パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
お客様は神様です、と言ったのは三波春夫だが、お客の要望には無理難題でも応えるホテルなんて、今どきあるのかね、あれば一度やってみるかなどと思いつつ、それが、この物語に弾みをつけているのは確か。キムタクも妙な鬘をつけて登場するが、以後の刑事ぶりは、辣腕検事などより堂に入っている。ホテルの優秀なフロントとして彼の教育係を務める長澤まさみも悪くない。ただ、刑事たちの上司に扮する二人が、過剰にマンガチックな演技をするのが気になるが、まずは楽しめる。
夜明けの川岸に倒れていた若い男は、釣りに出た中年男に助けられ、そのまま彼の世話を受けるが、偽りの名前を告げるだけで、自分から意思表示をすることもない。庇護する者と庇護される者、二人の関係はそこから始まるが、それは周辺の者も巻き込んで時間とともに変化する。変化の中で、それぞれは、以前とは異なる貌を見せ始める。それが、さらなる関係の変化をもたらす。というように、本作は、人と人との関係の変容を動因とする劇であることに徹底して極めてスリリングだ。
こういうのを、意余って力足らず、とでもいうのか。なにしろ奈良で、折口の『死者の書』があり、伝説の中将姫に大津皇子がありと、観念とイメージが盛り沢山なうえ、娘を連れて実家に帰ってきた次女(佃井皆美)がやたら眼をむいて大声出すので、腰が退けてしまう。美しい奈良の風景ですと映し出された映像も、後半はともかく、目を見張るほどのこともない。中将姫の化身でもある香奈(陽月華)が大津皇子と共に去った後の家族の様子も、余計者が消えてすっきりみたいに見えるのは僻目か。
難病ものは、昔からあったが、最近は余命ものが眼につくようで。本作も、一方に余命三カ月の若者がいて、他方に難病で何年も病院暮らしをしている少女がいる。そして、彼と彼女を結びつけるアイテムとしては、少女がかつて書いた詩がある。その詩に絡んで、俳優業に一度は挫折した経験を持つ、かつての天才子役が登場するとなれば、脇筋のエピソードも膨らむという仕掛け。いや、決してバカにしてるわけじゃありません。流れに素直にのって見れば、涙する人がいてもおかしくない。
原作ありと言われて首を傾げる。警官がホテルに潜入して犯行が起きるのを待つ、という物語に無理がある。とはいえ多彩な挿話で俳優陣も豪華。考えないで見るのが良い。アメリカ映画にホテル探偵というのが出ることがあるが、そういう感じでやったら上手くいったかも。つまり警察に頼らないで内輪で事件を処理するわけだ。横柄なキムタクと過剰にスマイリーな長澤のコンビに見応えがあり、互いの短所を補い合う、これが企画のキモか。だが犯人の動機にかなり疑問が残り、納得できず。
まとまっているが不満が残る。とりわけ主人公が最後に見据える夜明けの意味が理解不能。評価は留保する。彼が周囲を侮辱してまで守りたかった「自分の名前」がそんなに大したものだとはとても思えないのだ。これを中二病という。でも二四歳で中二病というのは問題じゃないかと思う。俳優のアンサンブルはとても良く特に堀内敬子と小林薫の再婚に関する温度差がとても面白い。ここに割り込む主人公の位置も良く出来ていて最後まで飽きさせないが、でももう大人になれよ、と言いたい。
これは折口信夫の名作にインスパイアされた企画のオマージュ的意図が素直、という点で悪くないのだが御当地映画で終わってしまった。ただし川本喜八郎の人形アニメ「死者の書」を見ておくと二倍楽しめる。というか最低限、折口を概念だけでもさらっておかないと、わけが分からない観客続出ではないか。男女の主人公が古代人の転生なのだが、そう言われてそうですかと素直に思う人は多くはない。分かる前提で話を広げすぎ、桃源郷伝説が出てきたり電力テロが起こったり、忙しすぎる。
無茶な設定、しかしこれはそこが良い。ダブル難病もの。天才詩人の病人美少女が、詩に飽きて今は数式に凝っているというのが実に可笑しい。もう一人の病人が突然の死期宣告でヘンになっちゃうのを彼女が救う。というかお互いに救い合う。友人が全く病人に同情せず、死期タイマーを勝手にスマホに設定するのも効いている。もちろんこれまた彼なりのエールである。挫折したバンドマンの再生に病人詩人の新作が力を与えるという作り。飛行機雲が上手く使われてるがCGなんだよな。多分。
如何にものフジテレビ映画なので、その方面が好きな方は満足するはず。ロビーの豪華なセットも映画らしい華やかさがあり、刑事とホテルマンのバディものとしても過不足ない。ただし、人情話ばかりが連なって一工夫はあるものの浪花節的すぎる。ホテルのみで描く枷は良いが、大仰な芝居で説明台詞が増えるだけにそれを持たせる演技力の持ち主が見当たらない。「検察側の罪人」で実年齢にあったおじさんを好演した木村は、また〈HERO〉に戻って全てをそつなくこなしてしまう。
新人監督らしからぬ風格を感じさせるが、長回しも含めてダルデンヌ兄弟を意識しているとおぼしく、描写力の弱さを補填した感あり。小林をはじめYOUNG DAISも鈴木常吉も近作で際立った演技をそのまま借り受けてきたようでプラスαが欲しい。柳楽の得体の知れない存在感は突出し、ガス漏れ死亡事故での殺意をめぐる主人公の感情という「日本春歌考」を思わせる設定も良いだけに、感情部分の起伏が小林も含めて不鮮明に感じた。日暮れや夜明けの場面には観るべきものあり。
ご当地映画は色々観てきたが、奇ッ怪さにおいてはダントツ。正攻法の家庭劇を装いつつ、浮世離れしたヒロインの神秘体験が唐突に飛び出し、マルチ商法にはまる竹下景子がかつてない狂った演技を見せる。全てを受け止める小日向文世に感心しつつ、何故この映画に出たのか疑問は膨らむばかり。クストリッツァばりの地下世界が広がり、果ては黄泉の国(?)へと繋がったりと、スピリチュアル&宗教映画を超えた地点に到達してしまう奈良の奥深さよ。近年の大林映画と近いようで違う。
同じGReeeeNでも「キセキ」は手堅い斎藤ひろしの脚本と菅田・松坂の好演で佳編になったが、今回は脚本にこのバンド名が記され、役者も地味になり、安易な難病映画に。女子高生の制服を調達してヒロインと学校に侵入したり夜明けを見に行く場面も、彼女の願望とそれを実現させるために手立てを考える経緯を飛ばすので、主人公の妄執に見えてしまう。後半は重症患者を外に連れ出して寿命を縮めさせるおなじみのパターンを繰り返す。病も命も感動のために奉仕させられている。