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三部作の二作目なので、ストーリーについては冷静に言及できないが、耳に楽しい映画だ。イタリア語独特の、巻き舌気味なセリフ回しのテンポと『TAKE BACK THE POWER』や『UNDER DOG』など、パンチの効いた挿入曲との相性がすこぶるいい(音楽はミケーレ・ブラガ)。音のリズムに合わせて、緩急自在なカメラワークも愉快痛快。スローモーションからアニメへとスライドするアクロバチックな展開も面白い。研究員ギャングたちのアジトや車のデザインもユニーク。
ルイ14世の死を「陳腐」と語るセラ監督。たしかに太陽王のイメージを見事に裏切る。ほぼ寝室のベッドで横になっている王だが、帽子をとって笑顔で客に挨拶し、ビスケットを齧ってみせては医者たちを安心させ、昏睡状態でも家臣に偽医者の処分を打診されればすぐに指示を出すなど、死の間際に至るまで重々しく王を演じねばならぬ様子は滑稽ですらある。圧倒的なジャンピエールの存在感と映像美が「朕は国家なり」の言葉が物語る絶対王政末期の脆さを白日の下に晒しているようだ。
孤独な「ひとり」と「ひとり」が対峙する、二人のシーンが印象的だ。ジョーが年老いた母と銀食器を磨くシーン。母を殺されたジョーの逆襲に遭い、キッチンで死にかけた男がシャーリーンの『愛はかげろうのように』を口ずさむシーン。暗い画面の中に、優しさやユーモアがほの明るく灯り、孤独な人間の心に満ちた怒りは哀しみへと変わっていく。静かな変化を、息を潜めて観るのは苦しいが、ラストシーンが素晴らしい。ジョーとニーナの迎える朝は、最後に残る気配まで表題通りの美しさだ。
漱石の前期三部作の主人公たち同様、ボンワンも実存的な不安を抱える男だ。彼の目には、浮気を疑う妻の(勘は見事に的中!)「ちゃんと私を見て」「私にウソはつかないで」と、切羽詰まったアクションが滑稽に映るようだが、神を信じるアルムには、妻からのメールを平気で不倫相手に読ませるなど、男の邪悪さがどぎつく見えている。衝撃的な対比である。ボンワンの夢うつつの生活は、娘の存在によって終止符が打たれたらしいが、ラストシーンの彼の顔に成熟の変化は読み取れなかった。
このイタリア笑劇が連作され、支持される背景にあるのは〝大学教授は役に立たぬ学問にうつつを抜かして高収入を得る、鼻持ちならぬ特権階級〟というルサンチマンだろう。日本でも文系学問が〝趣味〟だなどと揶揄され、似た状況になりつつある。本作の教授たちが追いつめられ、重い肉体を引きずって悪戦苦闘する姿を観客は眺め、いい気味だと嗤う。だからコメディというよりバラエティに近い。問題は、この騒動が社会風刺としても権力批判としても脆弱な点と、可笑しくない点だ。
金色のトウシューズで華麗にリュリのバレエを舞ったのは「王は踊る」(00)のルイ14世だった。演じたのは20代のブノワ・マジメルだが、いま死の床に伏せる同王を演じるのはなんとJP・レオ。阿諛追従を競うばかりの臣下や貴婦人集団、怪しげな特効薬を振る舞う藪医者が病床の周囲を跋扈し、いまわの際にあってなお王権示威のサービスを強いられるのは王の方ではないか。誰もが気づかぬふりの茶番の共有を、新鋭セラ監督が半径3メートルのスケールでネチッこく持続させる。
死の誘惑に取り憑かれた凶暴な男が、ブロンド美少女を性的虐待から救出する構図は、あまりにもハードボイルドの典型に収まっているが、少女を演じたE・サムソノフはワシコウスカやファニング姉妹の衣鉢を継ぐスターとなるだろう。ティクヴァ、W・レフンなどと続いたナルシス的幻想サスペンスは、トム・フォード「ノクターナル・アニマルズ」で頂点を極めたかに見えたが、現代映画はこの新ジャンル開拓に適した時代らしい。ディストピア内面化時代に相応しいグロテスクだ。
国際舞台では賞讃の的のホン・サンスとキム・ミニだが、国内では盗人猛々しいと、その不倫愛は針の筵なのだと韓国の知人から聞いた。この醜聞も早く時間が過ぎて遠くから眺めたいと願うのは、無責任に過ぎるだろうか。TIFFで第1作「豚が井戸に落ちた日」を見たのがホンとの馴れ初めだが、当初は好きになれなかった。それがどうだ。今では嬉々として駆け寄る幼犬のようなファンだ。すべての傑作がそうであるように、本作も時間を置いて再見する日を早くも楽しみにしている。
専門知識は抜群だけど、いざ実行となると間が抜けている10人の教授たち。このチームが女刑事と手を組んでドラッグ壊滅作戦に。人気映画の続篇のせいか、導入部あたりは人物の設定や関係が分かりにくいのが難点。が、お賑やかなコメディーで、往年の「黄金の七人」を思い出す。ま、あれほどスマートじゃないけど。少し展開がまどろっこしいが、クライマックスが懐かしの列車活劇なのが嬉しい。ここで点数もぐんと上がって。次回作は(巻末の予告を見る限り)派手で面白そう!
病床日記。キャメラは大半、暗い寝室から一歩も動かない。その主人公がルイ14世というところ。王もまた人なりと見せて、実はその周辺の人々の観察映画の趣きもあり。誰ひとりとして王を人間として扱わぬ、その皮肉のカラさが舌を刺す。王の孤独。結局、その生涯を通して、誰からも愛されなかった、その寂しさがじわり匂い、こちらはゾッとする。映画の流れは単調、しだいに退屈も覚える。だけど闇の中で舌なめずりしながら見つめてるような、この監督の息づかいを肌に感じて
まるで「タクシー・ドライバー」の修羅場のタッチで、ハードボイルドの探偵ものが綴られているような映画。精神を病んでいる主人公。母親との生活は「サイコ」みたいで。迷宮をさまよっている感覚。だけどこのギザギザしたスタイルには心地よさが。音楽の選曲のセンスも含め、映画全体がカッコいいのだ。少女の救出が、子ども時代のトラウマからの解放になる――という物語の芯がカッチリしているから、どんな混乱状況を描いていても、ずっと惹きつけられるのだろう。邦題が上手い。
この監督、実を言うと少し苦手。本人にとっては大事かもしれないけど、第三者から見たらど~でもいいことをぐだぐだ描く、そのスタイルに辟易して。だけどこの新作を観ると、そのぐだぐだぶりもどこか円熟の域に達した心地よさがあって。それはこちらが見慣れて、その感覚が肌に合ってきたのか。主要人物は4人。場面も数えるほど。ただそれだけで、男と女、その食い違いを軽やかに語り見せたこの脚本と演出。ここまでやればと感心した。だけど、男のキャラは好きになれないなあ。