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議論のあとで外へ出ると雨が上がっているというシーンがあるが、「十二人の怒れる男」とは違ってまるで爽快にはならない。一筋縄ではいかない物語内容についてはいろいろな人がいろいろな角度から論じてくれるだろうからここではさておき、「問いを発しつづける」ことをめぐる映画にふさわしく、C・ブランシェットの声が素晴らしい。情報源の男の妻が感情を吐露するところ等、見ごたえのある場面も多く、最大の注目はレッドフォードで、ここにきて極め付きの代表作が追加された感じ。
これは評価が難しい。物語世界のカオス化と同時に語りもカオス化する(話を1本の筋として追えなくなり、時間も空間も錯綜する)という大胆さゆえに高く評価する人もいるだろう一方で、崩壊の過程の描き方が、単なる思わせぶりな映像の断片の羅列ではないか、これは演出の放棄ではないかという意見もあるだろう。合理的な世界ではないので「どうしてみんな逃げ出さないのか」という質問はナシの方向で。あと題材的にどうしても、クローネンバーグが監督したらどうなっていたかと夢想。
なぜかこの夏「世界滅亡映画」が大ブームで、ここでも大スペクタクル映像が見られるが、それ以上に、登場人物全員がそれぞれの個性と能力を存分に発揮して戦うクライマックスが、群像劇とアクション映画の融合という感じがしてよいのだけれど、80年代を舞台にしていることとはあまり関係なしに、内輪ですったもんだしている感じもあって、結果、なんだかちんまりまとまってしまった印象になるのが残念。「スタートレック」ファンのみなさんは、アポカリプスが見るTV画面にも注目を。
主演男優の声が、撮影所時代のハリウッド映画に登場する男性スターの感じだなあと思っていたら、そこからしばらく、古典期ハリウッド映画を思わせる「ケンカ友だちが恋に発展する」話が展開(しかも女性を婚約者から奪うという黄金パターン!)。主人公が困難な選択を迫られる後半部分のほうがこの映画の推したい部分なのかもしれないが、むしろいま述べた前半部分こそが捨てがたい。とはいえ終盤のとあるセリフにもほろり。米国南部湿地帯のロケーションがめざましい効果を上げる。
トランボが「赤狩り」で高圧的なジョン・ウェインに対し「私は戦争中、従軍記者として沖縄に行ったが、きみは何をしていたのか」と反撃する映画を見たばかりだが、今度はジョージ・W・ブッシュのベトナム戦争時の経歴詐称をめぐるスクープ事件の作品。アメリカの大統領は世界に影響を与えるわけだから、ケイト・ブランシェットが演じるメアリー・メイプスの気合の入れようはすごく、女性ならではの粘り強さが出ていた。儲け役はレッドフォードで、CBSのダン・ラザーを演じ、男の哀愁。
アンドレアス・ベルナルトの『金持ちは、なぜ高いところに住むのか』(柏書房)ではエレベーターの進歩が重要な意味をもつ。ここでは初めから金持ちは高層、労働者は低層と決まっている。自分で設計したビルの最上階に住み、屋上庭園で寛ぐジェレミー・アイアン、憧れてビルの中階に仲間入りした医師トム・ヒドルストンが適役。しかしビルの内部崩壊の図式化を急ぎすぎて人物像が混乱し、リアリティを欠いたことも確か。犬のバーベキューを見た後での高層ビルの実景描写が妙に怖い。
古代エジプトのピラミッドの中から、人類初のミュータント、アポカリプスが4人のミュータント「黙示録の四騎士」を連れて、八〇年代の頽廃した地球を壊滅すべくやってくる。相変わらずオーバーな話で、デイヴィッド・ボウイが喜びそうなファッションがいい。しかしターゲットの地球人の悪徳ぶりがよく描けていないので、物語がはずまない。ミュータントの専門学校も外観はいいのだが、学校の内容の描写が手薄だ。カルトでペダンティックなファンが多いのだから、ディテールに要注意。
アメリカ南部の小さな町で獣医をしているベンジャミン・ウォーカーの隣に犬を飼う医学生のテリーサ・パーマーが引っ越してきて、爽やかな青春の気分で物語は始まる。原題が「選択」となっているだけあって、人生はちょっとした選択で決まってしまうという大河ドラマ。原作は、ベストセラーらしいが、プロットを気にしないで書いたようで、行き当たりばったりの展開だ。「運命のいたずら」という話が多いけれども、獣医が主人公だから、愛犬家にはお薦めできるし、舞台の風景も美しい。
ダン・ラザーに扮したレッドフォードが、現在のレッドフォードにしか見えず。髪型くらい似せたらどうかと思うが、そんなことは重要じゃない。「候補者ビル・マッケイ」「大統領の陰謀」「大いなる陰謀」「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」など、出演、製作、監督それぞれで政治や権力の恐ろしさや危うさを訴えてきた彼のブレない姿勢に熱くなる。とはいえ、なんだか演出にキレがなくて映画的には燃えてこない。脚本家としては職人肌のJ・ヴァンダービルトが監督なのだが残念。
上下のあるところで人が暮らすと本作のように、だからといって前後にしても「スノーピアサー」のようにヒエラルキーや軋轢が生じてエライことに。けっして良いとは思わないが横並びが無難で、それを分かっていた昔の長屋はたいしたものだと痛感はできた。映像も凝りに凝っているし、演者の顔触れにもグッとくるし、舞台となる高層マンションを筆頭に美術や衣裳はクラクラするほど完璧である。でも、肝心の崩壊への経緯も崩壊後の混乱もダラダラしてばかりでノレないままの119分。
同じブライアン・シンガーによる前作「~フューチャー&パスト」はノー字幕で観ても楽しめたのだが、今回は多数のキャラクターを捌くのに手一杯になってしまっている感あり。また、前2作は史実とのリンクが濃厚で妙味でもあったし、今回も核戦争勃発の機運が高かった「ザ・デイ・アフター」「SF核戦争後の未来・スレッズ」な時代を舞台にしているがそれほど活かせていない。しかし、〝鉤爪のアイツ〟のシャブでも打たれて錯乱したかのような登場の仕方は呆気にとられるが素晴らしい。
舞台となるのは海辺の町、出てくる人間のほとんどが人畜無害、泣いて笑ってフォーリン・ラブという展開と、どこを切ってもニコラス・スパークスの世界。これがチャニング・テイタムやらライアン・ゴズリングやらレイチェル・マクアダムズといった面々だとハマるし、うっかりウットリもしてしまうわけである。だが、今作の主演男女はスラッシャー・ムービーの序盤で殺されるような風貌とオーラ。こうなると途端に陳腐に思えてきてしまう。そんなニコラスの不思議を学ばせてもらった。