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死期を悟ったと譲らぬ頑固親父に付き添って、はるばる辿り着いたバラナシの解脱施設で、施設長の質問に、父に代わっててきぱきと答えた息子(とは言え、嫁入り前の娘を持つ中年男だ)は、褒められるどころか、怪訝な顔をされて困惑。出会って間もない老女からは、いまどきの人呼ばわりされて狼狽するも、母なるガンジス河の畔で、雄大な時の流れに身を任せるうちに、人生を見つめ直していく覚醒映画。解脱を待ちわびる老女のポエムに静かに耳を傾ける、野良犬の顔つきにも含蓄あり。
日本に限らず、世界ではいま、悪事を働き、証拠を突きつけられても、嘘を突き通した方が勝ちの、酷い流れができている。国連を舞台にした本作も然り。では10年以上も前のスキャンダルを、あえていま映画に仕立てた意義に思いを馳せれば、時代の風潮に逆らっても、人間の正義に光をあてたいという、原作者を筆頭に、監督、主演兼プロデューサーを務めたテオ・ジェームズら、制作陣の良心が見えてくる。時に映画は、社会の自浄作用として、観る者に問いかける力を持つと筆者も信じたい。
「雲海の中の孤独な灯台」とか「ゲームへの愛」「ゲームに嫌われた」とか、いちいち詩的なセリフにもユーモアが溢れる。バスケの聖地ラッカー・パークを「俺の庭」と言ってのける伝説のバスケットボール選手、アンクル・ドリュー。爺さんになろうとも、場所を制する者こそがゲームを制する軽快なストーリー展開に、今夏の甲子園で活躍した金足農業高校を彷彿とさせるも、アメリカンドリーム定番のベタな結末に、少し物足りなさを感じるのはわがままか? ビッグ・フェラのお尻がキュート!
blurの基盤2ndアルバムをタイトルにするとはなかなかひねくれた映画かと思いきや、時間軸こそ複雑だが(細やかな伏線で見やすい構成)、ストーリーは単純明快。我慢を覚えて大人になる年頃になっても、過去と未来即ち遠くばかりを見つめて、近くの恋人や現実を見ない、モラトリアム主人公リアムだったが、大手チェーン系カフェで働きはじめてから涙のライブ、きらきらのラストシーンに至る顔の変化が、思春期の少年並みにめまぐるしくて感動した。J・ホワイトハウスの魅力が全開。
死期の近い老人が、伝統的儀式に則って死にたいと聖地に移る。逗留する宿泊所は姥捨て山のようなところで、半ば朦朧としたこの空間の佇まいがすばらしい。「インド夜想曲」(89)の名シーン、夥しい群衆が一斉に地べたで眠りにつく夜を思い出した。上手いのは、老人が主人公と見せかけて、ワーカホリックな息子の主観によって映画が動いていく点だ。息子は老父をいたわりつつも「付き合ってやっている」という意識を拭えない。そんな子に父がかける最期の言葉が痛ましく美しい。
対イラク物資援助をめぐる国連職員の汚職事件が、あたかも東映実録路線のごとくノワールに描かれ、「なんだい、国連はやくざなのか?」と呆れる。原作者M・スーサン氏の実体験だという。氏は国連に就職する以前はNY大学で映画を学んでいたとのこと。そこで筆者は邪推する。氏は汚職の現場に立ち会いつつ、将来の映画化を睨んでほくそ笑んだのではないかと。製作予算は本欄「アンクル・ドリュー」の半分以下なのに、世界観の大きさ、確かな演出でははるかに上手だ。
ストリートバスケットの優勝賞金10万ドルという設定が、さすがはアメリカ。一攫千金シナリオをアマチュアスポーツで書くという発想は、他の国ではあり得まい。出資元のペプシやナイキの企業色が濃厚なのも致し方なし。本作の見どころはNBAの新旧レジェンドが老けメイクでヨボヨボ歩いてみせながら、やる時はやるというのをきめる点。観客はその妙技に集中すれば楽しめる。ただそれが逆に欠点でもある。弱い物語と演出を、スター選手の技術披露でカバーしているのは否めない。
ブリティッシュロックへの愛という抗しがたい魅惑。主人公カップルならずとも没入に値する対象だ。しかし彼らの恋愛の歴史を説明する具として利用した場合、あっさりと披露宴ビデオのBGMへと化す恐れがある。本作はそれを回避し得たか? 出会いのシーンは微笑ましく初々しい。タワーレコードでブラーのベスト盤購入をめぐり、見知らぬ男女が知識の背比べをする。今にして思えば、そのナイーヴさへの滞留を決めこんだ「アイデン&ティティ」の田口トモロヲの聡明さが際立つ。
「楢山節考」がちらり頭をよぎった。〝死〟を受け入れた老人の話。息子が付き添いうろたえる。が、暗さはない。年寄りが集まった「解脱の家」。みんな明日にでも死のうと思っていても、なかなか死ねない。そこにままならぬ人間のいのち、その皮肉さ、可笑しみが滲んで。老人はその最後の生を慈しみ、楽しんでいるように見える。このひょうひょうの主人公、「新・喜びも悲しみも幾歳月」の植木等を彷彿。この映画、小津調というより木下惠介の味で。幕切れが鮮やか。監督は20代だ!
国連スキャンダル。これ、むしろドキュメンタリーの方がふさわしいとも思ったが。新人職員がじわじわ悪事に巻き込まれドツボにはまる。そこが怖い。黒幕が悪玉という感じではなく、尊敬できる父親タイプというところ。その師弟関係の描き方に少し娯楽映画のパターンが匂って。それは主人公に絡むクルド人女性も同様で。どうもこの映画、面白く作りすぎの感が。世間に発表のフェイク写真の落とし前がないのも気になる。とはいえ、演出の切れがよく、題材の興味もあって見応えはあった。
バスケのスーパースターたちが年寄りに扮して大暴れ。ヒップホップのリズムに乗って、展開はすこぶる軽く、ついでに軽口ギャグも満載。いやもうそのお賑やかなこと。こちらもすっかりリラックスして、心身ともにカラッポになって眺めていた。これ、日本でもサッカーの人気選手を集めてやったらどうかしらと頭を巡らす。けど、そんなもん、TVのバラエティーでやれと茶々を入れられそうで。ま、そんな内輪向けのお遊び作。なんか作家連が演じる文士劇を連想。が、こっちの演技は達者。
日本のしょったんは奇跡を起こしたが、こちらの泣き虫は? 売れないミュージシャンとその恋人の10年間の軌跡が描かれて。今だレコードにこだわる彼とデジタルな現代を生き抜こうとする彼女。その気持ちの食い違いを描いているのは今風。SNSの道具立てもなるほどと思う。だけど、ロッカーを題材のこの種の映画のパターンから一歩もはみ出さない展開がじれったくて。いかにもエリートな男とくっついたヒロインが昔の彼の歌声を聴いて動揺、なんてその典型。歌曲はわりと心地良く。