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独立前夜のインドで何が起きていたのか、新たな発見を加えて描く、極めて誠実な歴史映画。基本構造としては、分離独立をめぐる話し合いをえんえん見せる映画なのだが、主要人物のひとりであるインド人青年が重要な局面に必ず居合わせざるをえない設定になっているのが巧みな点で、さまざまな社会層、さまざまな場を横断しながら語りが展開し、出番の少ない端役にまで人間味が感じられ、いつしか作品世界に引きこまれる。若者たちの不運な恋の行方も、無駄なく描写して絶妙なバランス。
冒頭なかなか面白く、海底トンネル内にいた人々が人質にされたところからは「これは!」と思わせる猛烈な面白さ。けれども、若い警官が爆死するくだりが、好みの問題かもしれないがあまりにヒロイックに引っぱりすぎで、実際そこから20~30分ほど、映画はみるみる失速してしまう。そのあいだ舞台がトンネルから離れてしまうのもいただけない。人質になる人々のうちの数人が、事件発生前にフィーチャーされるのに、脱出劇のなかで彼らが活躍しないのも、どういうことかと思ってしまう。
多数の熱狂的賛同を得て勇ましい方向へと舵を切ったG・オールドマン版とは何もかもが正反対なチャーチル像。B・コックスの舞台仕こみ演技は迫力ありすぎなくらいで、精神的に崩壊し、厄介者扱いされるチャーチルの哀れさがいっそうつらい。だからこそノルマンディー上陸作戦後の演説は観る者の心にしみる。それは、あれほどの精神的危機に対して、彼が個人的勝利を収めた瞬間であるからだ。夫人や女性秘書が物語上で決定的な役割を果たすのも、スコットランドの風景もとてもいい。
「D・ボウイオマージュ映画にハズレは少ないの法則」に則った、美しい青春映画。10代のまっすぐな気持ちから始まる「捜査の真似事」が、やがて痛ましい喪失と人生のはかなさ、かけがえのなさをめぐる物語へと転換されていく。音の「ずり上がり」を多用したテンポのよさと、各シーンの丁寧な演出。少年少女と親たちの関係も端的かつ的確に描写され、心に刺さる人は多いはず。変人アンセルとしっかり者クロエはまれに見るお似合いのカップルで、一緒にいるのを見るだけでわくわくする。
ガンディーやネルーを中心にインドの英国からの独立を見てきたものには、最後の総督マウントバッテンの視点で描いた作品は新鮮だった。総督の居住する邸宅の豪華さにあきれながら、総督一家を中心に制服を身に着けた使用人たち大勢の人間が、記念写真を撮るシーンにも大英帝国の挽歌を告げる映像として、感銘を受けた。宗教にまつわるインドとパキスタンの境界の線引きが強引で、多くの難民を作った歴史的事実も、映画を通してよく分かり、異教徒の男女のメロドラマの挿入もうまい。
フィクションとはいえ、日本にも近い香港島と九龍を舞台として連続爆弾テロが起きる物語。ディテールも細かく描写されているので、終始、手に汗を握ってしまう。アンディ・ラウが製作と主演を兼ね、気合いの入った爆弾処理局の警官を演じている。一方、麻薬密造の黄金の三角地帯を根城にして金儲け目的で香港にやってきた爆弾犯罪グループは人種も多彩で、得体の知れない怖さがある。とりわけボスのチアン・ウーが冷酷な表情で黙々と爆発を遠隔操作するのが不気味だ。
「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」と比較して見ると興味深い。辻一弘の特殊メイクによるゲイリー・オールドマンもみごとだったが、ブライアン・コックスは老人の息使いや佇まいで、チャーチルの孤立感をよく演じ、夫人と秘書も前作とは一味違っている。脚本のチュンゼルマンが歴史の細部をよく書きこんでいるので、ノルマンディ上陸作戦に関し、チャーチルとアイゼンハワーが対立したという物語もすんなり見ていられる。舞台の対立劇風になっているのもいい。
アンセルとクロエのカップルは、感受性もあり、演技も快調で、高校生活を描いている部分はおもしろい。しかしアンセルが敬愛して引用したデヴィッド・ボウイの「行く先は分からない。でもきっと退屈しない」という言葉通り、彼の親友が殺され、物語はワシントンD.C.に起きた麻薬事件に移っていく。アンセルが警察を差し置いて、フィルムノワールの主人公になるのは無理があり、物語の中心が若いふたりの友だちや家族との関係、進学問題など、サリンジャーの小説風になると、安心。
意外と知られていない気がするインド独立とそれに伴うパキスタン建国のあらましがしっかりと学べる点は○。分離独立によって生じる宗派対立と内紛を、その状況に置かれたインド人男女の恋を重ねて描こうとするのも良いとは思うのだが、それはそれで別個に完結してしまう。インドに骨を埋める覚悟の総督とふたりを軽く絡ませておきながら、並行させっぱなしなのでなんだか燃えない。本筋よりもエンドクレジット前に紹介される、ある夫婦と監督の関係性に一番グッときてしまった。
犯人とのメラメラした因縁、海底トンネルの原寸大セットを建造してしまうスケール感とそこでの大乱戦など燃焼率の高いアレコレが放り込まれている。だが、トンネル占拠と株価操作を絡めた話は中途半端、犯人が刻んで繰り出す難題もそう難題でもなく、交換する人質の移送中に交通事故に遭遇するのを筆頭とした主人公のトンマ具合など、せっかくの熱を吸収するアレコレも目立って結局はフラットな出来に。七三ツーブロックにウェリントン眼鏡、時計はパネライという犯人の格好は○。
とりあえず、ブライアン・コックスのほうが「ウィンストン・チャーチル~」のゲイリー・オールドマンよりも似ていると思う。あちらがダイナモ作戦を主軸に置いたのに対してノルマンディー上陸作戦の裏側が学べるようになっているのだが、こちらも演説をクライマックスへと持っていく展開なので既視感が炸裂する。彼の狡猾さが触れられていないのも気になるが、そこは「英国総督最後の家」のあるシーンで描かれているので、そのあたりが物足りないと思われる方は両作を是非に。
実は犯罪多発地域(最近は落ち着いているらしい)であるワシントンDCの雰囲気が、物語にも全体を覆う雰囲気にも巧く醸し出されていてイイ感じ。とはいえ、母と親友の死を乗り越えることになる主人公の心象やその過程がいまいち伝わらず、彼の捜査も高校生ゆえに限界ばかりでクロエ嬢とのセックスに夢中になったりするのが十代ならではのリアリティとして映るが、それはサスペンスとしてどうなのかと思ってしまう。とりあえず、主人公ふたりのカップルぶりが可愛らしく思える一品。