中毒になってしまう観客が多発しそう。これは、ホントに映画?