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刷り込みとは恐ろしいもので、私にとってアンディ・ラウは「七福星」のラッキーから「ゴッド・ギャンブラー」のナイフ、「インファナル・アフェア」のラウへと続くアクション・スターだ。この系譜に連なる本作の怪盗ダンも、問答無用に格好いい。仏刑務所を出所するや否や、出迎えのヘリに颯爽と乗り込み、パラシュートを操って、バイクを転がすうちにタキシード姿でパーティへGO! 泥棒の世界に舞い戻る華麗な冒頭シーンでノックアウト。ラウ様なら「プランB」でも無問題。
父親と娘の夢が完全一致する幸運に護られて、親子で女子レスリング界の頂点を目指す鉄板のスポ根エンタメ映画か? という繊弱な見立てを豪快に裏切り、娘ひいてはインド女性の未来を案じて、女を見下す全ての人間に闘いを挑む、骨太なテーマに大興奮。父が金メダルにこだわる理由には滂沱の涙。父の猛烈指導に純粋培養されるのではなく、成長過程で抱く葛藤を、姉妹が手を取り合い一個ずつ昇華する中、畏るべき師匠としての父の愛を受け容れていく師弟のドラマもナチュラルでいい。
シングルにさよならするのは、元スター女優のジュヨンだけではない。ジュヨンのわがままに巻き込まれて、妊婦生活を送る中学生ダンジの孤独(親を亡くし、頼りない姉に頼らなくては生きていけない身の上や、妊娠という身体変化に伴う不安など)を掬い上げることで、登場人物各々の独りよがりの壁をとっぱらう。女優の衣裳と普段着(サボテン柄のパジャマ!)とのメリハリ同様、コミカルとシリアスのバランスが素晴らしい。老犬サンナムの貫祿もよいアクセントの、泣いて笑える人情喜劇。
シンプルだが責めるようなピアノの音は、カメラが独りぼっちの少年を捕らえるとざわつき始め、静かな森に積もりゆく雪と重なって恨めしく響く。冒頭から怒りと恐怖に満ちた本作に愛などあるはずがない。うまくいかないと全部人のせいにして逃げるダメな大人のズルい部分を見せつけられて、嫌な気持ちになるが、感情むき出しの大人とは対照的に、人知れずむせび泣く子供にかける言葉を持たない自分に愕然とする時すでに、途方もない悲劇に取り込まれているのだ。渾然一体の圧倒的絶望。
さしずめ劉徳華がルパン三世、ジャン・レノが銭形警部、〝黒衣の刺客〟舒淇が峰不二子という役回り。全篇欧州ロケを敢行した盗賊映画とはいえ山奥の城館中心で、こぢんまりかつ弛緩した作り。しかし裏を返せば、今回監督に専念した馮徳倫を中心に、昔なじみの香港スターが集まって醸す勝手知ったる緩さとも解釈できる。舒淇と馮徳倫は本作の撮影開始前にプラハで電撃結婚したそうだが、二人はアイドル時代の「美少年の恋」(98)「わすれな草」(99)共演以来の長いつき合いだ。
日本女子レスリング界で協会幹部のパワハラ問題が騒動となっている。そんななか公開されるこのインド映画については、泣かせるエンタメとして享受する観客と、娘に対する父親の夢の押しつけ、つまり一種のDVではないかと困惑する観客に大きく分かれるかもしれない。ここにもまた現代映画が囚われた2つの妄執があからさまに貼りついている。つまり〈夢追い〉と〈家族愛〉である。この2つは普遍の顔をして、いかなる狂気をも併呑してやまない。本作は併呑の好例だ。
キム・ヘスは失礼ながら今年48歳とのこと。若さを異常に尊ぶ伝統が根を張った韓国芸能界にあって、彼女は存在自体が挑戦となっている。韓流ブーム時代にNHKで放送されたドラマ『クッキ』(99)の主演が印象深い。本作はそんなキム・ヘスの現在の美魔女ぶりを賞讃しつつ自虐喜劇として楽しませるという趣旨のみで成立している。美しくセクシーだが愚かで自分勝手、周囲に尻ぬぐいばかりさせるが憎めないところがある。私たちもまたそんな周囲の人々と同じ目線を共有するだろう。
モスクワのデザイナーズマンションみたいなスタイリッシュな生活環境を眺めつつ、かつての社会主義首都もこんな風景になったかと認識を改めざるを得ない。高層マンション街の真ん中にぽっかりと広がる森林が、人間界の空虚を象徴するかのように禍々しく口を開ける。子どもが蒸発し、民間組織も動員して大規模な捜索が始まる。正視しがたい悲劇なのに、捜索シーンは禁忌的な美しさが否応なしに増していく。映画というものの残酷な魅惑が浮かび上がる一作だ。
ぱきぱきと調子のいい展開。あれよあれよという間に一巻の終わりとなる。ドロボーもの。それもすごくスマートで人は殺さない。観てると、もうなるようになれという気分に。頭をからっぽにして楽しめる。だけど快盗に腐れ縁のデカが絡み、昔馴染みの彼女も絡んで、となるとこの演出の一本調子が気になってくる。もう少しタメの場面をと。強奪作戦も最新メカに頼りすぎで、なんか味気ない。ケイパーものなんだから、頭脳戦の要素も盛り込んでほしく。どうも脚本が行き当たりばったり。
結婚して母親となってガマンしながら一生を過ごすより、レスリングをやって女として自立しろ。なんて諭す親父。娘二人は彼に従い、時に反発しながら闘い続け、結果、父親の喜ぶ顔を観て涙、涙。なんだこれ、父権復活映画か。それがインド映画のアッケラカーン・タッチで描かれる。いやもうこちらはただただ畏れ入るばかり。ただし時代劇では活きていた大芝居やパターンなキャラが、現代ものでは大仰すぎて。それでも見せ場のレスリング場面は、さすが客を楽しませるツボを押さえて感心。
人気没落気味の女優が、シングルマザーになると偽って復活。このわがまま女優をかいがいしく世話するスタイリストを、「新感染」のタフガイ(マ・ドンソク)が演じているのがお楽しみ。妊娠する中学生女子も含めて、役者陣がみな魅力的。その展開も快調。が、女優の利己主義を窘めるあたりから、それまでの喜劇調がシリアスに転じ、ちと重くなったのは残念。ここはすかっとコメディの枠内の解決を図ってほしかったところ。だけど近頃の日本の喜劇映画よりはるかに楽しめて。
男の子の泣きっ面が後を引く。父と母、そのいがみ合い。二人にはそれぞれ愛人がいて、その性描写がねちっこい。この監督が、珍しく愛欲に眼を向けて、舌なめずりしているようで。それからの失踪した息子の捜索。そこを延々と連ねたところ。じわじわとこの父母に息子の痛みを沁み込ませていく怖さ。これは男と女と化した親、その罪と罰の映画ともとれる。が、終盤のウクライナの映像。これが今のロシアを描いた映画だという匂いが。となると、あの少年はいったい何の暗喩だろう?