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何もかもが行儀よく予想どおりに収まっていき(エンドロールの締めくくり方までそつない)、そのわりによく考えたら道理に合わない箇所も多いが、それらを補って余りある美術の美しさ、ガイコツキャラのキュートさ、ミュージカル映画としてのよさ。家族愛押しが鼻につくとしても、たぶん誰の心にもあるだろう、永遠に会えなくなってしまった人たちを思う部分が揺さぶられる。しかし、死者の世界の入管(?)の規律性には「死んだあとまでこれか……」と、何だかがっくりきてしまった。
突如現われた赤ん坊に両親の愛情を独占されるところから始まる奇想天外な大冒険。全員ではないとしても多くの人が子どものころに生きていた、空想と現実が地続きになった世界が見事に表現されており、何よりもまず、チャック・ジョーンズらが活躍した時代のワーナー・アニメーション(いわば反ディズニー)の、ワイルドな過激さを継承しているのが素晴らしい。ボス・ベイビーの動きと表情がとても工夫されていて、冒頭いきなりのアステアをはじめとして、歌曲の使い方もぐっと来る。
容貌の似た俳優ならもっとほかにもいるだろうにと思ったが、特殊メイクの技術にまず驚く。そのうえ全身の雰囲気まで激似に仕上げてきたオールドマン。もちろんただの物真似ショーではなく、チャーチルがなぜ愛されたかもなぜ嫌悪されたかもよくわかる魅力的な演技。ところで、民衆に後押しされて対独徹底抗戦に踏み切ったという描き方は、話としては盛り上がるけれど、見方を変えれば恐ろしくもある。大義の有無とは関係なく、戦争が本格化するときというのはそういうものなのだろう。
L・ベッソン版のスター・ウォーズと言いたくなるが、むしろこれの原作のほうがスター・ウォーズに影響を与えているそうで。そしてこちらの作品のヴィジュアルは、ハリウッドSFではなくまさにバンド・デシネ。何だか寄り道の多い映画だけれど、その寄り道の過程ですごく魅力的な異星人や目の眩むような素晴らしいイメージが次々登場するわけだから、その寄り道こそを楽しみたい。異星人たちに食われてる感があるものの主演の男女も可愛い。親子で一緒に観るのがたぶんいちばん正解。
最近は麻薬戦争ものの舞台にばかりなっているメキシコで、「死者の日」の祭礼に由来するガイコツたちを登場させて、陽気なミュージカル・アニメした試みがいい。芸術家フリーダ・カーロの奇妙なガイコツ姿や古典的メキシコ映画の引用など、教養ゆたかな作品構成で、カラフルな建物の遠景にも目を見張る。主人公のミゲル少年が好きな音楽を家訓により禁止されている理由の説明が長すぎるとも思ったが、「生者の国」の人間世界も老婆ココの皺だらけの顔などがきちんと描かれてリッパ。
両親と仲良く暮らしている少年に弟ができると、普通でも動揺が走るのだが、その赤ん坊が実は柄のわるい声を出すおっさんであることから大騒ぎ。地球環境をよくするために人間の小型化をはかる「ダウンサイズ」と立て続けに見たので、SF的発想の可能性が楽しめた。特殊なミルクが切れると、ボス・ベイビーは平凡な赤ちゃんになってしまう。その微妙に変化する表情をドリーム・ワークスのアニメは巧く表現している。最後はラスベガスが舞台でプレスリーを活用して音楽とギャグも満載。
ヒトラーを相手に頑強に戦ったチャーチルについて歴史書にない部分をフィクションに頼りながら映画化したところが魅力。辻一弘のメイクによりゲイリー・オールドマンが俳優であることを忘れさせるほどチャ―チルになりきっている。マクカーテンの脚本もナチス打倒の演説をよくとらえていて、地下鉄内のくさいシーンもあるけれど、チャーチルの国会内の孤立感を描いたあとでは、この程度の押しは必要。夫人役のスコット・トーマスと女秘書リリー・ジェームスの脇役が効いている。
ベッソン監督は原作のコミックによほど熱中していたらしく惑星都市のディテールやそこに住む生きもののキャラクターが贅沢に仕上がっている。原画のイメージに合っていないとファンは失望するのだが、その点、ヴァレリアン役のデイン・デハーンとローレリーヌ役のカーラ・デルヴィーニュはぴったり。ジャズのハービー・ハンコックが国防長官役で出てきたのには驚いたが、リアーナがポールダンスを踊るのも魅力的。ベッソンのこだわりがこういう所にもあり、ポップアートとして楽しい。
カラフルを極めた〝死者の国〟の風景や住人たちのユニークな暮らしぶりは楽しいし、あの世からこの世へ越えていくのに難儀する者がいるという実際の米メキシコ国境を揶揄したあたりにもニヤリ。だが、毒っぽい部分はそこくらいで、予定調和全開で物語が進行。本気でいたたまれなくなるレベルで少年と家族の音楽をめぐる溝の深さを描くわりには、それがササッと埋まるのにはいさか拍子抜け。ディズニー/ピクサーの作品ではあるが、良くも悪くもディズニー濃度の強い作品になっている。
吹替版を鑑賞。しわがれ声で葉巻を咥えたベビー・ハーマンという、出番は短いがインパクト大なキャラが「ロジャー・ラビット」にいた。彼と同様、赤ん坊なのに言動と格好は大人というのはどうしたって可笑しくなってしまうギャップである。というわけでボス・ベイビーの一挙一動に笑わせてもらったが、仕事に生きるよりも家族と生きるほうが幸せと決めつける姿勢には少し違和感が。まぁ、あくまでファミリー向けの作品だから仕方ないのかも。ボス・ベイビー=ムロツヨシは好演。
イギリスならではの戦勝ノスタルジー映画でもあるし、ここのところ迷走している同国の政治家たちに対して「しゃきっとしろ」と叱る映画でもある。とりあえず、ダイナモ作戦における政府側の動向が良く分かる“「ダンケルク」アナザーサイド”として興味深く観られる。といってもチャーチル以外のキャラは活きておらず、政治的駆け引きもイキり合っているだけでスリルなし。G・オールドマンに施された特殊メイクのもはや本物な質感は確かに凄いが、年老いて太った彼にしか見えず。
大味なのがベッソンの持ち味。そんな固定観念を捨てて観たつもりだが、やはり弛緩したアクションとギャグが延々とダラダラと続く。悪人がロープで吊るされて文字通り〝お縄にかけられる〟シーンには、いくらバンド・デシネが原作だからといっても漫画すぎるだろと脱力。だが、女優の魅力を存分に引き出すというもうひとつの持ち味は存分に発揮されており、あらゆる角度からデルヴィーニュ嬢のキュートさを捉えているのは素晴らしい。ゆえに、彼女を鑑賞するための作品と思えばイケる。