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一〇二分の映画のうち、「スター・ウォーズ」製作時のことが語られるのは二〇分ほど。ごく小さな役で出演した人々(例外はダース・ベイダーの「中の人」だったD・プラウズ)の、この映画の前の人生、あとの人生が、本人たちの証言で語られる。コンベンションをめぐる話のくだりがいちばん印象的だが、一方で、エキストラ同然だった人たちもほとんどはプロの俳優であり、イギリス映画界で俳優として生きるというのがどういうことか、そのサンプルをいくつか見ているかのようでもある。
「ドローン・オブ・ウォー」の二番煎じかと思ったらずっと複雑な内容で、しかも極上の「会議映画」だった。会議室内での人物の姿勢や位置の変化が場の空気の変化を絶妙に物語り、切り返しショットが的確に緊迫感を盛り上げ、英国風アイロニーも利かせつつ、問題を複数の角度から覗きこませる。さまざまなカメラ・アイの使い分けも面白く、「キャプテン・フィリップス」で複雑なキャラクターの海賊を好演したバーカッド・アブディが、重要なアクションとサスペンスを物語世界に導入。
背景に流れるマイルスの演奏に、ふさわしくあろうとするかのような文体。過去と現在とが自在に交錯し、やがてすべてが華麗にクライマックスへと流れこむ形式には、いまどき「オール・ザット・ジャズ」かよといぶかる声もあるだろうし、「ストーンウォール」同様こちらも完全にフィクションなのだけれど、普通に伝記映画を撮ってもマイルスという人物は表現できないと言えば、批判への答えとして充分だろう。サングラスを外すとドン・チードルにしか見えないことについてはスルーが吉。
暴動の中心集団がホワイトウォッシュ(白人化)されているとの批判がすでにあるが、それを含めた数々の不正確さ・不適切さもさることながら、エド・マーフィの悪行を際立たせ、かつシーモア・パインとレイとのあいだにつながりを作ったせいで、「ひとりの悪人を成敗する」ことが一瞬物語の焦点であるかのようになってしまうのが、暴動の歴史的位置づけをすり替えていると同時に、この映画の作劇上のバランスを崩してしまっていてとてもまずい。よく演出されたシーンも時々あるのだが。
「スターウォーズ エピソード4」の内容も知らず、コスチュームやヘッドギアのかげで顔も知られずに演じていたという男女俳優の軌跡を追うドキュメンタリー映画だから、カルトなファンなら見たくなる企画。大ヒット作品とはいえ、誰しもダース・ベイダーをデイヴィット・プラウズという役者で覚えているわけではないので、全篇に溢れる人生の哀歓を知ると、映画や演劇を志す人に見せて、業界の厳しさや覚悟を知ってもらいたくもなる。出演者たちが、作品と家族を愛しているのがいい。
安全な場所にいてドローンにより敵を倒すという現代の戦闘をリアルに見せてサスペンスがある。しかし自爆テロリストから多数の命を守るために一人の少女を犠牲にしてもよいのかという哲学的問題が立ちはだかる。生死とは無関係なオリンピッ競技場を決めるのにも大混乱となるくらいだから、このテーマに関し、観客も考えざるを得ない構成。監督は中途半端なヒューマニズムを言い立てる女性政務次官よりも、上官の命令でボタンを押さざるを得ないドローン操縦士の涙の顔に感情移入。
邦題のせいでジャズ好きはマイルスの空白の5年間の謎が知りたくて見る。回想シーンに警官ともめて殴打される有名な事件も出てきて期待がたかまる。だがやがてマイルス秘蔵のテープをめぐり、銃撃戦やカー・アクションが始まると、啞然。ドン・チードル主演の「ホテル・ルワンダ」が民族紛争の原因究明よりもアクションに重点を置いたのを連想する。チードルが自分で監督してマイルスを演じたかった情熱は伝わり、偏屈な風貌もよく演じられていたので、最後の演奏には感動した。
オバマ大統領がナショナル・モニュメントに指定したニューヨークの「ストーンウォール・イン」と周辺地区が、そこに居住したストリート・キッズともども活写されている。エメリッヒ監督はこれまでの娯楽大作では分からなかったラジカルな面を見せ、みずからゲイだと言うだけあって、演出のキメも細かい。プルーストやヴィスコンティを通じて、ヨーロッパの同性愛はソフトに教養ゆたかに、日本人に知られてきたが、アメリカでは扱いが乱暴だった。その抵抗の物語に笑いがあるのはいい。
一発屋ならぬ一着屋ともいうべき者たちの波瀾万丈な物語。それを期待したいところだが、ほとんどの者が「SW」出演はあくまで人生の通過点だと考え、謹厳実直に生きている。そこを浮き上がらせるのが本作の狙いだろうが、そんなもんだろうと思えるし、個々が語る「SW」裏話もいまさら驚くほどのものでもない。とはいえ、ダース・ベイダー=デイヴィッド・プラウズがダントツで稼ぐなど、コンヴェンションにおけるキャラ的ヒエラルキーが劇中そのままになっているのは興味深い。
多数を救うためならば、少数を犠牲にしてもいいのか? いいわけがないが、そういってもいられないし、結局は少数が犠牲になる。そんな無情の摂理に則った展開が容易に予想されるのだが、現地諜報員の奔走、官僚や政治家の責任逃れ、小鳥型&昆虫型ドローンからの覗き見映像、無人機操縦士たちの葛藤が絶妙に交錯して、グングン引き込まれる。加えて、ヘレン・ミレンが照射する〝鉄の女〟オーラが緊張をいやおうなく加速させる。「ドローン・オブ・ウォー」と併せて観るべき一本。
マイルス版「ヤア!ブロード・ストリート」といったところだが、殺伐としていてコカインまみれなのが彼らしい。さすがに銃をぶっ放し、カー・チェイスまでやらかすのはやりすぎじゃないかなと思うが、カオティックに鳴り響く〝電化マイルス〟期の楽曲、エレベーターの壁を押して70年代の高層ビルから50年代のクラブへと移動するといったジャンキー視点に満ちた場面転換が効いてきて、気にならなくなる。マイルスに扮したドン・チードルは、髪型で少し冒険してみた彼にしか見えず。
ゲイであるエメリッヒが、LGBTの権利向上運動の契機となった事件を題材に撮り上げた作品。とても意義があると思うが、そこはやっぱりエメリッヒである。事件を中心にした青春ドラマにしたいのか、容赦なく阻害されたLGBTの憤怒を描くドラマにしたいのか、きっちり史実を見つめたドラマにしたいのか。すべてを盛り込みたかったんだろうが、それぞれを継ぎ接ぎしただけの仕上がりに。良い意味で作りものっぽく再現された、60年代NYグリニッチ・ヴィレッジの街並みだけは◎。