パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
〝シャマランが復活した〟とは巷間によく聞く話だが、過大評価ではないか。「エアベンダー」「アフター・アース」だのといった駄作の山を築いた頃よりはだいぶ回復したが、前作「ヴィジット」より一段と普通のお化け屋敷になった。解離性同一性障害の犯人によるニューロティックスリラーだが、監禁の恐怖描写という点で「ドント・ブリーズ」の謙虚な細部演出を見た後では、俳優の百面相芝居に依存し過ぎているように思える。緊張感は持続しないものの、普通に楽しくは見られる。
多忙なセレブのための衣裳・宝飾品の買い出し代行業という珍妙な主人公像に加え、降霊術やら殺人事件やら、取っ散らかっていく。カンヌ監督賞受賞作ながら、監督の出身母体「カイエ」は星2つで済ませた。アサイヤスはどうやら〝呪われた作家〟の系譜に連なろうとしている。彼の近作をどう評価するかは、現代映画の大きな問題である。否定派の論調は概ね予想がつくが、ここは一つ、謎めいていて衒学的なこのイヤらしいサイコスリラーを、映画の一未来として大肯定しておこう。
少女期に「エル・スール」の主人公を演じた女性監督とケン・ローチ諸作の脚本家。夫婦共作の反グローバリズムの良心作で、応援したくなる。しかし、一本のオリーブの樹に象徴的意味を与え過ぎており、主人公のスペイン人少女⇅ドイツの欺瞞的な大企業というきれいな対立構図が、かえって作品をグローバルなストーリーテリングに押しこむ。主人公=作者側の真情は理解できるが、彼らが映画に対して行っていることは、企業がオリーブの樹に行っていることの一部をなしているのだ。
ジュールとジム、ジンジャーとフレッド、ピョンテとヨンジャ――異性同士にせよ同性にせよ二つの名前を連結させるだけで、映画とは楽天的に活気づいてしまうものだ(今年のアカデミー授賞式でのボニー&クライドはズッコケだったが……)。絵コンテ作家の夫ハロルドと映画リサーチ室の妻リリアンの二人組が映画界最高のスーパーカップルだったことを解明した裏面史である。「鳥」のガソリンスタンド場面の絵コンテに胸が高鳴らぬ映画ファンはいまい。無名の職能者(アルチザン)たちへの讃歌でもある。
「どうだい、若旦那の新作は?」「二四重人格の怪人が出てくるよ」「怖いんかい」「なんかお喋りばっかしてて」「お、対話劇ってヤツ?」「ていうか、静かなムードで押して、最後にドンと盛り上げる作戦」「じゃ、ゃいつものケツでビックリドッキリは健在だね」「いやもう、サイコサスペンスだと思ってたらモ○○○ーものに化けて驚いた」「相変わらずだねえ(ニヤニヤ)」「どうも脚本のデッサンが狂いっぱなしって感じで」「スプリットしてるのは監督本人じゃねえの」「しっ、それはナイショ」
冒頭に怪異現象の趣向があり、おや、この監督が怪談とは珍しいと身を乗り出す。携帯を経由した謎のメッセージのやり取りなどゾクゾクさせられる。だけど見ていくうちに、ホラーがただの道具立てとなって。生者と死者、自己と他者、その間で分裂し混乱する若い女性の精神状態、どうもそれが狙いのようで。ちょっとポランスキーの「反撥」を思い出すんだけど、あれほど親切な作りにはなっていない。結果、考え過ぎて空転したようなモヤモヤ感が。場面場面の演出は凄く面白かったけど。
いやはや乙女の一徹、岩をも通すってヤツで。嘘をついても、善人たちを巻き込んでも、正しい目的のために突っ走れば、結果オーライとなるわけで。そこが面白くもあり、ちと(作り手にとって)都合のいい展開だなとも思う。ただ、儲けに走った父親世代、そのツケを廻された子ども世代、その反抗。そこはわが日本も同様な状況なので、実感が伝わる。娘が好きだった祖父、その象徴のオリーブの大樹。それが大企業の超高層ビルのロビーに飾られた無残。そこにイヤな今の空気が匂って――。
日本では監督が絵コンテを描くんだけど、アメリカではそれ専門の人がいて。しかも演出面でけっこう重きをなしているというのが興味深く。ヒッチコックのアレとアレもそうだったんだっていう驚きもあり。リサーチャーの仕事とともに、もう少しこの二人の映画制作現場での作業とか功績を見たかった。ハリウッドの変遷、それによる仕事の変化とか感慨なんていうのもね。題名通り夫婦愛が主眼になってるけど、そこ表じゃなく裏に廻して。なんか勿体ない。リリアンさんのキャラは魅力だけど。
少女3人が何者かに拉致監禁される。犯人は多重人格者で、次々と人格を変えて彼女たちを脅す。そこに、まったく違う場所で行われるこの男と担当医の診察シーンと、一人の少女の回想シーンが絡む。それがどう物語に関係していくのかと思っていると、意外性に富みつつシンプルなシャマランらしい展開に。ミスリードされたいこちらの期待を最後まで裏切らない。一番の見どころは、スキンヘッドで24の人格を演じ分けるJ・マカヴォイ。狂気と可笑しみと悲劇性を湛えて淡々と魅了する。
セレブの私生活に近いところで仕事をする若い娘の心の揺らぎを、スピリチュアルな視点を交えてサスペンスフルに描く。危ういほどに美しいクリステン・スチュワートの魅力を、監督アサイヤスがとことん追求する。中盤、彼女が禁じられた衣裳をこっそり試着して欲望を解放するシーンは、きわどいフェティシズムに溢れながらも、被写体への絶妙な距離感が保たれていて上品なエロスを生んでいる。女優に近づく監督の匙加減、カメラに自分をさらす女優の度胸が洗練されていてまさに映画。
「カルラの歌」(96)以降のケン・ローチ作品を手掛けている脚本家ポール・ラヴァティと、妻であるスペイン人監督イシアル・ボジャインが組んだヒューマン・ドラマ。かつて売りに出された祖父のオリーブの樹を取り戻そうとする孫娘の奮闘を描く。平和のシンボル、オリーブが、行き過ぎた商業主義への対になるモチーフとして描かれる。ヒロインの好演で、家族のルーツを思う二十歳の女の子の優しさと情熱がまっすぐに心を打つ。ヨーロッパを横断するロードムービーの味わいも楽しい。
絵コンテ作家と映画リサーチャー。ハリウッド黄金期を支えてきたおしどり夫婦の人生をひもとく。ハリウッドの映画制作について、初めて知ることがたくさんあった。あの名作のあの名シーン。監督の功績と思われていたことが、実は絵コンテ作家の仕事なくして生まれなかったという事実に驚く。こうした裏方の才能が業界を頑丈に支えていたのかと思うと、映画の奥深さを改めて感じて胸が熱くなる。また、妻、母にして働く才女リリアンの生き様も、ハリウッドの行間まで映し出し興味深い。