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ネタバレしてはならぬと厳命されたわけではないが、いろんな理由から非常にレヴューが書きづらい映画。「エイリアン」的な「宇宙密室パニックホラー映画」だという程度の事前知識だけ持って観るのがいちばんいいかもしれない。宇宙飛行士がみなすぐれた科学者であり、知的で勇敢な人たちだとわかる、地味な部分の描写が美点のひとつ。宇宙ステーション内部の構造と広さを観客に体感させる工夫があったら、あるいは、各人物の個性をもっと生かしていたら、さらに面白くなったのでは。
認めざるをえないのだが、こちらの「厨二病」的な部分に働きかけてくるようなところがあって、もし小中学生のころにこの映画を観ていたら、結構ハマっていたかもしれない。夏休み映画には最適かと。一方、10代後半の少年少女が持つ痛々しさがちゃんと描かれているのが意外な魅力で、アクション映画というよりむしろ青春映画として楽しんだ。だからこれまた認めざるをえないのだが、敵とのバトルシーンがようやく始まった途端、いささか興味を失ったのも事実(やがて回復したけれど)。
本物のビニー・パジェンサの姿や表情を見たあとではマイルズ・テラーはずいぶん優等生に見えてしまうけれど、主人公の「頑固さ」がきちんと描かれているので、彼の核心がとらえられている感があり、映画にびしっと筋がとおる。その場で聞こえているはずの音を消去して単調な音響をかぶせる、または無音にするという演出の多用が効果的。事故のあとビニーがトレーニングを再開するまでがやや長く感じるのが難だが、最後の試合シーンの見せ方は相当素晴らしく、涙なしでは見られない。
序盤はひたすらまぜっかえしが続き(行動するたびろくなことにならないおじいちゃんの役が、アンドレ・デュソリエ!)、人によっては我慢ならなくなるかもだけど、暴走が始まってからはがぜん面白くなる。状況的には「スピード」や「アンストッパブル」と同じで、実際、スピード感やスリルの演出はそこそこ巧い。バカ映画にくくられる作品ばかりを撮っているから軽視されがちだが、前作でもアイディアを次々展開する手腕に感心させられたし、もしかしたらすごい監督なのかもしれない?
「ゼロ・グラビティ」以後、無重力状態の撮影は進歩が著しくリアルそのもの。フライト・エンジニアの役を熱演している真田広之にどんなトレーニングをしたのか聞いてみたいくらいだ。地球外生命体も小さな細胞から恐るべき害敵に成長するプロセスが微妙に仕上がっていて怖い。人類の科学的探究心がそいつを呼び寄せてしまったのだという教訓劇でもあるのだが、見た後の破滅的気分はたまらない。だからこそ映像技術も含め、SFの新趣向を見てみたいという好奇心は満足させてくれる。
日本の特撮シリーズがもとになっていると聞くと、これだけの予算を日本のスタッフに渡して制作したら、もっと面白くなっただろうと思った。アメリカの小さな町で屈折した生活を送る若い男女が変身して超能力を獲得し、自分たちの身の周りの者を救うという単純な物語なので、映像にどれだけの仕掛けと見せ場があるかが勝負。変身してしまえば、善人側のキャラクターは同じようなものなので、世界の破壊をたくらむ悪の戦士リタ(エリザベス・バンクス演)ひとりの激しさにくわれてしまう。
「セッション」で過酷な訓練を受けるジャズドラマーを演じたマイルズ・テラーが一転、交通事故からカムバックするボクサーをひたむきに演じる。前作のJ・K・シモンズに代わり、アーロン・エッカートのトレーナーも深味があり、両者にからむビニーの父親キアラン・ハインズがシブい。マーティン・スコセッシ総指揮のもと、イタリア系アメリカ人の家庭が陽気な雰囲気で出てくるのも面白いが、ドキュメントとしては医療器具を使っての治療とボクシング界のあけすけな損得の描写がいい。
高速道路の車の運転に関して、考えつくかぎりのイヤなことを全篇にちりばめたブラック・コメディ。車の各種機能が進歩した現在、あり得ないことではないので、キートンの現代版だと思いながらも、心から笑えず、肩がこってしまった。CGに頼らず、よくここまで撮影したものだとスラップスティック精神に脱帽したところも多い。フランスの名作を支えたアンドレ・デュソリエがジョゼ・ガルシアを相手に老骨に鞭打っている姿に感激、「世界の果てまでヒャッハー!」より高点にする。
「リバイアサン」や「ヴァイラス」などに代表される、「エイリアン」フォロアー。いまやヒューマントラストシネマ渋谷でかかるか、DVDスルーで入ってくるかみたいな存在になったジャンルが、こうしたメジャー・クラスで製作されることがなんとも嬉しい。〝源流〟の近作2本「プロメテウス」「エイリアン:コヴェナント」が妙に高尚なノリになるなか(それはそれで良いが)、クリーチャーも人間も生存本能にまかせるままに激突するストロング・スタイルな展開にしているのもイイ感じ。
アジア系、ヒスパニック系もメンバーに配したことで画期的だったテレビシリーズ版だが、今回はさらに貧困、自閉スペクトラム、セクシャルマイノリティなども投入しているのが当世風。未知のパワーに対峙しながらも彼らが悶々とするドラマ部分は「クロニクル」っぽくて意外と引き込まれてしまう。実際にそっちに注力しすぎているきらいがあり、それゆえに変身してバトルになだれ込むあたりが急展開すぎてノレなかったのが残念。喜々として悪役を演じているエリザベス・バンクスも◎。
試合シーンもそれほどエキサイティングできるように撮っていないし、対戦相手も憎々しく描いてもいないし、彼らと怨恨のドラマがあるわけでもなし。エンタメ作ではなく、リングの上でしか生きられない男がリングの外に放り出されて己と闘う物語なわけだから、それもそのはずである。そうした静かで熱くて立派な作品なのだが、脊椎固定装置を頭蓋にボルト留めしたマイルズ・テラーがあちこちぶつけながら筋トレする姿に、切実さよりも滑稽さを感じたまま終了。そんな自分を反省した。
快作「ヒャッハー!」シリーズの監督コンビの片方ニコラ・ブナムが撮っており、設定も個人的に好物である「ホリデーロード4000キロ」的で期待大。だったのだが、繰り出されるギャグは過激さ皆無でベタベタ全開、登場するキャラクターも大人しい連中ばかりで凡庸なコメディとしか感じられず。だが、本作のおかげで「ヒャッハー!」監督のもう片方フィリップ・ラショーが非凡であることが判明した。カー・スタントの数々は、地味ながらもけっこう凄いことをやっていてこっそり燃えた。