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自由過ぎるグランパと生真面目過ぎる孫との二人旅という設定は正直言って使い古されたパターンだが、台詞のセンスと演技の味で勝負。そしてそれはかなり上手くいっている。下品&違法ネタ満載のギャグは相当に可笑しく、デ・ニーロとザック・エフロンの息の合った掛け合いで愉しませてくれる。「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」のゾーイ・ドゥイッチが出てるのだが(可愛い!)、ちょっと全体のおバカな雰囲気も似てるかも。しかしデ・ニーロ年取ったなあ。すごく元気だけど(笑)。
ある意味で、クリント・イーストウッドの「J・エドガー」みたいな映画だと思った。つまり、実在の著名な人物を通して社会正義のテーマを描くと見せかけつつ(もちろんそれもそうなのだが)、実のところ作り手がフォーカスしているのは同性愛者の憂鬱と純粋さである。まったくの架空のキャラクターである若き検事アンガーマンの存在が決定的だろう。彼の苦悩が物語の鍵を握っている。不屈の主人公フリッツ・バウアーを演じるブルクハルト・クラウスナーの演技が実にチャーミング。
ジョニー・トーらしい、なんともジャンル分けし難い不思議なテイストの映画だ。医療内幕もののように始まるが、まもなく丁々発止の頭脳型クライムサスペンスの様相を帯び、しかしストーリーの焦点はぼやけたまま、両者を行きつ戻りつしつつ進んでいく。これもいかにもトー監督らしく映画は段々一種の不条理ファンタジーのごとく見えてくる。暴力の予感を醸し出しつつ、なかなかそれは爆発しない。時間は奇妙なまでに引き延ばされてゆく。そしてクライマックスは圧倒的に素晴らしい。
キム・ギドク監督って、ものすごく個性的ではあるけれど、どうして国際的な評価があれほど高いのか、いまいちよくわからないところもある。故意に素人臭く撮っているような映像も、ここ一番の奇怪なケレン味も、大体映画の後半に訪れる濃厚に観念的な展開も、僕は好きだけど「???」となるのが普通なんじゃないかと。この作品も、同じストーリーを別の監督が撮ったら絶対こうならないだろう。アクチュアルでシリアスな政治的主題を真っ向から扱いつつ、これは一篇の寓話でもある。
脚本家の足立紳さんの初監督作「14の夜」には、息子のAVをこっそり見ていたところを当の息子に目撃されて狼狽しまくる父親の姿が情けなくも滑稽に描かれている。ところが本作のデ・ニーロときたら、妻亡き後のリビングで堂々と自慰行為の最中に孫が入ってきても、慌てるどころか最後まで存分にことを済ませる。父親と祖父ではワンクッションあるとはいえ、同じようなエピソードでも人が変わればここまで違うものかと感動してしまった。タイトルがすべてを物語る潔さ。
フリッツ・バウアーを演じるクラウスナーの風貌がキャッチーでよい。レキシントン型のメガネにゴダールのように角が立って見える白髪。アイヒマンの捕獲という歴史的な事件を扱っているものの、あくまでもそこに関わった個人のドラマとして綴る語り口が、史実を違った角度から見せる。そしてここぞというときに流れるジャズの使い方がめちゃくちゃ上手い。生々しくてスリリング、甘くて苦いジャズの音色は同性愛を示唆する演出にも余韻を残し、全体を艶っぽいものにしている。
病院という舞台の魅力を90分以内でここまで描ききった映画がいまだかつてあっただろうか。それこそ骨の随までしゃぶり尽くす仕事ぶりだ。ドラマはほぼ病院の敷地内だけで展開するが、クセのありすぎる入院患者たちを細やかに描き分けつつ、終始ただならぬ雰囲気の刑事と女医の顔面で緊張感を保ち続ける。これでもかというスローモーションと歌攻撃の後は、エイゼンシュテインもびっくりの車椅子階段落ち、からの奇跡。それらすべてを差し引いても面白い。さすがジョニー・トー!
理不尽としか言いようのない話だが、誰が悪いという撮り方はしていない。北にも南にも、さらにその内部でも、それぞれにはそれぞれの生きてきた立場があり、皆それぞれに自分の立場を全うしようとしているだけなのだ。「ベルリンファイル」でも北側の人間を演じたリュ・スンボムは訛りのある喋り方も味があっていい。見たことを喋らないために目を固く閉じるような彼が送還を望むのは家族のためだが、一方でその家族の存在が彼の致命傷にもなってしまう。結末が惜しい。
ここまで際どい脚本はないとデ・ニーロが言う如く際どく破天荒な老人映画だ。妻に先立たれた絶倫老人(名前はDick!)のセックス三昧の道中記だ。ティッシュ片手のオナニー・シーンから始まり孫より若い女性のお腹の上で「アイゼンハワー!」と叫んで果てるまでをフォーレター・ワードを叫びまくりながら名優は熱演する。張りぼてを股間につけた男や顔にペニスを描いた男たちが乱舞し、卑語猥語が盛大に飛びかう映画だが、H大好きな諸兄姉はきっと楽しめるだろう。
ナチスの戦犯逮捕に執念を燃やす鬼検事バウアーは収容所体験もあるユダヤ人。「秋霜烈日」いう古語がぴったり当てはまる鉄の意志の持ち主だ。ドイツ法廷にアイヒマンを立たせたいという彼の前に立ちはだかる様々な難関が緊張感をもって描かれる。ナチスがユダヤ人と共に絶滅の対象としたのが同性愛者だったことを考えると、バウアーの性的嗜好は大きな意味を持ってくる。同性愛を彼自身の問題として描かず、架空の若手検事に託しているが、果たして真相はどうだったのだろう。
ジョニー・トーの新作は香港に戻り大病院が舞台だ。頭に銃弾を受け搬入されるギャングの首領と彼を追う刑事、手術の失敗で追い詰められている脳外科の女医、三すくみの病院ドラマが後半、トーならではのアクション・ドラマに展開する時の映画的快感! いつもながらのハイスピード映像の銃撃、爆破シーン、限定された病院の構造を巧みに利用した撮影は見事。主演ルイス・クーは前半に見せ場がないのでやや精彩を欠くが、ギャングの首領ウォレス・チョンの特異な役作りは面白い。
北朝鮮の素朴な漁師が舟の故障で韓国へ流れ着き、スパイ容疑で過酷な取り調べを受け、命からがら祖国へ帰ると今度は南のスパイではないかと疑われる。カフカ的な寓話かコメディのような話だがこれが全く現実であると訴えているのがこの映画だ。北の独裁と貧困、南の資本主義的退廃に対する批判、両国に共通する官僚制度の恐ろしさ、個人を抹殺する国家の存在への怒り、キム・ギドク監督が本作に込めた思いは単純直截であるだけに力強い。隣国の話として安閑としてはいられない。