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佐々木蔵之介の藩主を先頭にした一統が、掛け声も勇ましく走っているのだが、そのわりにスピード感がないのは、前作と同じ。それは、走破すべき距離が運動を伴って見えてこないからだろう。そのぶん、陣内孝則扮する悪老中や刺客集団などが賑やかに登場する。悪老中に対する、民を大切にする弱小藩という構図は、一応現代風の味付けに見えるが、話の展開は、集団抗争時代劇以前の時代劇に似る。勧善懲悪の明朗時代劇に。ならば、いっそ、それに徹すれば活路が開けるかも。
終わってみれば、ラブコメとしてはオンナとオトコの組み合わせに捻りがあって悪くないと思うのだが、画面と音声に相当苛々させられた。とくに前半。バックからの照明の白っぽく締まりのない画調と、聞き取りにくいセリフ。とくに後者は本作だけでなく、最近の映画の通弊といってもいいが、録音機材の進化が、発声に難があるセリフも拾ってしまうからではないかと思うのだが……。安心して見られるようになったのは、ヒロインの両親として中野英雄と石野真子が出てきたあたりからだ。
職業訓練校という場の感じがリアルだ。経歴も年齢もバラバラな連中に大工や自動車修理の技術を習得させることを建て前とした場の、生徒と教員双方を覆う独特の倦怠感。そんな空気に順応しているオダギリジョーが、とりあえずの擬態であると感じさせて悪くない。そして、そんな彼の装われた外皮を破るのが蒼井優だが、いつもは静かに抑えた外面の内に一筋縄でいかぬ手強さを表現する彼女が、ここでは奇矯な振舞いを通して、脆く傷つきやすい魂を抱えている様を見せて秀逸!
これは、原作によるのだろうが、いい話だよね。沢口靖子が頑張っているし、確かに、こんな先生がいたら、と思う。生徒一人ひとりに心を配って寄り添う。そうなると、絵に描いた理想的な教師像みたい見られて、逆に敬遠されるかもしれないところを、清々しく演じているのは、彼女の資質だろう。ただ作り手も、そんな彼女に惹かれたためか、アップが多すぎる、というか、アップのショットが長すぎる。アップは困ったとき(それ以外は不要)、という吉村公三郎の金言を思い出して欲しい。
行って参勤、帰って交代、じゃ、まだ終わってねえじゃん、ということらしい。来た時よりも帰り道は遠い、という言葉通りで難関が次々。今回の目玉はパワーアップした悪役で、それはいいんだが愛きょうがないんだねえ。コメディ風味を強めてくれたら星が増えただろうが逆目で残念。また将軍の役割がどうなんだろう、と今回もまた首をかしげてしまうのだ。小藩の面々のキャラは立っており、むしろ現代を舞台にしたスピンオフとか期待したい。企業乗っ取りを阻止するとかどうだろう。
本来シンプルな設定だったのに余計なくすぐりを入れたせいで意味不明な映画になった。女嫌い男と野菜嫌い女が同居する。そしてそれぞれの苦手を克服する。それで十分なのに何か雑味が多いね。諸エピソードの中心核がばらばらな感じがするのだ。女の実家が優れた野菜農家で、というのが重要なのだがそれと彼女の野菜嫌いの動機の結びつきがヘン。さらに男の同性愛趣味にも説得力がない。ただし女は男の方を好きになっちゃうのに、男は全く無関心、というシチュエーションは悪くない。
タイトルの意味が最後に判明する、その瞬間の感銘が大変なもの。これは察するに(世の中と)和解はするが復縁はしない、という映画。そういう絶妙な距離。もっともそれを絶妙と評価できるのは観客の特権だ。主人公が引っ越して来て三カ月も経つのに段ボールがそのまま、というあたり脚本演出も手なれ、妹の旦那さんの存在も隠し味的に効いている。つまり彼が世間だ。典型的な躁鬱気質の踊るキャバ嬢に扮する蒼井優のどろどろした純情にいつしか観客もほだされてしまうのであった。
先に文句を言っちゃうと校長、無能すぎ。主人公と手を携えて問題に当たってくれなきゃ。やっかい者の主人公をわざわざ自分の学校に呼ぶんだからそれなりの人物のはずでしょ。それはさておきこの映画、本当に風が吹くのが素晴らしい。友情が生まれるのも誤解もそれぞれ風が契機になっており、上手い演出。ただ難しい扱いなのは病気の少女のお母さん。学校が薄情だからヘソを曲げたらしいのだが。いっそ少女を治すために校長が主人公を学校に呼んだ、という設定にするべきだったのか。
行きは早かったが帰りはもっと早いという続篇は超倍速化。一発ネタに近い企画だったので苦労が窺えるが、道中だけでは持たないと判断して前半で帰着させたのは得策。後半で参勤交代から離れた展開が可能になり、奇想時代劇としての魅力が薄まる分、どれだけ新しい手立てを用意できるかにかかっているが、新味に欠ける今風時代劇になってしまったのは残念。前作同様、原発事故を踏まえた台詞が出てくるところに作者の意地を感じるが、今のお上はこんなに理解があるのかどうか。
漫画なら美女と美男ゲイの男子校教師が強制同居する話でも成立したのだろうが、生真面目に実写にしてはゲイの扱いも含めて違和感。野菜を前面に押した作りなので話は無理筋にならざるをえないが、美術と演出が丁寧なので観ていられる。この監督ならもっと跳ねた食=性の艶笑喜劇も可能だったのではと思えたほど。ただし、川口が終始眉間に皺を寄せているので食べるシーンがちっとも美味しそうに見えない。「温泉すっぽん芸者」ばりにオートバイに着物でまたがって走る姿には魅了。
同じ原作者の前2作の気取りと名作志向がなくなり、監督が自分の世界にしているのに好感。様々な年齢の男たちが集う職業訓練校のチグハグな雰囲気がいい。ヘラヘラして若者たちに混じる初老の鈴木常吉が絶品。シリアス路線では女が霞みがちだった山下映画だが、今回は蒼井優が求愛ダンスの妖しい魅力で圧倒。「岸辺の旅」の1シーン出演ですら助演賞ものの演技を見せた彼女だからと思いそうだが、優香までが(失礼)素晴らしい。40代を迎えた山下は30代の女優を美しく輝かせる。
東宝芸能の女優たちが登場する教育映画として観る分には申し分ない。沢口のオーバーな演技も、他が低温な芝居なので上手く際立っている。場面緘黙児なる語は初めて耳にしたが、家では喋るが学校では話せない現象と説明されて、小学校の同級生にもいたことを思い出し、からかいの対象にしていたことに胸が疼く。貧困家庭の生徒が、頭痛で意識朦朧とした母を助けようと頭痛薬を万引きして捕まり、担任の沢口を迎えに来させるという大幅な時間ロスを招く描写以外は至極真っ当な作り。