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連ドラのダイジェストみたいな映画になってるのではと心配したが、力強い演出があってどんどん引きこまれる。「女王陛下のお気に入り」とは違い、本作でドロドロの奸計をめぐらすのは男たち。犠牲になる同性愛者へのシンパシーが表明され、気高く生きようとする女たちの絆が強調されるのだからとてもイマっぽい。それぞれに魅力的な女王ふたりがついに対面する場面が導入部分から最後まで素晴らしく、シアーシャ・ローナンのクロースアップに感動。シックな衣裳と美術もかっこいい。
10代の子が仲間同士で観ても、デートで観ても、家族で観ても、大人がひとりで観ても楽しい万能映画。バトルシーンもかっこいいが、軟らかい画調を選択し、80年代青春コメディのよさを甦らせているのが何より素晴らしい。目の表情が豊かで、ガレージの隅っこで体育座りしたりするバンブルビーがいちいち可愛く、ベビーフェイスのロック少女チャーリーは、ヘイリー・スタインフェルド最高の当たり役と言えそう。小道具の使い方も上手で、あのエピソードが大詰めで生きてくる構成に感動。
アーミー・ハマー演じるマーティンの「理想の夫」ぶりにもぐっと来るが、もうひとつ見逃してはならないのは、この映画が女三代の継承の物語として構築されていること。個人的には、ハーバード法科大学院に女子学生入学を初めて認めた学長が、女性の権利を擁護する進歩的ヒーローとして描かれそうなものなのに、(現実にこういう人だったのか、検証する材料をわたしは持たないが)性差別意識を露わにする人物になっていて、ルースが倒すべき敵として立ちはだかることに興味を惹かれる。
ブラックコメディ(この「ブラック」に人種的意味はない)と言っていいタッチで進行し、端正なカタルシスが待ち受ける。これだけなら70年代黒人映画オマージュを含んだ爽快な娯楽映画で終わるのに、そうしないのがスパイク・リー。そのことは、序盤のクワメ・トゥーレ(演じるのは「ストレイト・アウタ・コンプトン」でもかっこよかったC・ホーキンズ)の演説に、映画全体を不均衡にさせかねないほどの強さを持たせていることからも明らか。A・ドライヴァーが内省的な持ち味を発揮。
「女王陛下のお気に入り」で、オリヴィア・コールマンがアン女王を迫力満点で演じるのを見たばかりだが、この作品でメアリーとエリザベスを競演するシアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーの関係も凄い。女王役は女優たちの演技意欲をそそるのだ。ダーンリー卿役のジャック・ロウデンをはじめ、男優も粒揃いなのに、女王たちの前で権謀術策を謀りながら、かすんで見える。女性の演出ならではのメイクとコスチューム・プレイがよく、メアリーが処刑場に向かうときの真っ赤が印象的。
宇宙を舞台にしたアニメのアクションから地球のライブ撮影に切り替わるところが素晴らしい。「トランスフォーマー」は若者に人気があってヒットしたけれど、新シリーズも車からバンブルビーへの変身が愉快で、ロボット好きには受けるだろう。クリスティーナ・ホドソンの脚本はワーゲンに乗り、ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」を見ていたシニアの感情に訴え、懐かしい作品となっていた。ヘイリー・スタインフェルドの屈折した気分の描きかたなど、製作スタッフも楽しんでいる。
ルース・ギンズバーグを演じるフェリシティ・ジョーンズが男性優位の社会に断固対抗して、颯爽と歩く姿は、さすが時代のヒロインという感じ。だが、1956年当時、彼女が入学したハーバード法科大学院には女子トイレがなかったとは驚く。しかも女性、母親、ユダヤ系であることで、夢であった弁護士になるのさえ容易ではなかったのだ。それだけに、弁護士となってから女権拡張のために戦う長い法廷場面は圧巻。彼女の甥が脚本を書き、女性が監督していて、家族の関係も興味深い。
グリフィスの「國民の創生」からトランプまでアメリカの歴史が映像として引用されるのを見ながら70年代のコロラド州の町でジョン・デイヴィッド・ワシントン演じるストールワース青年が黒人として初めて、刑事に採用されたという事実に驚く。しかも当時の新聞にKKKに関する広告まで出ていて、それが事件の発端となる。スパイク・リー作品がラジカルになる歴史的事実は充満しているわけだ。アダム・ドライヴァーが演じる同僚の白人刑事や悪役のトファー・グレイスが好演。娯楽性もある。
メアリー・スチュアートに一目を置くも激しく嫉妬もしている。そんな複雑な感情を抱いているイングランド女王であるエリザベス一世だが、妙に出番が少ないうえにそうした感情が生まれる経緯が取り立てて描かれるわけではないのでなんだかのめり込めず。また、美貌にまつわる妬みも演じるのはマーゴット・ロビーなので、天然痘で肌がボロボロになろうが髪の毛が抜け落ちようが美しいのだ。女王同士の対峙というテーマで女性監督。期待したのだが、メアリーの悲劇で留まってしまった。
苦悩や傷を抱えたヒロインが、そうしたものを乗り越える場としてクライマックスが機能。ストーリーに重きを置いたうえで、見せ場を構築する。作劇法として当たり前すぎる術なわけだが、従来の「トランスフォーマー」シリーズがそれをことごとく無視していたので驚くと同時に異様に興奮してしまった。バンブルビーとヒロインの日々をいつまでも眺めていたいと想わせてくれるだけでも映画として成功しているといっていいだろう。このテイストでシリーズを続行させてほしいのだが。
女性の権利を摑むだけではなく、男女それぞれに植え付けられた“らしさ”も取り払おうとするギンズバーグ。その真の平等精神に加え、物語の核となる裁判で彼女が助けるのは老母の介護に困窮するオッサンである。おかげで中年男も引き込まれるし、M・レダーならではの無駄なき演出、きっと彼女も映画業界でジェンダーにまつわる嫌な経験をしてきたんだろうな……というこちらの勝手な思い込みも相まって見入ってしまった。とりあえず、F・ジョーンズはギンズバーグに似ていない。
映画人だからこそKKKと切っても切り離せない「國民の創生」を許さない姿勢、コミカルでシニカルなタッチ、そして爆破をめぐるシークエンスで発揮するサスペンスとしてのスリルを忘れぬ職人気質。ヘイトの精神が堂々とまかり通るようになった現在のアメリカ社会に対する怒りが、スパイク・リーの持ち味を炸裂させまくる。さらに、ラストで現実のヘイト関連事件の映像を引っ張り出し、国家の緊急事態を表す逆さになった星条旗を映し出すあたりには本気の危機感が伝わってくる。