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ブダペストにきて高級帽子店で働くイリスのそばにカメラが貼りつき、彼女の正面、側面、後ろ姿をフレーム内におさめながら、その視点から見える光景を撮影していく。ダルデンヌ兄弟を思わせるその撮影手法によって、観客は混沌とした都会の現実のなかから、イリスが置かれている状況や、両親と兄と彼女に起きた過去を想像しながら観ることをうながされる。この方法論が時代劇でも効果的であることに驚く。主観でも客観でもない映画カメラの、対象との距離感についても再考させられる。
以前ミステリーの脚本を書いていたので、トリックや推理にはうるさい方だ。妻子を抱える中年男性によるバディもので、喜劇的な作品としておもしろく見たが、推理オタクの探偵が観察眼によって「流行らない中華料理店の料理人」を推理する件は、ありきたりで弱い。軽いタッチの作品なのはわかるが、犯人の動機から主人公に逆さに推理させるのはご法度だろう。現場に残された物証で観客も一緒に推理できるようにすべき。いくら元刑事でも、警察が捜査に動いてくれる現実感もわかない。
良質のホラー映画というだけではない。「ホラータイムズ」なるYouTubeの人気チャンネルが、精神病院の廃墟から動画配信をするときの撮影や照明における技術的なディテールに富み、それらが新奇な映像文法をつくりだしている。手持ちのHDヴィデオカメラ、顔の表情とPOVを同時に撮影できる小型フェイスカメラ、ドローン、動体検知カメラにとどまらず、お決まりの懐中電灯、三脚付きのヴィデオライト、スマートフォンによる薄明かりなどが、仄かに姿を現わす幽体への恐怖を煽る。
50代半ばのトム・クルーズやジョニー・デップが主演を続けているのに比べ、同年輩の女優でヒロインを演じている人がどれくらいいるか。そこにはジェンダーによる差が歴然とある。そのような意味でも、本作で50代後半の往年のスターを演じるアネット・ベニングが、30歳年下の青年俳優と堂々と恋に落ちてみせる姿が痛快だった。彼女の演技は、女性の美しさが肌の色艶や体のラインで決まるものではなく、恋した相手のために自己を犠牲にできるような心根にあることを教えてくれる。
ラースロー監督のデビュー作「サウルの息子」は、主題の衝撃と併せて、主人公の一人称目線といったらいいか、カメラの位置が気になっていた。それは今作も。ヒロインのイリスの目線として、1913年のブダペストから、歴史の出来事を映す。ただそれらは、冒頭部分で彼女が帽子のヴェールを上げて、テーマを暗示するも、はっきりとは見えない。それだけに難解ではあるが、結末のイリスの大きく見開いた曇りのない眼は、しっかり現代を見通している。着想は示唆に富み、果敢な作劇が◎。
推理オタクと休職刑事の凸凹コンビに、元サイバー捜査隊のレジェンドが賑やかしとして加わり、トリオに。クォン・サンウとソン・ドンイルの、二人の快調なコンビネイション+新参のズッコケぶりは、そこそこ面白い。にしても二人が揃って妻に頭が上がらないのは不思議。コミカルな探偵物語を意図してのことだろうが、その分キレが不足。二人のキャラを工夫したらドラマが締まったかもと考えつつ、70年代の日本のTVドラマ、萩原健一と水谷豊の探偵コンビの愉快さを思い出す。
怖くないホラー映画と言うべきだろうか。廃院になった不気味な病院に潜入する肝試し。画面は、視聴者数を競う動画サイトの様相。実際、100万ページビューを目標に、動画を配信するチャンネルが参加者を募ったという設定で、潜入者のピーピーキャーキャーの絶叫と、目を見開き大口を開けた顔のアップの連続。彼らが装着したアクションカメラの不安定な映像で恐怖を煽り、押し付けてくる。映画の大部分がこのカメラで撮影した映像だそうだが、せっかくのアイディアが無残に。
親子ほど歳の離れた大女優と若手俳優の恋は、おそらく闘病を絡めた無償の愛を意図したのだろう。ならばG・グレアムの闘病生活の実態はさておき、死期の近い彼女を、家族の暮らす実家に引き取った若手俳優は、看護を自分の母親にさせず、自らすれば説得力が自然に増したのに……。ベテラン女優陣+実力の若手の俳優陣はそれなりに見応えはある。が、A・ベニングは素敵に歳を重ねた女性として意図に応えているが、50年代ハリウッドの女優オーラを感じさせず、平凡さが拭えない物語に。
絶妙なタイミングで、然るべき相手と、思わせぶりな一言を交わすのみで、ドラマは展開する。極端に情報を制限された語り口はご都合主義と紙一重だ。ヒロイン個人の視点に即すという意図を理屈としては理解できても、彼女の存在自体が唐突で、物語の進行以上の役割を見出すことが難しい。何度も警告され、立ち去るチャンスを得ながら、なぜ彼女はその場に居続けることができるのか。ヒロインを演じたヤカブ・ユリの強い眼差しは一貫して変わらないが、迷いの無さは観客を突き放す。
コメディとシリアスの合わせ技バディムービー。続篇となる本作では、コメディリリーフとしての様相が目立つ超長身俳優イ・グァンスが加わって、コメディ映画としてのルックはさらに強化。肝心の事件は養護施設にまつわる犯罪で今日性も高いが、一方のコメディパートはコテコテ風味で、ギャグレベルの敷居はびっくりするほど低い。そのバランスの歪さゆえもはやこれが探偵ものである必要があるのかどうかという根本的な疑問に至る。ドリフターズや新喜劇のノリを楽しめるかどうかが鍵。
これぞ文字通りの「カメラを止めるな!」。行き過ぎた不適切動画の真性悲劇。キャンプ気分でリア充を満喫する男女グループの登場に、こいつら絶対にひどい目に遭うな~という予感しかない導入はサバイバルホラーの定石だが、その舞台が自主的なライブ配信であるところが現代ならでは。視聴者数に姿を変えた視聴率はもはやノルマではなく自己責任なのだ。しかしGoProやドローンなど撮影機材のスペックがアップデートしている分、怪奇現象自体の描写やその顚末の古くささは否めない。
ジェイミー・ベルが美しい。アネット・ベニングとの年齢差の対比もあって、実年齢以上に若く世間知らずに見えるし、さりげなく鍛え上げられた肉体にも品があり、元リトル・ダンサーなのにたどたどしいダンスシーンが映える。それによってベテラン女優のエキセントリックな振る舞いもかなり美化されて見えるが、実話という情報以外に二人の関係を裏づける説得力が薄い。マクギガン監督が撮るなら変人シャーロックと振り回されるワトソンぐらいにデフォルメしたほうが面白かったのでは。