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訓練生たちのキャラが充分立てられないまま話が進み、どのイェーガーに誰が乗りこんだのかあやふやなまま東京大決戦が始まるので、肝心のクライマックスで、怪獣と巨大ロボットのバトルだけを純粋に楽しめる観客以外はどうでもよくなってしまいそう。対話シーンのカット割りのせわしなさも、演出力に自信がないことの表われではと思ってしまう。だがそれより何より、前作の面白さは、ドラマ部分でもバトル部分でも、デル・トロの行き届いた演出あってこそだったのだと思い知らされる。
あとあと効いてくるのだろうと思える意味深長な台詞が多数聞こえつつ、なかなか話の焦点は見えてこないが、あるシーンでJ・ブリッジスが突然映画を動かす。彼のこの演技にはどうしたって心を奪われないわけにはいかず、その後こちらはもはや作り手のなすがまま。そしてこの映画は、まさにわれわれが憧れていた(たぶん脳内にしか存在しない)NYの物語であり、美しい寓話を観ている思いがする。監督の前作で、撮影監督も同じである「ギフテッド」との画調の違いも興味深い。
肝心なあのシーンは台詞多すぎじゃないかとか、そもそも早い段階で黒幕の見当がついてしまう観客が結構いるんじゃないかとか思うけど、パロディでもなく変化球でもない頭脳戦交じりのスパイアクションを、D・クレイグやT・クルーズの映画以外でも観られるのはそれだけでうれしい。ジュディ・デンチのMのイメージを重ねようとしたのかもしれないが、脚本では男性だったというMI5の捜査官の役を、アプテッドが女性に替えたのは、作品世界を豊かにする超ファインプレーだと思う。
「ペンタゴン・ペーパーズ」を観たとき、デビュー当時の才気あふれるスピルバーグが帰ってきたと驚愕したのだが、ここに来てコメディ風味の強い少年少女冒険譚を撮るとは、70歳超えの還暦というか、いよいよマジで若返りしているかのようだ。しかもこれだけ小ネタをぶっこみながらスマートに見せてしまうあたり名匠の技で、現実とヴァーチャルを並行して進める手腕は言うまでもなく。そしてまたしても一種の父親探しの物語。ストックハウゼンのプロダクションデザインが今回も見事。
製作スタッフが日本の特撮映画を愛好し、研究しつくしているうえに、重要な舞台が東京と富士山麓だから、日本の怪獣映画ファンは大喜びするはずだ。と同時に、多様な怪獣を産み出している日本の作り手としては、これだけの製作予算が自分たちにもあればとくやしく思うだろう。昼間の撮影で怪獣が現れると、背後の建物や風景がいかにもセット然としてスカスカだったことが多いからだ。美術デザインと造り物を見ているのが楽しく、物語もKAIJU相手に感情移入できるドラマになっていた。
映し出される場所や流れる名曲によってマーク・ウェブ監督のニューヨークへのあこがれが伝わってくる。主人公の青年トーマス(カラム・タナー)や、謎の隣人(ジェフ・ブリッジス)以下、配役も渋くてニューヨーカー風。だがトーマスが「今のニューヨークは商業主義に覆い尽くされ、新たなムーヴメントは起きなくなってしまった」と考えるように、かつてウディ・アレンが描いた街の肌触りは伝わってこない。出版編集にたずさわる人物が出てくるけれど、彼らの未熟な言動は時代のせいか。
テロ事件を素材にした映画が次々に公開されているが、これは現実にあった事件を連想させながら、芸達者な俳優を揃えたスパイ・アクション。しかし次に起こるのはバイオ・テロだということで、そのための準備をする場面を見せるので、無気味。ヒロインのノオミ・ラパスの瞬発力のある動きはみごとで、脇役トニ・コレットの知的な佇まいがシブい。男性陣もオーランド・ブルーム、マイケル・ダグラス、ジョン・マルコヴィッチと贅沢。善人と見せかけて、実は悪人というパターンが多すぎる。
2045年、アメリカの荒廃した都市団地に居住する少年が特殊メガネをかけることによってバーチャルの世界「オアシス」へと入っていくプロセスはさすがスピルバーグだけに造形力が圧倒的。作品中に過去の映画が次々に登場してくる。原作者アーネスト・クラインのオタクぶりは相当なもので、彼が書いた『ゲームウォーズ』には、日本のウルトラマンまで出てくるわけだが、昔見た映像の引用箇所が出てくるたびに、観客席からオジさんたちのドヨメキの声があり、彼らのために星一つ増。
ギジェルモ・デル・トロが関わってはいるが、前作のようなセンス・オブ・ワンダーとノスタルジーの融合は消失。謎の敵イェーガーを登場させて戦うわけだが、いかにもな怪獣とロボットの取っ組み合いが観たいわけだし、シリーズの本筋なわけで、それを新趣向として打ち出されてもという感じ。中国資本全開だけに致し方ないとは思うが、日本をめぐる要素も激減。ひとまず富士山とガンダム像を出しときゃ喜ぶだろう的な姿勢、前作の功労者である菊地凛子へのあまりにもの扱いに溜息。
エンパイア・ステート・ビルをはじめとしたベタなランドマークを出さない。セントラル・パークは出るが、これ見よがしには映さず。これが上流階級やそうでない者もふくめ、マンハッタンで生きる人々の生活感をうまく醸す。「(500)日のサマー」以前からM・ウェブが映画化を熱望していた企画だが、妙に力を入れることなく若い層も中年や壮年と呼ばれる層も観ればなにかしら刺さるドラマに仕上げている。ひとまず〝大作から離れた監督のやっと地に足がつけた”感は伝わる。
「007」「ナルニア国物語」といったエンタメから「ネル」みたいなドラマまで撮れるマイケル・アプテッドがその職人監督ぶりを遺憾なく発揮。軽快な語り口、派手ではないがそれなりにアガる見せ場の数々、加えて要となるキャラたちに実力派を配したことでドシッとした雰囲気を醸すことに成功。だが、話としてはありがちな諜報サスペンスだし、悪玉もはなからそのフラグが立ちまくり、N・パラスも共演陣が放つオーラに飲まれっぱなし。なかでも、O・ブルームは役回りも含めて最高。
オアシス内でイースターエッグを探す主人公同様に、こちらも他作品のキャラやガジェットを見つけ出そうと目を皿のようにしてしまう140分。だが、そんな娯楽大作である一方でスピルバーグの私映画でもある。現実世界に目を向けない主人公は若き日の彼であり(眼鏡をかけた姿は若き日の御大に似せている)、彼に現実世界も悪くはないと説くハリデーは酸いも甘いも知った現在の彼でもある。御大が自己を見つめ直すように撮り上げた、壮大なスケールの内省的作品といった趣。