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典型的なバディもので、キャラクター造型もストーリーの展開も見せ場もアクションシーンも何もかもが既視感満載なのだが、では面白くないのかといえば、結構面白い。それはひとえにパク・ソジュンとカン・ハヌルというダブル主演男優がそれぞれにイイ味を出しているから。私はどちらも知らなかったのですが、全然タイプが違うのにもかかわらず、二人とも良い意味での軽みとしつこさのない存在感が効果を上げていると思いました。原題『青年警察』の方がセンス良いと思うんだけどなあ。
半世紀の時を隔てた、いずれも十二歳の聾者(片方はなったばかり)の少年少女を主人公に据え、1927年のパートはモノクロサイレントで押し通す。他にも監督ヘインズはかなり高度なことに挑戦しているのだが(人形劇とかね)、ちょっと志の高さが仇になってしまったみたい。二つの時間がめまぐるしく転換する前半はすごく良いのだが、そこを頑張り過ぎて、すべての謎が明かされる1977年のラストまでに息切れしてしまった感じ。本人も聾者だというローズ役の少女の表情が魅力的。
設定は面白い。なんとなく日本人が思いつきそうなアイデアだが、因習に絡めとられた北アフリカの女の子を、奥手のアメリカ人青年がデトロイトから石油パイプライン監視の遠隔操作ロボットを通して助けようとする。主演二人はとても瑞々しい。ジョー・コールは気弱げな目元が印象的だし、リナ・エル=アラビはまだ幼さが残るがすごい美人だ。先端テクノロジーを使ったお伽噺というべき話だが、しかしこのラストはさすがにちょっとイージーゴーイングなのではないでしょうか?
典型的な監禁もので、もっと設定も展開もヒネりにヒネりまくった作品を随分観てきてしまった身としては、かえって新鮮に感じるかと思いきや、やはり「なぜ今この題材?」という疑問は禁じ得なかった。だがオリジナリティはない分、ディテールにこだわってじっくりと撮っているのは好感が持てる。主演のテリーサ・パーマーは頑張っているのだが、肝心の男の演技にいまいち狂気が感じられない。あとエロチックな場面が多いのだけど、なんだかサービスショットぽくてちょっとうんざり。
ドラマで人気のパク・ソジュンと現在入隊中のカン・ハヌルによるバディもの。かなりコテコテのコメディ色が強くわかりやすい芝居が多い。熱血タイプとインテリタイプの対比設定はあるが、現場経験のない学生役なのでそこまでキャラが徹底されておらず、若さゆえの勢いで押していく感じ。その分、戦闘服で登場する終盤のアクションはビシッと決める。カン・ハヌルは映像では物静かな存在感や雰囲気に芝居が助けられている部分がまだ大きいので、口数の多い役だとちょっと残念。
カラーとモノクロの描き分け以上に印象的なのが光と影のコントラスト。とにかく画面の暗いシーンが多い。暗がりに潜むものに光を当てるのではなく、そのまま目を凝らして見つめるという風情なのだ。その試みはラストのシークエンスで完成する。映画とは光と闇の芸術なのだから。もう一つの見どころは音楽の使い方。耳の不自由な少女がメインのモノクロ過去パートは昔のサイレント映画を意識した作りになっており、劇中の生活音まで音楽の一部として表現したサウンドワークが楽しい。
1万キロも離れた場所から知らない誰かに自分の行動を見られているとはなんて恐ろしいことなのだろう。ロボットだけでも脅威なのに、見ず知らずの声が喋り出したら、逃げるの一択しかない。ましてや勝手に身辺を探られていたら……絶対に会いたくない。目の見えない老人との交流が最も幸せな形だろう。椅子の上で運命が見つかるなら苦労はない。せっかくテクノロジーの進化がもたらした出会いの奇跡というチャンスから監視社会への恐怖しか感じられなかった自分をただただ残念に思う。
旅先で感じたロマンスの予感が一転悪夢へ……という展開は生々しい。ただしそれがゴロツキや犯罪集団などによるものではないというところがミソだ。どちらかというと冴えない、顔つきもあまり印象に残りそうにない男の単独監禁はいかにも素人らしいツメの甘さが目立つも、条件さえ揃えば成立してしまう怖さを証明している。目立たない人が、さしたる目的も計画性もないまま、なんとなく犯行に及んでしまうという曖昧さ。それは真実なのかもしれないがしかしもう少し考察が欲しい。
一昔前わが国でも流行った青春刑事ドラマや学園ドラマを思わせる作りである。今の韓流刑事ドラマに見られる人間の暗部をえぐる過激なバイオレンスや体制批判などノワールな雰囲気はほとんどなく、明るく楽しいバディものアクション・ドラマに終始しているが、素人同然の警官の卵の夜を徹しての活躍は楽しく、パク・ソジュン、カン・ハヌルのコンビも生き生きしている。こういう映画も悪くはないが、今日の水準からみると内容的にも映像的にもいささか食い足りないのは事実だ。
トム・ヘインズのストーリーテリングの上手さには感心する。20年代映画スターに憧れNYを目指す少女と亡き父の面影を求め70年代のNYの美術館に現れる少年。二つの時代の物語がカットバックされて最後に一つに結びつき意外な感動となる。無声映画のようなモノクロ映像と、精緻な考証で再現される二つのNYが素晴らしい。撮影、美術、衣裳が描き出す細部が映画に輝きを与えている。スコセッシの撮った同じ原作者B・セルズニックの「ヒューゴの不思議な発明」と比較すると面白い。
遠隔操作の監視ロボットのモニター映像に映るアフリカの少女に恋するアメリカの警備会社の青年。原題は『ロミオとジュリエット』になぞらえジュリエットを見つめる眼差しといった意だ。六本足の監視ロボットのアイディアは面白いのだが、この一目惚れの恋の進行とその結末は余りにもナイーブで楽天的に思える。アメリカとアフリカを隔てる、地理的、歴史的、政治経済的さらには宗教上の大きな格差すべてを拾象してハッピーエンドに持っていく描き方には眉に唾をつけざるを得ない。
誘拐監禁された女性の脱出サスペンス劇だが、スリラーというよりは男女の異常な関係、異常な性愛が描かれる。この種のドラマは、サド侯爵の昔から、女性はあくまで欲望の対象で、男性目線で男性の欲望を描くものになりがちだが、今回は原作も監督も女性なのでどのような視点で描かれるか興味があった。テリーサ・パーマーは、密室の二人の間の愛憎、暴力、被虐的セックス、心理的な苦痛、孤独など困難な題材に挑み健闘している。文学教師のアンディの日常生活の設定も面白い。