パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
またもや「実話」ならではの感動を売りにされると、それが何なの?と毒のひとつも吐きたくなってくるが、しかし実話でなかったら、この物語は映画にはなるまい。つまりささやかではあれ、いや、ささやかであればこそ、ほとんど奇跡的と言ってもいいような「良い話」は、それがもともと「実話」であることをプレテクストとして、ようやく成立するということだ。クールだが情熱的な女教師を演じるアリアンヌ・アスカリッドが素晴らしい。ドキュメンタリータッチの画面構成も効果的。
視覚的には文句のかけらもつけようのない驚異的な達成度で、冒頭から圧倒されまくりながら息つく暇もなく観終えた。画面に漲る躍動感という意味では、ここまで来たか、という感嘆を禁じ得ない。だが、67年版から言われてきたことではあるが、テーマ的には問題があることは否めない。レイシズムを潜在させていると思われかねないということだけでなく、ここで描かれているのが、人間の少年の動物化ではなく、動物たちの人間化であることにも根本的な疑問を感じる。でも面白いのは確か。
カメラはザ・サッチャル・アンサンブルの練習風景を丹念に捉えていく。イスラム原理主義の圧政によって活動を妨げられたあげく、彼らは民族楽器でデイヴ・ブルーベックの超有名曲〈テイク・ファイヴ〉をカバーしてネットに投稿、これが世界中で大評判となり、本場ニューヨークのジャズ・フェスに招かれる。たとえ彼らのブレイクが悪しきオリエンタリズムの産物だったとしても、「全世界に知って欲しい、パキスタン人は芸術家でテロリストじゃないことを」という言葉には感動した。
申し訳ないけれど、これはテレビドラマだよね(テレビあんまり見ないけど)。断じて「映画」ではない。でも「テレビドラマみたいな映画」は韓国のみならず日本でも多い、というか今やほとんどそうなので文句を言っても仕方ないのかもしれない。とはいうものの、辣腕の独身女弁護士が交通事故であの世に行き、蘇りを賭けて期限付きで二人の子持ち主婦に転生するというストーリーは、ハリウッド黄金期のコメディの筋立てを思い出させる。なのでハリウッドでリメイクされる可能性もあり?
実話をベースにした弱者のサクセスストーリーは「最強のふたり」に代表される近年のフランス映画のヒットの定石。本作もその系譜に属し、移民文化であるフランス社会の縮図を描きつつ、ドキュメンタリー風味の採用も含めそつなくまとまっている。だがそれだけだとハリウッド映画のよくできた縮小版という感が否めない。脱落した生徒や教師自身の人格のようなディテールを拾い切れていない。ナチス収容所を描いた絵と写真の違いを指摘した生徒の発表は興味深かった。
「ライフ・オブ・パイ~」でも思ったけれど、演技経験のほとんどない子供が一人で、ブルーバックの前で演じて、それが演技として成立していることは従来の映画の作り方にとって一種の驚異だ。演技論とか演出論とか根本的に考え直さなければ。「アイアンマン3」を蹴って「シェフ~」を作った監督のファヴローは自ら子役の相手役をつとめながら指導したというが、技術としてはともかく役としては違和感のないレベルに達している。そして声だけでも妖艶なS・ジョハンソンはさすがの一言。
音楽ドキュメンタリーの見方がいまだわからないという個人的な課題がまたもや試される。本作では政府やタリバンによって抑圧されたパキスタンの音楽の歴史が背景にあり、その情報をふまえながら、困難に負けず活動を続けてきたミュージシャンたちが様々なハードルを乗り越えてステージに立つ過程を見守ることができる。パキスタンの伝統音楽とジャズとの融合という音楽的なチャレンジもあり、非常にドラマティックな題材で演奏も素晴らしく、全く不満はないのだが、それゆえに課題の解決は持ち越された。
キャリアに生きる自立した独身女性が、子を持つ主婦の身代わりとなることで、旧来の家庭像に革新をもたらすように見えて、最終的に男性は外で働き女性はそれをサポートして家を守るといった古きよき家族への幻想へと保守回帰するドラマ。そのあまりにコンサバな安定感に虚しさを覚える。特に妻を守る夫という女性の理想を防波堤に女性を前時代的な役割に収める行為はより罪が重い。それでも古くからある価値観に裏打ちされた盤石な構成と演出による基礎体力は高い。
女教師の情熱と信念が生徒たちの心を動かしていくという昔ながらの筋立てだが、アウシュヴィッツを生き延びた老人の話に悪童たちが居住まいを正し変わって行く様は素直に感動する。映画的な素材とは言えないかもしれないが、様々な人種の生徒たちの奔放な言動を追うカメラや女教師の風貌や演技が良いので引きこまれる。民族抗争が続き、人間の人間に対する残虐さは後を絶たない。広島、長崎の被爆の悲惨さも風化しつつある今、十八歳の選挙権などもあわせて時宜を得た映画だ。
ディズニーが「ジャングル・ブック」を実写でリメイクしたと聞き、リアルなロケを期待したのは、私の早合点だった。主演の少年以外すべてCGなのだが、その見事な映像には魅了された。ファンタジックな雰囲気はCGならではのものかも知れない。演技はすべてブルーバックの前で相手なしで行なったというニール・セディ少年をはじめ、動物たちの造型や動きは絶妙。J・ファヴロー監督はインディー出身だが常にツボを外さない演出ぶりで、今度も見事な職人技を見せてくれた。
消滅の危機にあるパキスタンの伝統音楽の演奏家たちがジャズに最後の活路を求める。ウィントン・マルサリスに招かれニューヨークの檜舞台を踏むが、本番直前までごたごたが続く。リハーサル中、終始厳しい表情を崩さなかったマルサリスの顔に、本番が始まるや会心の笑みが浮かんでくる様はドラマティックだ。演技ではないだけに、彼の存在感は絶大だ。役者そこのけ!ドキュメンタリー映画だが、まるで昔ながらのミュージシャンの成功物語のような心地のよいハッピーエンドだ。
「天国へ行く前に通らねばならない関門に引っかかった主人公というと、ルビッチの「天国は待ってくれる」以来、幾つもの作品が思い浮かぶ。是枝裕和の「ワンダフルライフ」もそうだ。どこか懐かしい設定で、安心して観ていられる。生前(?)のヒロインは、上昇志向の強い高学歴のセレブ弁護士で、男性不信のセックスレスと、かなり嫌みな女だが、その部分をもっと見せて欲しかった。家庭的な中産階級の妻に適合できるか? 結末は決まっているのだから、終盤はいささか冗漫。