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ゾンビ映画とかディザスター映画とか、たぶんコメディとミステリー以外全部のジャンルの要素が入っているのじゃないかという「全部載せ」的贅沢さでがんがん盛り上げ、シリーズを思い残すところなく完結させる。「迷路を走る」モチーフが、ちゃんと何度か出てくる律儀さもあり。各画面を彩るプロダクション・デザイン、特に都市部の美しさが何と言っても魅力だが、荒野で展開される冒頭の列車襲撃シーンも、どうやって撮ったのかと驚嘆させられるキャメラワークがあって見逃せない。
花婿とその父の狙撃を主人公がためらうところから物語が始まるのが予言的。やがて彼の回想や彼が見る幻のみならず、身の周りでの現実の出来事までが、彼の内面の実体化のように見えはじめる。実際、登場する人や物すべてが何かの象徴として解釈可能なように脚本が書かれていて、解読しながら観るとまた別の物語が立ち上がる仕掛け。これは知的作業としては非常に面白いけれど、やればやるほど「映画」から遠ざかるように思う。あと、この内容なら尺はもう少し短いほうがよかったろう。
元VIPの息子である脱北連続殺人犯を、自由であるはずの南では罰することができないという逆説に虚をつかれ、情報機関と警察の攻防に俄然興奮するが、やがて勧善懲悪の復讐劇に収斂しそうな気配がしてくると、いささか尻すぼみに思えるのは否めない。どんな美少年好きでもどん引きしそうなイ・ジョンソクのウルトラサイコパスぶりを含め、猛烈に凄惨な描写が多いが、チャン・ドンゴンは眼鏡スーツ萌え女子のあらゆるツボを突きまくるかっこよさ。パク・ヒスン再登場シーンに痺れる。
米国の森林消防隊についての知識が事前にあればもっと面白いかもしれないが、訓練の実際や、アリゾナにはこんな暮らしがあるのか等々、地味な展開のなかで見るものすべてが新鮮でじわじわうれしい。そして、男性的世界と家族の原理の相容れなさが話の軸のひとつかと思いきや、ことはもっと複雑だとやがてわかってきて、新たな洞察への扉が一瞬開きそうになるのだけれど、クライマックスの突然の凄絶さと、続いて喚起される感情の奔流に、あっという間に押し流されてしまうのだった。
ほぼ同時期に主演映画「アメリカン・アサシン」が日本でも公開されるディラン・オブライエンはメイズ・ランナー・シリーズの最終篇でも、誠実そうなマスクで、アクションに気合いが入っている。舞台はガラスと鋼鉄の世界「ラスト・シティ」で、造形がいい。そこに住むエリート階級は、人類を襲う病気からの感染を防ぐための人体実験を繰り返し、貧民を寄せ付けないための壁を造っている。なにやら人類の悪しき未来図として暗示的で、悪のキャラクターもやけに具体的で不気味だった。
レジナーロ&グアリョーネ監督の長篇デビュー作は砂漠を舞台に地雷を踏んで、一歩も動けない米人兵士、アーミー・ハマーのサバイバル・サスペンス劇として始まる。だがベルベル人が登場し、「前に進め。自由になれ」と言うあたりから、広大な砂漠がブニュエルの「皆殺しの天使」の一室と化し、夜空に浮かぶ満月が「アンダルシアの犬」の月のように無気味に見えてくる。ベルベル人のジグザグ歩きや謎めいた子どもの登場、現実と幻想が入り乱れる意図もいいのだが、図式的にまとめすぎた。
米CIAと韓国の国家情報院が北朝鮮からの「企画亡命者」として、VIP待遇で扱っている青年が猟奇的連続殺人の容疑者であるというのが物語の骨子だが、企画亡命者などという耳なれない役柄の冷酷な富裕青年をイ・ジョンソクが不気味に演じて、話をさらっていく。リアリティからいけば、富裕層の傲慢な態度が現在もテレビのニュースとなっているので、わりあい自然な設定として見ていられる。男優の競演で、北の工作員パク・ヒスン、国家情報院所属のチャン・ドンゴンらも適役だ。
森林火災消防隊のエリート「ホットショット」が2013年のアリゾナで、巨大な山火事に立ち向かったときの実話に基づき、まじめでキメのこまかい演出。スペクタクルな最終場面までは、隊員の地味で苛酷な訓練を丁寧に見せる。隊長のジョシュ・ブローリンと妻ジェニファー・コネリーの日常生活の描き方が巧く、「セッション」「ビニー 信じる男」のマイルズ・テラーが困難に挑む若者を熱演。隊員たちの冗談まじりの消防士生活に感情移入してしまい、空からの消火ミスがうらめしい。
第一作が〝脱出〟を描いた作品とすれば、この第三作は〝侵入〟を主眼に置いている。しかし、劇中でやたらと侵入不可能と謳われる都市〝ラスト・シティ〟とそのなかにある敵の本拠地に何度も出入りするのでしらける。巨大迷路からの脱出にあれだけ難儀し、それがウリでもあったわけだから、今回もそうすることで物語が盛り上がるはずなのだが。とりあえず派手なアクションが続くし、各キャラクターが抱える因縁なども収束させているので、なんだかんだで最後まで観てしまう。
言ってしまえば、地雷版「127時間」。こちらも砂漠で地雷を踏んでしまったというまったく動けない状況に主人公が身を置くことで、自身の生き方や抱える闇と対峙するという展開になって回想&幻覚シーンが続く。だが、それらが「127時間」と違って、ことごとくハッとしてグッとくるものではないのでダレてくる。他人の思い出話や戯言は、ただ単に聞かされても(or見せられても)まったく面白くないなと改めて痛感。こうしたワン・シチュエーションな内省ドラマは活劇好きには辛い。
権力を笠に着て、殺りたい放題である連続殺人鬼が見せつける目を覆いたくなる凶行。序盤にそれを見せられてこちらも彼を倒したくなるし、エスピオナージとサイコ・スリラーの融合は新鮮だし、国家やその体制によって正義が追いやられて悪が栄える展開も悪くないし、複数の組織や人物の思惑が交差する物語をキチッとまとめたパク・フンジョンの手際も見事。従って一気に観てしまうが、組織や国を越えて男たちが育む絆までもがサクッと描かれており、どこかズシンと響かないのも確か。
実録ものとはいえ、森林消防隊の物語。ゆえに凄まじい火災描写が待ち受けるのだろうと思ったら、規模は大きいものの火炎はおとなしいものばかり。森林消防隊の働きや山林火災がいかなるものかを真摯に捉えようとしているのだが、一番派手な場面が火だるまになって突っ走る熊を見たというJ・ブローリンの思い出話なのは寂しすぎる。主人公の成長や仲間との絆をめぐるドラマも、森林消防隊のわりには弱火チョロチョロという感じで終始盛り上がらず。面子が面子だけにもったいない。