パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
せっかくキャメラが長い横移動をしても、特に驚きも興奮もない、単なる移動のための移動になっている。それに、優れた舞台人であるブラナーには、列車内の奥行きをもっと活用してほしかった。とはいえ、豊かな細部を持ちながらルメット版より上映時間が短いというスピーディな運びと、画面の風とおしをよくしてダイナミックにしようとするさまざまな工夫には好感が持てる。話の起伏を際立たせた脚色も悪くないが、ハバード夫人はもっと強烈に印象的な人物として描かれるべきなのでは。
「女神の見えざる手」でも素晴らしかったJ・チャステインが、まったく違う役柄を演じた今回も素晴らしい。圧倒的な支配におびえながらも善き人間であり続けようとする女性を、初めて見る表情と台詞回しの彼女が見事に体現する。常軌を逸した事態が文字どおり女性の視点で描かれ、いくらでも扇情的にできる題材を、丁寧かつ上品に扱っているのがとてもよい。夫の変化に説得力があるのもさることながら、教養と礼節ある紳士だったドイツ人学者が、権力を手にした途端変貌する恐ろしさ。
こんな彼は見たことがないという演技をしているN・ケイジはもちろん見ものではあるけれど、映画を全部背負わされているこのアクの強い演技をどう評価するかで作品評価は決まりそう。出国するまでの部分は、主人公が愛すべき人物だといちおうわかるし、つまらないとまでは言わないが、アメリカだけが文明だと思っているかのようだったこの男が、図らずもパキスタンの文化に夢中になっていくくだりの面白さを見ると、もっと早くこの展開に持ちこんでほしかったと思わずにはいられない。
随分のどかな映画だなあと観ていたら、ドバイのオークションの場面が終わったあたりで、ここから監督が交替したのかと思うくらい急に面白くなる。昔のぼんくらボンドガールみたいだったインド美女も突如知的魅力を増し、長い手足を活かしたアクションで魅了。A・リーの身体能力の高さにも瞠目させられるが、何よりも、工夫を凝らしたカンフーアクションを、ジャッキーが久々にたっぷり見せてくれるのがうれしい。それにしても、キャスト全員にこにこで踊るシーンの何という幸福感!
列車内の物語という密室の芝居のやりとりが重要なので、シドニー・ルメット演出の前作と同じく、芝居好きの監督が求められて、ケネス・ブラナーはぴったり。出だしの数ショットを見ただけでオリエント急行に乗り込むのが期待できる流麗なカメラワークと演出だ。主役としても、これぞ探偵ポワロという立派な髭をたくわえて、ブラナーは堂々たる風格。脇役もミシェル・ファイファー、ジョニー・デップ、ウィレム・デフォーと揃い、贅沢な感じ。雪山を背景にした駅舎のセットもみごと。
邦題は分かり易いが、内容は複雑。ワルシャワの動物園主の夫人、アントニーナをジェシカ・チャステインが熱演して、冒頭、母象の前で小象の鼻がねじれたのを直す演技にもうびっくり。夫のヤンと共に動物園内に戦時下のユダヤ人をかくまうわけだが、ナチス軍隊の指揮官がヒトラーのお気に入りの動物学者だということが、物語を奇怪なものにする。彼は美術品蒐集家ゲーリングを真似て、珍奇な動物をベルリンへ運ぼうとし、すでに絶滅した動物の復活をはかり、夫婦の間に割り込んでくる。
ビンラディンをつかまえようとした「愛国者」ゲイリー・フォークナーの実話である。テレビのワイドショーで見ているぶんには面白いかもしれないけれど、雑な台本の劇映画ではニコラス・ケイジの怪演ぶりがセリフを喚きたてるばかりで、カラ回り。主人公の幻想による神、ラッセル・ブランドをひんぱんに登場させる演出も、軽すぎる。仕事仲間やお尻の上に刺青のある太った恋人のウェンディ・マクレンドン=コーヴィが、揃って人柄がよく、変人のヒローを愛しているのはおかしい。
ジャッキー・チェンを取り巻く人たちがそれぞれ違う仕掛けで、娯楽大作を連打することには敬意を表したい。チェンは考古学者でカンフーの達人。冒頭から古代インドの象の群れが出現する戦争スペクタクル。その時代に隠された財宝を求める構成だが、氷河地帯のアクションやドバイの高級車がぶつかり合うカーアクションが派手で、豪華な感じを与える。最後の舞台はインドとなって、エキゾチックで、カラフルな舞踊を一同踊りまくり、「インディ・ジョ―ンズ」の中国・インド風が楽しい。
どうしてもS・ルメット版と比べてしまうわけだが、とりあえず同版以上に流麗かつ緻密な撮影には魅せられた。特に俯瞰で固定したままワンカットで捉えたポワロの現場検証シーンなどは、なかなかの新鮮さ。ただし、K・ブラナーが演じるポワロは、体型もスマートで結構なアクションまで繰り出してやたらと俊敏。今風のキャラ設定だが、これまでのポワロのイメージに囚われた者にはどうしても違和感が。乗客の顔触れもたしかに豪華だが、スターとしての輝度はやはり旧版のほうが高い。
自分たちの危険を顧みずにユダヤ人を救う主人公夫妻の行動には、ストレートに感動。ただし、ゲットーからユダヤ人を連れ出すシーンの数々はどれも緊迫感が足らず、夫婦愛と親子愛に迫った部分やワルシャワ蜂起の描写もこれといって密度が高いわけではなく、なんだか散漫な仕上がりに。そんななかでもズドンときたのが、ゲットーの門前で記念撮影するカップルの姿。こうした下劣な連中がナチスのような存在をのさばらせたわけでもあり、そのあたりを無視しないのはナイスだと思う。
日本も海外もキー・ビジュアルは、ドン・キホーテよろしくロバに跨った主人公の画。人は悪くないものの頭は悪いキャラや言動、病に倒れて落ち着く展開も含め、その現代版ではあるが、ラリー・チャールズ監督ならではの下品で過激なギャグが無くて寂しい限り。それを補うのが、ニコラス・ケイジのはっちゃけた演技である。ブヨついた体を揺らし、日本刀を振り回し、ラリってわめき散らすだけでなく、マスをかく姿まで喜々として演じており、そんな彼を眺めているだけで満足できる。
トレジャー・ハンティングの話ゆえに〝アジアの鷹〟シリーズの一本として撮られているのかと思っていたが、なにかと反目しあう中国とインドの友好への願いが込められた作品でありました。というわけで全体的にピースフルな空気が漂っており、オチの付け方はその真骨頂といった感じ。ジャッキーならではのキレッキレのボリウッド・ダンスもさることながら、久々となる木人樁を使ったトレーニング・シーンが拝めるのがなんとも嬉しい。ディシャ・パタニの美しさに溜息鼻息トルネード。