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これは面白い! オープニングからラストまで完璧だ。ゾンビ物の変奏だが、デザイン性や見せ方がスマートなので、グロ耐性低めの人もぜひ挑戦を。シンプルな筋立てを、登場人物の魅力(弱者を守って自身の思いがけない英雄性に目覚める人たちがほんとうにかっこいい!)と、列車や駅の構造を活かした演出(車両の長さ、連結部やトイレなどの空間の活用)でダイナミックに見せる。列車内部はほぼセット撮影だというのに、あれだけのスピード感を出してしまう知恵と技術にも恐れ入る。
ジャッキー映画の系譜のひとつである、アメリカ人とのバディ・ムービー。ロシアから香港を目指す珍道中は目を奪う絶景や面白い風物に彩られ、話もひねりがあってだんだん盛り上がる。かっこいい女優さんがたくさん登場するのもうれしい。冒頭の家屋倒壊シーンをはじめとして、ある種の「機械仕掛け」のなかで行なわれるアクションがいくつかあり、「レイルロード・タイガー」の機関車もそうだったが、B・キートン的なものへのジャッキーの接近は、もはや隠すものなき堂々たる境地に。
わざとかもしれないけどそれにしても、重要な瞬間を演出するということが一個もできてなくて吃驚する。いかにもノーランらしいことに、劇的高揚は演出ではなく脚本レベルで実現されるのだが、そのために採用されたのは、長さの異なる三つの時間を同一の時間に見せかけるトリック。でもそのせいで、兵士たちの永遠とも思われただろう時間が他の二つの時間に合わせて極端に圧縮されてしまい、彼らの絶望は軽量化される。映画を支えているのは、偉業とさえ言えるハンス・ジマーの音楽。
エレベータ内で5人が会話するとき、話者とそれに反応する人々の表情をひとりずつ切り取って見せていることがこの映画では大半だが、このやり方はとてもまずい。というのは、これが元々舞台劇であるため、常に5人全員が観客の目にさらされているという前提で会話が書かれているからだ。エレベータからの脱出を試みるサスペンスという側面では、さすがに舞台に対する映画の優位性が発揮されるが、その他の面においては、舞台の映画化という(見かけ以上の)難問への戦略がなさすぎる。
車で轢き殺したはずの動物が突如立ち上がる発端がまず無気味。生理的にイヤな気分になりながらもコワいものが見たい人には体調を整えてお薦め。主要舞台は列車の内部で、私自身は同じ鉄道に乗った韓国旅行の楽しい記憶が吹っ飛んでしまった。俗に白目をむくというけれども、ゾンビに嚙みつかれて感染した男女が二度と見たくない顔で、大挙して押し寄せることや、少女と妊婦が逃げ回る場面の巧妙な演出は、悪趣味の極致。続けて公開されるヨン・サンホ作品がいいので、今回の点は辛い。
ジャッキー・チェンが新たにジョニー・ノックスヴィルと組んだバディ(相棒)ムービーは快調。二人のアクションがいいのは当然だが、ロシアン・マフィアの女、イヴ・トーレスのスタイルと動きにも注目。ジャッキーは「レイルロード・タイガー」に続き、今回も香港、マカオに始まり、中国の泥かけ祭りや内モンゴルの相撲など、観光的場面をとり入れて中国への愛を表明しているのだが、長年付き合った観客としては、近頃のナショナリズム的映画を越えた、ひたすらなアクションが見たい。
予算と時間をかけたアメリカ映画だが、第2次大戦初期、まだ米軍は登場せず、英仏連合軍がダンケルクから撤退する実話。追い詰める側のドイツ軍の兵士が画面に姿を見せないのがかえって不気味だ。なんとか生き抜き、故国へ帰還しようとなりふり構わずもがく兵士たちが海中に放り出される姿を近頃はやりのコンピュータ撮影を極力避けて制作しているので、実戦に立ちあっているかのごとき息苦しさを感じる。兵士の群れを救う民間船団も実際にダンケルクにロケしていて、頼もしく映る。
久米宏のニュース・ステーションで、9・11の同時中継の映像を見たときはショックだった。だから、ドン・デリーロのアメリカの崩壊を思わせる小説『堕ちてゆく男』などが出るとすぐ読むのだが、この映画は事件のさい、たまたまエレベーターに乗り合わせた男女の不条理劇。もとが舞台劇の映画なので、ニューヨーカーらしいセリフのやりとり、人種や貧富の格差も、キメこまかく仕組まれていて、小説とは別の緊迫感がある。億万長者役のチャーリー・シーンをはじめ、俳優たちが熱演。
「キートンの大列車追跡」やら「カナディアン・エクスプレス」を引き合いに出すまでもなく、映画×列車の相性は抜群で傑作も多い。というわけで、ゾンビ映画×列車の本作も悪いわけがない。トイレ、網棚、トンネルといった車内や路線の設備を巧みに活かしたゾンビとの攻防もさることながら、登場するのが高速鉄道車両だけではない二段構えの展開にも燃える。しかも、終盤は「北国の帝王」的見せ場も用意されていてたまらない。ゾンビ映画にしては泣きムード全開なあたりは、実に韓国映画的。
大作を撮ることはなくなったが、高アベレージの作品を放ち続けているレニー・ハーリン。今回も職人監督としての腕をしっかりと振るい、ジャッキーならではの〝バディもの〟に仕上げている。ジャッキー自身も調度品や家具を使ったファイトを繰り出しまくるし、ジョニー・ノックスヴィルも口八丁手八丁なイメージを活かし切って彼と絶妙な掛け合いを見せてくれる。107分という尺の体感が短くなるわけでも長くなるわけでもないが、ディン・シェンとのコンビ作群よりは楽しめる。
「バリー・リンドン」的構図で映し出されるダイナモ作戦といった感じで、戦地の〝高さ・幅・奥行き〟という空間に関してはいやというほど体感できた。だが、浜辺=1週間、海=1日、空=1時間という3つの時間軸を立てた構成はうまく機能しているとは言えず、時間との戦いという切迫感はまったく体感できず。時計の秒針をリズムにした音楽、はっきりと姿を見せないドイツ兵などはスリルを盛り上げていたが……。この御時世に、こうした実景重視の大作が観られたのは嬉しいけれど。
いまだ消えぬどころか拡大するテロの脅威、それにもかかわらず人種や格差をめぐって進む一方となっている分断化。そんな世界の現状にビンタしようとしているのが痛いほどわかるシチュエーション、テーマ、ドラマ、キャラクター群なのだが、演出やノリが妙にパニック映画寄りになってしまっている箇所が多くて、うっかり観ているコッチ側もそうしたモードになってバツが悪くなってくる。ジーナ・ガーションとジャクリーン・ビセットの変わらぬ美しさを拝めたのは、嬉しい限り。