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実写映画でもマンガ的な人物造形が持ち味なのだから、アンダーソンがアニメに再び挑んだことは理解できる。労苦の多いストップモーション・アニメをつくりあげたスタッフにも敬意を表したい。だが、監督が黒澤明の映画に影響を受けたという、20年後の近未来日本は奇妙な世界だ。祭り太鼓が鳴り響き、昭和を思わせる街並やお茶の間が登場し、浮世絵のパロディも出てくる。ぶっ飛んだエキゾティック・ジャパンに違和感をおぼえるか否かで、楽しめるかどうかが決まる作品。
17歳、高校生活最後の年。人はどうして自分の外見が嫌いで、ここではない都会に憧れ、母親の小言に反発し、スクールカーストの上ばかりを見つめ、髪型や服装で個性がだせると信じ、早く初体験を済ませたいと願い、夜歩きやバンドやマリファナがクールだと思いこむのか。この物語におけるどの要素も小説や映画で描きつくされたものなのに、ひとつ一つが有機的に結びついている。観る側が共感しながら自分の記憶を投影し、物語の半分以上を補っているから、こうも素晴らしいのか。
タイトルから想像した内容とはちがい、イタリア北部の田舎町を舞台にしたシリアスな高校生3人の物語。愕然としたのは、彼らが聞く音楽や夢中になるファッション、いじめの問題、ネット動画で仕返しをする方法に地域性がなく、他のどの先進国社会とも区別がつかないグローバルなものであることだ。若手俳優の熱演には好感をおぼえたけれど、主要人物の3人がそれぞれ同性愛、兄弟の死、性犯罪など大きなトラウマを抱えており、盛りこみすぎて物語が少しギクシャクしているのでは。
アメリカの高校に通っていたとき、進学しないで軍隊に入る友人が多かった。軍は青春期に通過するもので、除隊後に真の人生がはじまる。本作にもあるように、ベトナム帰還兵の子の世代がイラクやアフガンの戦争に行ったのだろう。軍や大佐は「戦争の英雄」という虚飾を使うが、反戦か否かの前に軍隊生活が誰もの人生に深く刻まれている国の物語。デラウェアの基地からニューハンプシャーの自宅まで息子の遺体を運ぶ短い旅も絶妙。70年代のニューシネマの香りがする良作でした。
多彩なボイスキャストはW・アンダーソンの御威光だろう。凝り性の監督らしく黒澤明作品のこと、日本文化のことを、実によく調べている。だが街の風景や雰囲気、愛犬を捜す少年が下駄履きだったり等々、話との関係が意味不明な箇所も。監督の幻想の中の日本と思えばいいのだが、文化を弄んでいるようでざらざら感が残る。すべての犬をゴミの島に追放する主題に排除の論理がちらり。すると市長が独裁者にも見え、これが20年後の日本かと思うと少々複雑。楽しめないままに終わった。
田舎も勉強も嫌いだが、都会の大学に進学したいヒロインの気持ちに共感が大。そんな青春に、家庭内によくある出来事を絡め、人気の俳優を配役し、最終的に親子の物語にまとめあげた(ラストで父が娘の母へのわだかまりを解く展開はお見事)G・ガーウィグの平衡感覚を評価したい。でもカンニングに成績改竄、ミサ用の御聖体をポテチみたいにポリボリ食べ、下品な言葉を吐くカトリック系高校のパンクな女子高生を演じるには、S・ローナンは整っていて、しっくりこないのが惜しい。
浮きこぼれ3人組を主人公にしたこの映画、邦題にもう少し工夫が欲しいところだが、ドラマの中身はぎっしり。3人の三角関係を主軸にした青春映画であり、そこにはLGBT、いじめ、親子関係等の切実な問題が盛り込まれている。若者、あるいは親の、いずれかに肩入れするのではなく両者を絡ませて、危うく痛々しい3人の日々を描きながらテーマを浮かび上がらせ、衝撃のクライマックスへと導く作劇はうまい。インスタ風の映像、カラフルなファッションにインテリア、音楽も○。
原作が「さらば冬のかもめ」の作者と知って興味が募り未読で見たが、ベトナム戦争からイラク戦争まで、3人の俳優の名演もあり、監督は今回も時を物語にするのがうまかった。「どの世代にもその世代の戦争がある」との名台詞もあり、二つの戦争の間に湾岸戦争が起ったことも忘れさせない。それだけに、遺体に軍服を着せ棺を国旗で覆う息子の葬儀に愛国心を謳う意図があると思いたくないが、今の政情を見るに不穏さがよぎる。L・ヘルムの哀切な歌声、B・ディランの歌詞が胸に刺さる。
近未来設定の舞台はキラキラのテクノロジー系ではなくレトロな荒廃系。そこにウェス・アンダーソンが目指す「日本」の要素が入ったそれは、「ガロ」を思わせるかつてのサブカル系漫画のテイストだった。キャラクター造形はもちろん、音楽や美術にも戦前・戦中のムードが漂い、単なる懐古趣味ではなく時代の行く末に何やら不穏な空気も感じてしまう。チラシ等に載っていない日本人のボイスキャストも豪華なので必聴。個人的には牛乳バーのマスターが気に入っています。
ノア・バームバックや「スウィート17モンスター」などの世界観が好きなら期待を裏切らない作風。米インディペンデント映画シーンの顔として活躍したグレタ・ガーウィグの監督作らしく、メインストリームのカテゴリーからはみ出たキャラクターたちを、複雑な親子関係や思春期のカオスと苛立ちに絡め、きめ細やかに描いている。そのジャンル自体は傍流かもしれないが、このジャンルの中ではむしろ正統派の撮り方で、オスカーにノミネートされたのも納得。思いのほかしたたかなのかも。
言うなればイタリア版「はなればなれに」。男女3人が手をつないで学校内を駆け抜けるカットはまさにルーブル美術館のシーンへのオマージュが全開で、拳銃の使い方やミュージカルの要素を取り入れた演出にも目配せがうかがえる。「はなればなれに」へのオマージュといえば「ドリーマーズ」が有名だが、ゴダールへの憧れはイタリア映画史に脈々と受け継がれているよう。男二人に女一人の物語につきものの定石として、関係は悲劇的な結末をむかえるのだが、そんなところも含めて正しい。
中年、しかも男同士の友情ドラマということで、リンクレイター作品の中でも新鮮な題材。しかしプロの俳優が3週間のリハーサルをした上で撮影に臨んだというからリンクレイター節は健在だ。この手法はドキュメンタリーとフィクションの狭間を描く彼の専売特許といってもいい。「ディア・ハンター」のリンクレイターバージョン的な世界に枯れ目のスティーヴ・カレル、ベテランの風格の中に凶暴さを滲ませるフィッシュバーンらが映える。あと、バーという空間は横長の画面によく似合う。