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自らもトルコからの移民二世であるファティ・アキン監督がじっくりと撮り上げた、ハンブルクの移民街で起こった爆弾テロから始まる法廷劇にして復讐劇。作り手の真摯さは疑うべくもないのだけれど、率直に言うとこのラストには疑問もある。ネタバレになるので何も書けないが、ヒロインがドイツ人であることが重要だとはいえ、やはりこれでは何も解決していないのでは? とはいえ、こうするしかないし、こうなるしかない、というやりきれなさを描こうとしたのもわかるのだが。もやもや。
映像センスに韓国映画ぽさがほぼ皆無であり、これがデビュー作だという監督イ・サランに興味が涌いたのだが、経歴は全然わからなかった。妙に静かなトーンと、唐突な場面転換、色とりどりのライティングなどのせいで、リアルと題されていながら、夢幻のようなアンリアルな雰囲気が全篇を支配している。派手なアクションはクライマックス(はスゴイけど)までほとんどなく、舞台劇のようでさえある。アサイヤスやレフンのようなヘンな映画作家とも一脈通じる、かなりの異色作で野心作。
ダイアン・キートンは年齢を重ねても相変わらずとても魅力的だ。表情や喋り方から滲み出る知性とユーモア。ファッションセンスも変わらない。だがこの映画を支えているのは名優ブレンダン・グリーソンだと思う。キートンがいつもキートンだとしたら、グリーソンは毎回別人だ。今回はヘンリー・ソローのような生活を送る偏屈な森の世捨て人を見事に演じている。社会的なテーマが据えられてはいるが、どう考えても相性が良さそうに見えない二人の心が近づいてゆくさまがこの作品の肝だ。
とにかくヒロインのパティを演じるダニエル・マクドナルドのキャラとラップが超サイコー。ラップ以外の音楽的要素も他の登場人物たちのキャラもサイコー。手持ちキャメラ中心のドキュメンタリー・タッチのルックも効果的。ジェレミー・ジャスパー監督の演出は時にやり過ぎ感もあるが、全体として実に好ましいラブリーファッキンワンチャンシンデレラストーリーに仕上がっている。娘と母と祖母の葛藤の物語としてもすごく良く出来ている。日本語ラップクラスタの皆さんにも激烈お薦め。
家族ドラマ、移民問題、復讐劇など見るべき要素に不足はない。中でも第二部の法廷劇に見応えがある。ダイアン・クルーガー演じるヒロインの感情に基づいた主観と、裁判の状況を取り巻く客観的な現実が一つの空間内で行き交い、正義とは誰にとっての何のためのものなのかが問われる。原告であるヒロインが容疑者の父親と交わす短いやり取りに込められた希望と絶望は珠玉。厳密には彼女は三度目の決断をしていると思うのだが、その結果よりも、そこへ至るまでの過程に可能性を見つけたい。
撮影後に監督が交代するという嘘みたいなスキャンダルに巻き込まれたいわくつきの一本。かなり斬新な作りにもかかわらず目が離せなかった。高級カジノを舞台にしたゴージャスな画づくりはこれまでの韓国映画には見られなかったニュータイプ。主演のキム・スヒョンは極端な振り幅が持ち味で、メソッドにも自然派にも当てはまらない芝居は演技マシンのよう。身体能力も凄まじく、その熱量で二役を演じるのは人間とは思えない離れ業で、彼のサイボーグ俳優ぶりだけでも一見の価値はある。
人生に定年はない。社会が高齢化するということは、現役としての第一線を退いたからといって、その中で生きるための問題からは逃れられないということだ。ダイアン・キートン演じる勝ち組のような未亡人然り、自由の象徴であるかのように見えるホームレスのドナルドでさえ、彼並みの頑固な人柄でなければその生き方を貫くのが難しいのもまた事実。このドナルドを演じたブレンダン・グリーソンがいい。手作り小屋のクオリティは高いし、優雅なピクニックデートを見ているのも悪くない。
歌手にとって肉体は楽器である。主演のマクドナルドの豊満な体のサイズとボリュームはその質量でスクリーン内でも圧倒的な存在感を放っているが、さらに母親も巨体なので、より迫力は増す。底辺からのサクセスストーリーは典型的なヒップホップの精神に則っているが、そこに母娘のドラマを入れ込んだところが、女性ラッパーというキャラクターならではの目のつけどころ。体型も顔も素材はずっと同じ人物なのに、終盤ではゴージャスなファーをまとい堂々とステージに立つ姿が清々しい。
トルコ移民の夫と子供をテロリストに殺されたヒロインは、偏見に基づく捜査ミスと裁判により無罪となった犯人を追及する。トルコ移民を両親に持つアキン監督のタッチはサスペンス映画というよりは告発劇の様相を帯びてくる。衝撃的なラストシーンは映像的にも美しく印象的だ。ダイアン・クルーガーがいい。アラブゲリラ対西欧の正義という映画が多いなかで、ネオナチのレイシストのテロに対して、ヒロインがたった一人で企てる復讐という図式は考えさせられるものがある。
豪華カジノの経営者で精神障害の持ち主、ギャングとの抗争、そこへ現れる仮面をつけたドッペルゲンガー。荒唐無稽な劇画タッチは時には安易なリアリズムへの批判にもなるが、ここにはハリウッド大作への追随しかない。いくら大仕掛けで派手なアクション・シーンやショーを観せられても、共感出来る人物が一人もいない絵空事を138分見せられるのは辛い。監督イ・サランのデビュー作だが、才能の片鱗を窺わせるシーンもないし、キム・スヒョンの新しい魅力も引き出されていない。
ダイアン・キートンは相変わらずキュートで魅力的だが、お相手のブレンダン・グリーソンは彼女より若いにも関わらず、この老けぶり汚れぶりは、大人の恋を描いたロマンティック・コメディの主人公としてはなじめない。名優なんだろうが、人間的魅力を感じさせない設定、役作りなので、彼女の関心、同情がいつしか恋になっていく心理が伝わってこない。森の住人が土地の所有権を獲得した裁判劇の実話に基づいているが、キートン主演のラブコメに仕立て上げるのはいささか苦しい。
ダニエル・マクドナルドの熱演が素晴らしい。ジャージー訛りのラップの練習に2年かけたというが、ディクションがいいので、ラップが詩だということがよくわかる。監督脚本のG・ジャスパーは脇役の造形が巧みだ。歌手くずれのカラオケと酒浸りの母親、寝たきりながらタフな祖母、殆ど口を聞かない黒人の過激ラッパー、あらゆる世代人種に気を配り泣かせどころを心得た脚本はベテランMV作家ならではのもの。反社会、反体制的な色合いは薄いが、ウェルメイドな楽しめる映画だ。