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パゾリーニの『テオレマ』みたいな話かと思いきや、神学的というよりも世俗的な「罪と罰」のテーマを徹底的に突き詰めた、独創的な設定のサイコスリラー。物語の様相が露わになってくるとともに怖気が走り、いったいラストはどうなってしまうのかと不安満点で観続けた。なぜ彼があんな能力(?)を持っているのかが一切語られることなく、物語がひたすらバッドな方向へと進行してゆくのは、シャマラン的世界観の極端化とも言える。最近割と多いトラウマ映画の中でも群を抜く仕上がり。
観始めてすぐ軽いデジャヴのような感覚に襲われたら、以前この欄で取り上げた「プリースト 悪魔を葬る者」の監督が脚本だった。今回も神父が出てくる。過去と現在を複雑に交錯させつつ展開するストーリーは「家ものホラー」の常道に則っているようで、中盤から謎また謎で収拾がつかなくなると思いきや、ラストにはあっと驚く真相が待っている(ヒントは邦題)。ホラーだと思っていたらSFだったというね。色々と辻褄が合わないこともなくはないのだが、そこはそれ、ということで。
ハリー・ディーン・スタントンのことをまったく知らずにこの映画を観たとしたら、と想像してみて、それでも感動的な映画だと思えたから、良く出来てるのだと思う。とはいえもちろん、こちらは老名優の最期の姿をそこに見ているわけで、実際のスタントンがラッキーみたいな人物だったかどうかは関係なく、その一挙手一投足、その表情のひとつひとつにさまざまな感慨が走る。90歳の彼の顔はとても綺麗だ。哲学的な映画だが、むつかしいことは言っていない。リンチの演技も素晴らしい。
タイトルやポスターからは想像出来ないほど、不器用なまでに生真面目な作品だ。90年代初頭フランスのHIV/エイズにかかわるアクティヴィスト組織ACT UP-Parisの活動をドキュメント・タッチで描いたもので、2時間23分という長い上映時間を使って、当時の運動の全容をじっくりと再現してみせる。クラブ系ダンス・ミュージックの用語として知られる「BPM」のもうひとつの意味、心拍数に着目した題名は意味深いが、日本だとあまり機能しないかも。アデル・エネルは相変わらず上手い。
すべてのカットが意味ありげで、実際に意味がある。ズームイン、ズームアウト、パン、スロー、そこでの俳優の表情と一挙手一投足。ランティモス監督の前作「ロブスター」よりドラマがシンプルな分、一つのカットに込められた意味の密度が際立つ。徹底的にリアリティを排除した画づくりと演出が緊張感を生み出す。極めつきはバリー・コーガンの顔! いるだけで何らかの意図を読み取らずにはいられない、相手の自滅を招く究極の思わせぶり。体の自由を奪われた子供たちの動きはエクソシスト的なそれを思い出させる。
後半はほぼクライマックスがずっと続くようなテンションの高さ。脚本も芝居も音楽もどんどん盛られていき、事件ものからオカルト、メロドラマとジャンルが詰め込まれ、オチの力が逆に弱まってしまう。鍵を握る屋敷が舞台のセット的で、長い時間の流れやそこに蓄積された念のようなものを描くには綺麗すぎて見えるのも、物語に入り込むのを難しくしているように思う。全体的に映像というより舞台向きの作り。キーパーソンとして神父が出てくるところに、キリスト教文化が根付いている韓国社会がうかがえる。
いつもの家、いつもの道、いつもの店。一人で起き、馴染みの人たちと会い、また一人で眠る。静かに、しかし平和に過ぎていくミニマムな一日を黙々と生きるスタントンのストイックな立ち居振る舞いから目が離せない。その日々の先に自らの死を意識する瞬間が訪れる、というのはある意味でとても幸せなことかもしれない。スタントンの晩年の勇姿とデイヴィッド・リンチの味わい深い演技を引き出し、初監督作とは思えない洗練された監督術を見せたジョン・キャロル・リンチの、同胞である俳優に向けた眼差しが優しい。
血の赤、集会やデモ行進で掲げられるスローガン、教室で若者たちが交わす激論。90年代のパリを舞台に描かれる、政府や企業に対して声を上げた若きエイズ活動家たちの闘いには、革命の歴史、政治の季節といったフランス映画の一つのエッセンスがしっかりと受け継がれている。ドキュメンタリータッチの討論シーンが大きなウェイトを占め、そこで飛び交うフランス語のやり取りがビートのように聞こえる見せ方も、「パリ20区、僕たちのクラス」に脚本と編集で関わっていたというカンピヨ監督の経歴を知ればうなずける。
後味の良い映画ではない。観ている間も決して心地いい瞬間はない。悪趣味映画といっていいかもしれない。二人の子供を持つファレルとキッドマンの医師夫婦の平和な家庭に現れた異能な訪問者が引き起こす残酷なホラーだ。しかし、まるで魔術にかけられたごとく、強烈な迫力でウィアードな世界へと追い込まれ、固唾を飲んで観入ってしまう。合理的な説明は最後まで一切ないが、この世に合理的に説明されるものなどないという作者の確固たる世界観には慄然とさせられる。
『LOST』のキム・ユンジン主演で、タイムトラベルを想像させる邦題だが、土地や古い家屋に憑依する霊魂を描いたオーソドックスなホラーだ。夫と息子を殺害した容疑で服役していたキムが25年ぶりに出所して旧家に戻る冒頭から洗練され語り口で、息子の霊が現れ一挙に恐怖が盛り上がる。良くできたホラーで、霊の撮り方が上手い。ベネズエラ映画「マザーハウス 恐怖の使者」のリメイクと知りDVDを探したが間に合わなかった。オリジナルを凌駕しているのは間違いないだろう。
先頃亡くなったハリー・ディーン・スタントンが、ほとんど自分自身のような九十歳の独居老人を演じている最後の主演映画である。判で押したような毎日の生活がユーモラスに描かれる。事件らしい事件は何も起きないが、彼の人生や人となりが浮かび上がる。脇役のデイヴィッド・リンチが面白い。酒場で戦友に会うシーンは「秋刀魚の味」の軍艦マーチのシーンを思い出す。そういえば笠智衆を思わせる佇まいだ。数ある出演作、特に晩年の作品が脳中に去来し不思議な感銘を受ける。
20数年前のフランスでエイズ感染者とその支援者たちがこのような活動に取り組んでいたことを全く知らなかったので衝撃を受けた。ACT UPの運動に集まっている若者たち 過激派、穏健派様々な意見が飛び交いながら一つの政治運動としてまとまっていく集会の描写がみずみずしい。両親が5月革命世代なのだろう。そして一組のゲイカップルのラブストーリーが始まる。過激なセックス描写をまじえながらも、この種の映画では初めて見るピュアで美しいラブシーンである。