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唯我独尊、天下御免で生きてきたヘイトフルな金持ちの老嬢が、皆から愛されて死ぬための一大計画に、勝ち気な女性新聞記者が巻き込まれる。プロデューサーにも名を連ねるシャーリー・マクレーンが自らの老いと向かい合う作品。よくある企画と言えばそうだが、ウィットの効いた脚本はかなり面白い。時々やや演出が俗っぽさに流れるきらいはあるが、ラストはやっぱり泣けてしまいました。ちなみにザ・キンクスは僕も大好きなバンドです。アマンダ・セイフリッドの表情の振れ幅がいい。
運命の転変に翻弄されるトランスジェンダーのヒロインを、トランスジェンダーのダニエラ・ヴェガが演じている。まさにスター誕生というべき素晴らしい熱演だと思う。冒頭をはじめ要所要所の絵作りはスタイリッシュだが、基本的にはじっくりと描かれた人間ドラマだ。音楽をマシュー(英国人なので「マチュー」ではない)・ハーバートが手掛けているのだが、プレス資料での扱いの薄さは残念。原題「ファンタスティック・ウーマン」より「ナチュラルウーマン」の方が政治的に正しい?
「もしもあらゆる人間を身長13㎝にダウンサイズする技術が発明されたとしたら?」。この荒唐無稽なアイデアを至ってマジメに追求することで一本の映画に仕上げてしまった作品。ダウンサイズによって革命的に解決される人類の諸問題と、人々の人生と生活のポジティヴな変化。だがこの映画はそこから一歩も二歩も先に進んでみせる。終わってみれば、これは「幸福とは何か?」をめぐるエコロジーと倫理学のレッスンなのだった。マット・デイモンを顎で使うホン・チャウがとても可愛い。
若年性関節リウマチと闘いながら人々に愛される絵を描き続けたカナダの民衆的な画家モード・ルイスの伝記映画。残念ながら「シェイプ・オブ・ウォーター」は予告篇しか観れてないのだが、(おそらく)同作と同様に、これはもうサリー・ホーキンスの驚異的なまでに完璧な役作りの魅力に尽きる。ああいう愛らしさってなかなか出せるものではない。負けじとイーサン・ホークも武骨だが優しい夫を好演。変に盛り上げないウォルシュ監督の地に足の着いた演出にも好感が持てる。これは秀作。
あらゆる場面で「リア充」を演出しなければ気がすまない昨今、訃報こそ最大の腕の見せどころだろう。自分の人生は果たして他人からどう見えていたのか。理想のイメージに基づいた実人生のリクリエイトはしかし人間の哀しい性ゆえにユーモラス。見方によってはイタい女である老婦人が、マクレーンの貫祿ある立ち居振る舞いによって痛快な存在になり得ている。セイフリッド演じる若い女性記者の、ゴミの散乱した車内のディテールで、彼女の今の性格や生活をさくっと見せているのが上手い。
ダニエラ・ヴェガの剛柔入り混じる佇まいから目が離せない。恋人と死別した後の彼女の孤独な闘いがドラマのメインテーマとなっていくが、生前の恋人との愛情深い関係がしっかり描けているからこそ、彼女を支える不屈の勇気を共有できる。劇中で流れるアレサ・フランクリンやヴェガ自身の歌う「オンブラ・マイ・フ」にも怒りや憎しみに勝る思いが溢れていて、何よりもラブストーリーであることが強く実感される。南米チリの鮮やかで艶っぽい映像美とマジックリアリズムの気配が眼福。
序盤こそ人間をミニチュア化するビジュアル的な楽しみもあるが(縮小直後の主人公の背景に映る、よくできているんだけど微妙に違和感を感じるドールハウスのような美術は秀逸)それがデフォルトになってしまってからは、あまりその設定が生かされていないように思う。片足のベトナム難民を演じて注目を浴びている女優ホン・チャウとデイモンの、身体性をクローズアップした官能描写はなかなかチャレンジング。いつの間にか還暦を過ぎていたヴァルツの枯れ具合にもびっくり。
観終わった後の読後感で映画「東京日和」を思い出す。中山美穂は美しくスクリーン映えするヒロインだったが、モデルとなった女性を荒木経惟の写真集で見たときの、目の覚めるような感覚は忘れられない。本作でホーキンスとホークの演じた夫婦は病と貧しさの陰に包まれ、仄暗い画作りには鬱々としたムードが漂う。彼らの慎ましやかな生涯に美を見出すほどには自分はロマンチストではないのだと思ったが、ラストに出てくる実在した二人のモノクロ映像から受けた印象は全く違ったのだ。
シャーリー・マクレーンの魅力を堪能できるウェルメイドなコメディだ。ただ、個性的でチャーミングに見える彼女が、皆に蛇蝎のごとく憎まれ、一人のシンパもいないという状況の説明が不十分だ。現役時代の辣腕ぶりを再現すればいいのだろうが、若い女優を使うわけにもいかないというジレンマはよく判る。脚本にひと工夫欲しいところだ。往年の天然ボケ的な彼女の魅力を知るものは想像力で補えばいいのかもしれないが。とまれ、アイディアに富んだ楽しい終活映画だ。
トランスジェンダー女優のダニエラ・ヴェガの不思議な魅力と存在感の映画だ。フェミニン的エロティシズムとは対極的な、ある種ハードボイルドで無骨な潔さが、偏見と差別と闘っている彼女の悲しみや怒りを的確に表現している。彼女と敵対する故人の家族の描き方などは画一的ではあるが、性的マイノリティへの無理解に対する怒りは社会派的とも言えそうなストレートな描写で共感を呼ぶ。男性目線と批判されそうだが、もう少しエロスの世界を垣間見たいような気もする。
ダウンサイズというと「ミクロの決死圏」や「親指トム」のような冒険譚やコメディを誰しも期待するだろうが、その期待は見事に裏切られる。しかし感動を伴う心地よい裏切りだ。ユートピアをめざした縮小社会にも貧困や格差はある。興を削ぐので詳述は避けるが、人類の未来を描く壮大な物語へと想像もしない展開を見せる。朴訥とした正義漢マット・デイモンはいつものはまり役だが、処罰として縮小されたヴェトナムの反体制運動家の女性を演じるホン・チャウの名演は印象深い。
芸術家の生涯を描いた伝記映画というよりは、ある特異な夫婦の人生のドラマだ。純粋な魂を持った女と粗野で頑迷な男……フェリーニの「道」を思い出す。幼児期のリウマチで不自由な体、一族の持て余し者の絵の好きな女、孤児育ちで人間嫌いの貧しい魚商人。雪の振り込む小さな小屋。生涯を振り返り幸せだったと女は述懐する。特異に見えるが、あらゆる夫婦に共通する夫婦の肖像とも言える。カナダ東部の雪景色は美しく、男が荷車に女を乗せて雪の中を走るシーンは忘れがたい。