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題材に対する監督の思い入れ、登場するモチーフの共通性など、スコセッシの「沈黙」と比較したくなるかもな映画だが、もちろん全体の感触は全然違う。歴史マニア(わたしのことです)にとっては興味深いところも多いけれど、大胆なフラッシュフォワードも次第に単調になり、結局「偉人伝映画」の退屈なパターンに収まってしまう。冒頭の戦場シークエンスの残酷描写が突出しているわりに、以後の語りに影響を及ぼしているわけでもなく、映画全体の描写の強さにつながらないのも苦しい。
オープンセットを含めた美術、衣裳の見事さにまず目を奪われる。戦時下を舞台にしたドラマには珍しく、色彩設計もゴージャス。そして、ゼメキスならこのくらい朝飯前だろうとは思うけど、フレーム内の人物や物の配置、キャメラのアングルや動きなど、各シーンの意図や象徴的意味を的確に伝える演出はやはり圧巻。あの砂嵐のなかの場面を見ると、こういうことのためならいくらでもVFXを使ってくださいというキモチになる。コティヤールの美しさはもちろん、ブラピも近年最高の美貌。
謎めかされている部分はあるが、プロットはとてもシンプル。それをカット割りと間合いだけでこれだけ面白く見せる演出はなかなかのもの。ゾンビ襲来立てこもり物のパターン(ゾンビ映画の影響の広範さたるや!)で、この場合のゾンビはネオナチ集団だけど、その設定自体に特に重要性はなく、犯罪組織に置き換えても違和感なさそう。P・スチュワートの右腕的な役柄のメイコン・ブレアが味わい深い。主演男女の並びの見栄えもよろしく、アントン・イェルチンの死がいよいよ惜しまれる。
レシーバーから鋭い音が聞こえた途端ヘリコプターのパイロットが死ぬという、昔の007映画のワンシーンが軽いトラウマになっている身としては、この物語の発端がリアルに怖い。アクションの編集は疑問だが、こけおどし的演出にあまり頼ってないのは好感持てる。画面的には、昼間に活動するゾンビの大群から逃げつつ、スピルバーグの「宇宙戦争」を(低予算で)やっている感じ。ラストのまとめ方を観るといよいよそう思われる。クライマックスの悪夢的イメージはなかなかの魅力。
南北戦争時代のアメリカ史を脚本監督のゲイリー・ロスが研究して、作った迫力がある。リンカーンと違い、歴史から埋もれたニュートン・ナイトをマシュー・マコナヘイが体当たりで演じ、彼を支える黒人モーゼスのマハーシャラ・アリも風格がある。権力者たちも容易には踏み込めない緑濃い密林と沼地をブノワ・ドゥロームが絶妙に撮影。KKK団と黒人をつるし首にする処刑。そして銃器の存在が今なおアメリカと切り離せないことが分かる。トランプ登場の時期、いいタイミングの公開。
名作「カサブランカ」に敬意を表しながら、新しい技術を駆使して、黄金期のハリウッド映画の復活を試みた作品。さきの映画のハンフリー・ボガートの店も陰影に富んでいたが、ゼメキス監督は主人公たちが出会うクラブを色彩ゆたかなフアッションでかため、登場人物もいい。物語は戦時下のスパイスリラー、いやむしろブラッド・ピットとマリオン・コティヤールのメロドラマというべきか。魅力的な男女を中心にすえれば、面白い映画は出来るという企画で、昔からのハリウッド好きには受ける。
売れないパンクバンドが仕事を求め、放浪するうちに狂気のネオナチ集団が仕切る舞台にたどり着く。広大なアメリカ大陸の一画には、あり得るような話で、グリーンの色調に彩られた冒頭の部分は編集も見事で快調。やがてタトゥー満載の肉体がぶつかり合い、狂犬まで交えて恐怖のアクション場面が始まるのだが、これは時間がたつとともに、意外や単調になってしまう。対立する両陣営の役にふさわしいキャラクターが脚本として書き込まれていないので、若もの風俗のこけおどしに見える。
「キャリー」や「シャイニング」などスティーヴン・キングの原作には腕のいい監督の映画が多いので、比較して点が辛くなる。携帯電話の電源が切れることから人類の破滅が始まるという出だしの演出は、もたついていて何とかならないものか。以後、携帯電話を持っている者が狂えるゾンビの群れと化すのも説明的だし、彼らを車で轢いていくシーンなど、単なる悪趣味で、主人公のキューザックも芝居のしようがない。扉の向こうに怖いものがいるという場面も古いパターンの繰り返しだ。
分断、対立、搾取、格差に立ち向かったニュートン・ナイト。そうした問題が浮き彫りになり、とりあえず嫌な予感しかしないトランプという大統領が誕生してしまった現在だからこそ、観られてしかるべき作品だとは思う。ただし、人物紹介だけに留まっていてドラマは希薄なので、メッセージの熱量が高いわりには伝導率が低い。彼が戦う姿と、白人女性との結婚を違法とされて法廷に立つ黒人の血を引く曾孫の姿をシンクロさせたかったようだが、そちらもうまく機能しているとはいえず。
少し前の作品で例えるなら「嵐の中で輝いて」「さらば、ベルリン」みたいな古色蒼然を押し出した第二次大戦下ロマンス。そう言い切ってしまえばそれまでだが、ドンパチもエスピオナージュもバランス良く配分された飽きない作りになっており、疑念に駆られたブラピが家のあちこちに置かれた鏡でコテやんの行動を探る視線を追うカメラ、壮絶で美しくもあるロンドン空襲や空中戦も魅せる。ラストで熱演を繰り出すふたりだが、感極まったブラピが鼻ちょうちんを出しそうで実にスリリング。
殺る気満々のネオ・ナチ軍団だけでなく、俊敏で獰猛なピット・ブルテリアにも囲まれる。そんな八方塞がりを極めた状況設定に加え、「後半で活きてくるんだな」とフラグを立てたキャラを出しながら、いとも簡単に退場させる展開もスリルと絶望感を盛り上げる。カッターでグパァとかっさばかれる腹、軽く突いたら取れ落ちそうなほどに切り裂かれる腕など、暴力描写の痛覚もかなりの高さ。はなからスキンヘッドのパトリック・スチュワートを、ネオナチの親分に抜擢したセンスは◎。
原作となっている小説は、日本版だと上下巻に分かれて800頁ほど。厚すぎるわけじゃないが薄すぎるわけでもない同小説を98分の映画に仕立てるためにはいろいろと端折らざるをえなかったようで、なんだか展開が唐突すぎる。説明のつかぬスーパーナチュラルな現象を描いた物語ゆえにそれでもいいのだが、最後まで取り残された感じ。怪電波受信による民衆発狂とそれによるボストン地獄変、ひしめく彼らを一斉焼殺など、原作の名シーンを漏れなく映像化した気概は買いたいところ。