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強盗団と特捜班を等価のものとして重ね合わせ、前者よりも後者のリーダーのほうがどうかすると人間的にゲスいのではと印象づける前半部分は、こんなにだらだらやらずにもっと短く語れるはずだし、しかも、そこまで執拗に印象づけたにもかかわらず、後半部分(銀行強盗の開始以後)の面白さは、それとはほとんど無関係なのだった。でも、その「後半部分の面白さ」が猛烈な上、クライマックスの銃撃戦(冒頭部分と呼応)の編集がほれぼれする見事さ。ラストのサプライズも気持ちいい。
いまやネット空間上の映像を組み合わせるだけで、任意の人物や事件を再構成できる時代になっているのだという事実。PC画面上の動作が人の思考の反映であること。誰か(何か)が撮影した動画の映っているPC画面を映画カメラが撮っているという何重もの媒介性。PC画面を見ているのが誰であるかが曖昧になった瞬間に生じる、視点の奇妙な匿名性。PC画面だけをえんえんスクリーンで見せられるという知覚的倒錯……等々、これ一本だけで修士論文が書けそうな映画。スピード感あり。
トムハ演じる主人公が、ジャーナリスト魂はあるけれど、それ以外の局面ではヘタレで腕っぷしもからきし弱い(あの体格で?)設定なのがミソで、VFXもさることながら、主人公とヴェノムのバディ的関係(「寄生獣」や「ど根性ガエル」が思い出されるが、ちなみに原作コミックが出たのは日本のこれらのほうが早い)が魅力の一本。ノワール的な性格の強い、ホラー風味もある映画かと予想していたが意外に明朗。若干のグロみさえ外せば、むしろ子どもたちに喜ばれるタイプの映画かも。
米国で興行的にコケたのは、K・スペイシーが(「ゲティ家の身代金」のように出演場面を撮り直したりせず、そのまま)出ているので公開規模を抑えざるをえなかったのが大きかったのかなと思うけど、やっぱり作品自体ももう少しどうにかしてほしかった。アンセルとタロンが魅力たっぷりに登場するから一気に期待値が上がるのに、イケイケのはずの時期の描写が、ぐずぐずと焦点定まらなくてまるで爽快にならず、そのあいだに肝心の二人の輝きも、事業の暗転を待たずしてくすんでしまう。
世界一銀行強盗が多いというロサンゼルスを舞台に警官と強盗が能力の限りをつくして戦うので、銃撃戦、カーアクション、闇世界への潜入と、見せ場たっぷり。悪の側はメリーメン(パブロ・シュレイバー)の指揮下、スポーツクラブや軍の特殊部隊で鍛えた運動神経と団結力で緻密な計画を立て銀行強盗に挑む。対する法の側を率いるニック・オブライエン(ジェラルド・バトラー)は仕事のためには家庭も顧みずといった、現代ではめずらしい男。他の人物もよく描きこまれていてセリフもいい。
行方不明になった少女を全篇PC画面で父親が探す映画で、実験性は興味深い。しかし冒頭、ビデオ・チャット、カレンダーへの入力、携帯電話で撮影された家族の動画などを見ているうちに、他人のホームビデオなどあまり見たくないという映画ファンはうんざりするかもしれない。ミステリーとしては、人間関係を描かず、いきなりタネ明かしをして、観客に推理させる布石を打たないのが弱点。実写カメラが回ると、ほっとしたが、日常的機器で娯楽映画を作る試みを一度は見ておきたい。
マーベル・コミックで人気の悪役、ヴェノムがトム・ハーディに合体するところはトムが「どうなっているんだ」とあわてる演技がコミックで面白く、出だしは快調。地球外生命体ヴェノムは完全にCGなのだが、鋭くむき出す目や無気味な長い舌、くねるように伸びてくる手足により、視覚効果は充分。ジキルとハイドの伝統を踏む物語ながら、両者が同時に存在するので、トム・ハーディに語りかけてくるヴェノムの声が効果的でおかしい。リズ・アーメドが利己中心的資本家を好演する。
80年代のロサンゼルスに存在した若者たちの実話に基づくというが、すでにこの素材はテレビ化もされていて、映画ではアンセル・エルゴートとタロン・エガートンが熱演。ウォール街の敏腕トレーダーのケヴィン・スペイシーも参入して世間を騒がせた投資詐欺が描かれるのだが、映画を見ているかぎり、どうしてこんなに幼稚な手口に騙されるのかと投資家の頭のわるさにあきれてしまう。後味はよくないが、金がなければ人間の幸せはあり得ないという、BBC青年の哲学は出ていた。
時間配分をほぼ均等にして描く強盗団と重大犯罪班の攻防、それぞれのリーダーが一騎打ちを終えた後に交わす台詞など、とにかく「ヒート」を意識した作り。だが、それだけで終わらせずに鉄壁の防犯システムが敷かれた連邦準備銀行からいかにして金を盗むかを追ったケイパー・ムービーの妙味も持たせ、ただのフォロワーで終わらせていない。さらに「ヒート」と同じ95年に放たれたもうひとつの犯罪映画の傑作「ユージュアル・サスペクツ」的ツイストをオチに持っていくのも◎な好篇だ。
終始PC画面だけで語る手法も面白いが、ハッキングなどの特殊な方法を引っ張り出さないのも◎。現実に存在するアプリやSNSで娘を捜索することでリアリティも出るし、それを使って四苦八苦する父親に共感も抱くようになるのが巧い。ただ、車で移動する彼をグーグルマップ上で動くピンとして表現するのはトンマな絵面だし、見せ方を楽しむ作品ゆえに仕方ないがミステリーとしての新鮮味は特になし。監督はインド系、キャストは韓国系、製作はロシア人とハリウッドは変わった。
誰が観ても思うだろうが、ヴェノムの寄生ぶりや変形ぶりが実写版「寄生獣」まんまで既視感炸裂。それでも話がしっかりしてれば無問題だが、彼とハーディが絆を育む経緯がちっとも描かれていないのでバディ・ムービーとしての面白さはまったくなし。ゆえにクライマックスは、汚い軟体生物が暴れているのをボーッと眺めているだけで終わってしまう。こうなるとすべてがダメで、ハーディのヴェノム取り込み演技も寒いだけ、スローモーションを用いたカー・クラッシュもタルいだけ。
実際に起きた事件が題材で結構なことをやらかしているのだが、犯罪劇としてもスリリングなわけでもなく、中産階級の劣等感が生んだ欲望に駆られて自滅する若者たちを追う青春劇としても弱い。有名なマクセルのカセットテープのCMをパロった冒頭を筆頭に舞台となる80年代の文化や風俗もまぶしているが、それも途中から霧散してしまう。とはいえ主演ふたりが放つキラキラ感は相当なもので、若手スターの顔合わせ映画として観るのが妥当。K・スペイシーの嫌な奴ぶりはここでも見事。