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当時の米国の中南米介入政策のはちゃめちゃさは、本で知ってはいたものの、こうやって見せられるとあらためて啞然とするのだが、さてこの映画、衣裳や音楽だけでなく画調も70年代・80年代の雰囲気をよく出していて、画郭もいま流行のスコープではなくアメリカンビスタ。潜入取材みたいなキャメラワークも面白い。主人公はおよそワルという感じではなくて、映画は冒険物の楽しさにあふれる。それにしても、抜群の魅力を発揮するトムは、画調のおかげもあるとしても何という若々しさか。
ノーマークのところから急にものすごい映画が出てきてほんとうに驚いている。「よくできた映画」などでは全然ない、ひどくいびつな映画なのだが、ひとつひとつのショットに、およびその連鎖に興奮させられる。これは明らかに、ものすごくたくさんの映画を観てきた人が撮った映画(引用だらけという意味ではない)で、ずっと監督を続ける人かどうかはわからないが、できれば次回作も観てみたい。「内なるロキシーを抱えた女性たちに捧ぐ」的な言葉が、エンドロールに出てくるのも好き。
「ソウルステーション・パンデミック」に対しては、ぶっちゃけ「ストーリー以外見るべきものがない」とさえ思ったが、こちらは背景美術に変化があって、何よりも人物の表情や動作が丁寧に描写されているため、作品世界に奥行きが感じられて見ごたえがあり、深いテーマがずっしりと響く。けれども、観ているあいだずっと実写映画版を夢想してしまい、なぜかと思ったらもともと実写前提の企画だったそうで。監督が実写映画でも成功を収めたいま、そちらでのリメイクも観てみたくなる。
現政権になってまた事情は変わってるかもしれないが、米国の人種間関係は、単純な対立図式だけでは語れないものになっている。リベラルを自称する白人エリートに対し、黒人が感じている名状しがたい不快感を、この映画は巧みにすくい取っていて、しかもユーモアが全体にまぶされているのがとてもいい。明らかに異常というわけではないけれど微妙に違和感があるというのを積み上げていく演出が面白く、これまた監督の次回作が気になる。キャスト全員、作品の狙いをよく理解した好演。
CIAスキャンダルで、バリー・シールという実在のパイロットを、得意の操縦技術を活かしてトム・クルーズが熱演。レーガン大統領から映画でもおなじみの麻薬王パブロ・エスコバルまで登場して、アメリカ政府の麻薬戦争と対共産主義戦争を素材にしているのだが、演出は喜劇タッチなので、この話はウソだろうと思いながら、見てしまう。麻薬と武器の運び屋として稼いだ札束の山など、リアルというよりギャグだ。飛行機の好きな人には機体の性能や低空飛行の魅力がいっぱいで面白い。
アメリカン・ニューシネマにオマ―ジュを捧げて作られているので、映像、音楽ともに懐かしいB級感覚。が、冒頭の黒いバッグの印象的な撮り方を見れば、金は誰が持っているか分かるので、主人公の男女が広いアメリカを逃げ回る話かと思いきや、男の故郷の町に定住してしまう。男の兄夫婦が魅力的で、落ち着くのだ。エミール・ハーシュとゾーイ・クラヴィッツの心の動きは演技によく出ていて、観客もいつのまにか、そこで平和に暮らせればと思う。恐るべきクライマックスは騙された気分に。
ヨン・サンホ作品はライブとアニメを問わず、人生のどん底を見つめることで成り立っている。安易なヒューマニズムがないだけに、娯楽のスタイルで全篇、恐怖とサスペンスがみなぎる。善人の風貌をしながら、我知らず悪に加担する牧師と、彼を取り巻く詐欺師たち、悪魔じみた生活を送りつつ、真実を求める男の切ない表情などを微妙に描き分けて、タブーに敢然と挑戦。ダムに沈む村を舞台に選び、庶民が宗教に救いを求める構図を絵にする才能を見ると、この監督には大人のアニメが似合う。
写真家であるアフリカ系アメリカ人の恋人を、ニューヨークで共に暮らす白人女性が郊外の実家へ連れていき、両親に紹介するという設定はオバマ以降のアメリカでもやはり心配なものなのだ。女性は両親が知的で大丈夫だと言い、実際、暖かく迎えられるが、使用人はすべて黒人で、何かおかしい。黒人どうしの視線が無気味。そのへんな感じがジワジワと伝わってくる演出がいい。黒人と白人が歴史的に持っている差別的感情も、黒人監督だからこそ、デリケートに、遠慮なく、表現できたのだ。
アメリカ政府やCIAがよその国でさんざんやらかしてきた、国家転覆やその資金調達。バリー・シールの人となりを描いてはいるが、まさに原題の「American Made」としか言いようがない同国の専売特許ともいえる悪しきシステムをわかりやすく伝えようとしている。トム・クルーズは大胆不敵な主人公を怪演しており、それに呼応するかのようにダグ・リーマンもどこか「ウルフ・オブ・ウォールストリート」的タッチを意識&挑戦しているのだが、そちらはうまくいっていると言えず。
悪事に手を染めたり、暴力に頼ると、待ち受けるのは破滅。そんな教訓を乾いたタッチで伝えたいようだが、物語の起伏となる濃いエピソードがあるわけでもなく、そうしたスイッチとなるキャラがこれといっているわけでもなく。それでいて、「タクシードライバー」を意識しまくったドンパチで強制終了させるので、結局はバイオレンス映画を撮りたかっただけかと突っ込みたくなる。でも、B級アクションと捉えれば楽しめる。E・ハーシュが痩せたジャック・ブラックに見えてしかたなかった。
人間を盲目状態に陥れてしまう信仰、偏見、憤怒、怨嗟、そこにつけ込んでいく者たちの存在。どこまでも気が滅入る話なのだが、それを尋常ならざる力みなぎるタッチで描き切るものだから、こちらも見入ってしまう。人々から疎まれ、蔑まれ、ひたすら毒づく主人公を演じたヤン・イクチュンは、声だけとはいえ「息もできない」の猛っていた彼まんまで熱くなる。すでに「新感染~」でヤラれたわけだが、続いて実写でもこうしたドラマ寄りの作品を撮られたらと思うと震えるしかない。
あらゆるシーンで自分たちの居場所や威厳を失いつつある白人が感じている焦燥や不安。それでも手綱を握るのは自分たちだという、彼ら(の一部)のしぶとい邪意。多様性が叫ばれるようになって見え隠れする人種間のアレコレを巧みに盛り込んでいる。それでいて妙に説教臭くするわけでもなく、しっかり怖がらせつつも絶妙な匙加減で笑わせてくれる、実に優れたモダン・ホラーに仕上がっている。テーマのわりに主演俳優が英国人なのが問題になったようだが、それを含めて今っぽい作品だ。