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イギリス映画が苦手だ。米語を先におぼえたので、イギリス英語が聴き取りづらいせいか。それ以上に、ドラマの前提となる社会の保守性と、自尊心が高く皮肉屋で本心をいわない人物らに共鳴できない。結婚して初夜を迎える本作の若い男女も、英国式の複雑な性格の人たちだ。ホテルの一室と浜辺で、愛しあうふたりの関係がどんどん崩れていく演劇的な場面が多く、とても観ていられなかった。……ということは、逆に本作のおかげでイギリス映画のツボが理解できたといえるのかも?
シャーリーズ・セロンは絶世の美女であるが、18キロ増量して、3人目の子どもを身ごもっている妊婦の役づくりをしたそうだ。セロンが家事と育児でボロボロになっていく過程の時間配分が長い。このタメがあってこそ、イマドキ女子の夜間ベビーシッターが現れたあとでの、生活の変化が活きてくる。本作では、表面的な層とは別の物語が底に流れていて、それがラスト近くでふっと浮上する。コメディだが、ヒロインと同じく90年代に青春を送った者としては身につまされる作品だ。
老年者向けの月刊誌に、4年半のあいだ「シネマの中の高齢者」という連載をしていた。なので、このジャンルには実はうるさい方だ。本作でも描かれるように、退職後の第二の人生を豊かにするキーワードは「サークル活動」と「恋愛」だろう。その両者を通してヒロインが自分自身を発見する物語は、堂々と王道をいっている。映画を通じてシミュレーションをくり返してきたから、今から老後が楽しみで仕方がない。映画鑑賞はほどほどにして、残りの人生を謳歌するつもりでいる。
テレビの探偵番組で脚本を書いていたので、推理小説ばかり読んでいた時期がある。戦前なら鮎川哲也や『新青年』まわり、現代なら島田荘司や笹沢左保のトリックを参考にしていた。本作は島田荘司の原作を、台湾のチャン・ロンジー監督が中国資本で映画化した「中国映画」。ミステリーは易々と国境を越えるのだ。最初のトリックは、病院から覗き見をする青年に関わるものだが、ふたつ目の謎は現代風にアレンジされていて唸らされた。ひと夏の苦い青春ストーリーとしても楽しめる。
核心はホテルでのほんの短い時間だが、回想を織り交ぜながら数十年を描くこの映画、男女の感情をはっきりと表現する手法が、監督のドミニク・クックがもともと舞台演出家だけあって演劇的。シアーシャ演じるフローレンスの言動はエドワードのプライドを砕く威力があり、物語を主導する。初夜の性的な問題が原因で別れた男女。余韻嫋嫋のはずだったが、十数年後の再会でプツリ(★一つ減)。それでも古風な女性を演じるシアーシャの巧さには見とれる。若くして大成した感がある。
脚本と監督がこのコンビだもの、何かの技を仕掛けてくるな……。家事に育児に頑張り過ぎる女性が孤軍奮闘する日々と、自分が想像する若い時の自分の話。二つのストーリーで人生の再始動を描く技に一本取られた。娘に「何? その体」とぶよぶよボディをからかわれ、夫には「また冷凍ピザ?」。無神経な言葉を浴びながら、主題を活気づけたセロン。体重を18キロ増量する徹底ぶりは「モンスター」の13キロを抜いて自己記録更新!? 「レイジング・ブル」のデ・ニーロ以来の驚きだ。
親友と夫との、浮気の現場を妻が目撃して以後、ほぼ予想通りに展開し、恋あり友情ありで流れに逆らわず結末に至る。だからといって、がっかりすることはない。物語にはアルツハイマー病に介護、住宅事情、病気と終末医療、終活など、シニア世代の多くの人が思いわずらうであろう事情が、巧みに織り込まれていて、共感多々。もちろんベテラン俳優のアンサンブルの良さがあってのこと。シニア映画という分類があるとすれば、名優の国イギリスは近年、世界をリードしている。
原作は日本の実力作家、主演は人気の美形アイドル、そしてヒッチコック・ミステリーの傑作「裏窓」を思い出させる物語の立ち上がり。なかなかの設えと滑り出しである。なんだけど、窓越しに見た女性に心を奪われた主人公のかなり強引な恋愛映画? それとも彼女を観察する中で想像した殺人事件の真相を探るミステリー? いえいえ、これらをひっくるめて主人公の夏の出来事を描く青春映画? アイドル映画なことは確かだが、絞り込んでアプローチすればドラマが更に活性化したかも。
とても好きな原作だけれど、あんなに回想が多く映像的には地味な作りの小説が、まさか映画化されると思わなかった。しかし聡明ゆえの潔癖さと融通のきかなさを漂わせるローナンと、女心が絶望的にわからない新郎になりきった英国俳優ハウルのキモさと情けなさが胸を打つ。初夜の寝室の悲劇は直視できないほどの出来ばえ。長篇映画初監督となるクックは堅実な腕をふるい、終盤には映画オリジナルのエピソードも見られるが、その飜案の仕方は男性監督ゆえの甘さとしか言いようがない。
ジェイソン・ライトマンは不思議な監督だ。これといった得意ジャンルや作風のクセというものがあまり感じられない。かといって職人タイプかというとそうでもなく、しかし何を撮っても面白い。おまけにアイヴァン・ライトマンの息子なのだ。大好きな監督だがカテゴライズがとても難しい。その才覚は脚本家ディアブロ・コディとのコンビで特に光り、本作でも映画的な演出の見どころは序盤の駐車場でのシーンから際立っているが、妊婦と母親のあるあるドラマに埋もれてしまったのが残念。
リチャード・ロンクレイン監督は「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」でシニアジャンルにおける頭角を表したが、本作はその適性を決定づけたと言っていい。親でも祖父母でもない、現在進行形で歳を重ねつつある等身大の男女の姿がそこにはある。もちろん「パワフルな高齢者」というだけでなく、心身の衰えや迫り来る死も同じように描かれる。そこで一役買うのがダンス。キレキレのパフォーマンスよりも魂の解放を感じさせるステージがいい。高齢女性が泳ぎに集まる野外の池は妙案。
なかなか荒唐無稽なアイディアを、主人公である青年の若さゆえの突っ走りで押し切ったような力技。なぜ今、この小説を、中国で(ロケ地はほぼ台湾)映画化したのかという謎は未解決のまま残されたが。ただ、日本では暗く湿っぽいドラマになりそうなところを爽やかな娯楽性に落とし込んでいるのは好印象。元EXOのタオはお世辞にも演技が達者とは言えないが裕福な家の子息である彼ならではの世間知らずなイノセンスはある。身体能力の高さを生かしたアクションをもっと見たかったかも。