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こんな顔ぶれでこんな内容の映画をやれるのがアメリカ映画の素晴らしいところだ。性同一性障害の主人公をエル・ファニングが、シングルマザーの母親をナオミ・ワッツが、レズビアンの祖母をスーザン・サランドンが演じている。この種の映画はどうしても「テーマに奉仕する=テーマを美化する作品」になってしまいがちだが、ディテールをしっかりと描き、丁寧な演技で見せることで、地に足の着いた堅実で誠実な仕上がりとなっている。しかし最近のファニングは作品選びが実に良い。
こういうタイプのアニメ作品を見慣れていないので、まったくの個人的な印象論になってしまうのだが、バンド・デシネにも同じようなことが言えると思うが、ヨーロッパ(とりわけ仏語圏)の場合、シリアスなドラマをシリアスにし過ぎないために、アニメというか非実写的な方法が活用されていると思えるところがある。この作品も同じストーリーを実写でやったら、ずいぶん重い映画になってしまうだろう。だが、それは中和ではない。デフォルメされた人物は生身では出せない痛みを放つ。
キッチュでグロテスクでキュートでコケティッシュ。よくある「人魚もの」のバリエーションかと思いきや、新人アグニェシュカ・スモチンスカ監督は舞台を80年代の共産主義政権下のポーランド、ワルシャワに設定することで、カルトムービー化することを運命づけられたかのようなヘンな映画を造り上げた。東欧映画独特の生真面目なユーモア感覚と、ララランディックなミュージカル演出、トンデモホラー的展開のアンバランスも面白い。でも最大の魅力は主演の二人の女の子ですよねこれは。
原題は「A Perfect Day」なのだが、この邦題、わかりやすくてよい。まさに「ロープ」をめぐる一日の物語。ベニシオ・デル・トロはもちろんハマリ役だが、ティム・ロビンスが実に良い。最高の老け方をしている。男たちにやたら突っかかるフランス人女優メラニー・ティエリーも好演。しかしこの設定でよく一本撮れると思ったよね。でもフェルナンド・レオン・デ・アラノア監督には勝算があったのだろう。非日常的なロケーションに目を奪われるが、基本は演技の絡みで見せる映画だと思う。
数年前に公開予定で取り上げたにもかかわらず、いつの間にか公開中止になっていて、記事だけ出ちゃったという個人的に苦い思い出のある一本。本国ではトランスジェンダーの描写をめぐるデリケートな批判が起こったり、いまや悪名高いワインスタインがらみだったりして、すっかり傷がついてしまった。でも若かりし頃のディカプリオみたいな雰囲気をまとったエル・ファニングの、ワイルドかつ繊細な身のこなしやスケボーを操る中性的な姿は、やはり惚れてしまうレベルの演技力だ。
不慮の事故で亡くなったとされる主人公の母親だが、本篇を観る限り、本当にそうなのか? と思わざるを得ない。これはもっと重いものを背負ってしまった子供の物語なのだろう。でなければ母親の死をわざわざあのような描き方にはしないはずだ。それでもお洒落で垢抜けた色づかいやデフォルメの表現は優しく、クレイの肌や服の生地の質感がフェティシズムを誘う。そして特筆すべきは照明! ストップモーションという実写の底力を見せつけるような光の作り方、当て方が素晴らしい。
良くも悪くもハンドメイド感の漂うキッチュさが魅力。ポーランド産ということで、東欧のアヴァンギャルドな伝統も感じられる。それにともなうディテールの雑さが吉と出るか否か。人魚の造型もかなりアバウトで、魚類なのか爬虫類なのか獣なのか描写が迷走状態だが、そのカオスゆえの中毒性もはらんでいる。美しくエロティックな少女の上半身に比べてグロテスクな魚の下半身と、初恋を捧げるバンドマンが多分に漏れずどうしようもないスカスカのクズ男なのが何とも切ない。
地に足の着いたクストリッツァといった趣き。過酷な現実を取り巻く皮肉の効いたドラマをダイナミックな語り口で撮り上げ、躍動する動物と大胆なロックの使い方がフィクションの強度を高める。活動家の一人をデル・トロが演じていることにより、まったく人格者には見えないし、きれいごとでは済まされない最前線での闘いが真実味を帯びてくる。「英雄たちによる愛と感動のヒューマンドラマ」という予告篇の文句がこれほど似合わない映画もない、というのは最大の褒め言葉。
原題は3 Generations、三世代である。レズビアンの祖母(S・サランドン)、シングルマザーの母親(ナオミ・ワッツ)、孫娘(エル・ファニング)は男性になりたいという強い意志を持っており、そのトランスジェンダーがテーマだ。異様な家族だが、それを興味本位で描くのではなく、また性的少数者を社会派的視点で描くのでもなく、ごく当たり前の人間の属性としてヒューマンで面白いドラマに仕立てたのは見事。三人の女優の競演は終始涙と笑いを誘う。完成度は極めて高い。
人形のコマ撮りで作られた作品だが、登場人物たちの微妙な感情や心理が見事に表現されているのには驚かされる。孤児院の悪ガキどもの弱者同士は助け合おうとする幼い連帯感が心を打つ。「操行ゼロ」「大人は判ってくれない」「わんぱく戦争」など子供たちを描いたフランス映画の伝統を感じさせるが、孤児院をよくある劣悪な矯正施設ではなく、福祉行政の行き届いた場所として描き、外部が必ずしも自由な世界ではないことを暗示した視点は現代社会に対する批判とも思える。
異形のもの、吸血鬼、美少女の姉妹、カニバリズム、映画の歴史を彩り、観客の心を捕らえてきた異端のテーマがつぎ込まれたシュールなファンタジーである。そしてミュージカルでもある。上半身が美少女で、下半身が巨大でリアルな魚であるヒロインの強烈にして異様なエロティシズムはなんとも言い難い。人魚が人間に恋した時からドラマは血なまぐさいホラーへと展開するが、画面に漂うのはポーランド映画ならではの暗いリリシズムだ。ポランスキーとわが大林宣彦の妹分に拍手!
コソボ内戦中のバルカン半島、井戸に放り込まれた死体を除去するためのロープを探す……アメリカ人ボランティアのベニシオ・デル・トロとティム・ロビンスに与えられた任務だ。使命感や悲壮感は皆無、女好きで自由でノンシャラン、肩肘張らない彼らの脱力感たっぷりの生き方が戦争の不条理とそれを支える官僚制に対する痛烈な批判になっている。ロープがあるのに首吊りに必要だから売れないという住民たち、全篇にただようバルカン風のユーモア、ユニークな反戦映画だ。