パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
宮殿から「外の世界」へと踏み出す瞬間なしにいきなり街中の場面へ飛んでしまっていたり、あるべきショットが撮られていないという感覚がつきまとう映画だが、マーガレットと娼館経営者とのくだりなど、クラシックなコメディの感じがあってとても好ましい。素晴らしく可愛いプリンセス二人が兵舎でリンディーホップを踊るシーンや、夜明けのドライブのシーンには、こんなことが現実の彼女たちにもほんとうに起こっていたらいいのにと思わずにいられない多幸感(とせつなさ)がある。
「リークするから俺を取材しろ」ならよくあることだが、「俺を題材にした映画を撮れ」と言っているも同然のメールを送ってきたスノーデンの意図は謎だが、この挑戦(?)を受けて立った監督が描き出す、その後の経緯はまぎれもなく目に見える事実だ。ガーディアン紙さえも英国政府の圧力に一部屈せざるをえなかったという話には暗澹たる気持ちになるけれど、これだけの覚悟をして権力と戦う報道人たちがいることに鼓舞される。陳腐な言い方になってしまうが、まさにいま観るべき映画。
『ザ!世界仰天ニュース』に出てきそうな実話を信仰目線で語った映画で、選挙の年に米国で増えるキリスト教宣伝映画の一本、なのだけど、各人物の葛藤が描かれてまともなドラマになっており、宣伝臭は薄め。クイーン・ラティファ演じる天使的ポジションの人物と、小児科医のキャラクターがチャーミング。難病の娘を抱えた母親にクソみたいな言葉を投げつける教会信徒がいる一方で、見ず知らずの人たちが示す思いやりが美しく、信仰と無縁の観客もヒューマン・ドラマとして楽しめそう。
悪名高さのわりに実はあまり大したことはやってないらしいクレイ兄弟だから、この映画で前面に出るのは犯罪行為よりもむしろロマンスであり、E・ブラウニングが不幸なヒロインを強い存在感をもって演じる。でもこの映画の最大のお楽しみはやはり、素晴らしくハンサムでロマンチックなレジーと、完全にクレイジーな(しかし正気のときには思いがけない優しさを見せる)ロンを演じ分けるトムハ。音楽面では、スウィンギング・ロンドンを舞台にしたジュークボックス・ムービーの趣も。
終戦時、エリザベス王女が妹マーガレットと王宮を出て、ロンドンの街をさまよう話だが、「トランボ」を見て感動したばかりなので、当然「ロ―マの休日」と比較する。ジャロルド監督も、あの名作を意識したはずで、ローマの観光名所に対してロンドンの娼館街を映像化し、戦勝に湧く大群衆の再現に力を入れて、スペクタクルだ。王女の相手は貧しい空軍兵士で貧民街も見せる。だが、そうした気配りがかえってファンタジーの味を損ない、妹役の献身的ドタバタぶりもシラけさせてしまう。
08年に岩波書店から『ウィキペディア革命』という本が翻訳刊行され、知識のガバナンス原理として、百科事典との比較などが語られていた頃はインターネットに関し、まだ楽天的だった。現在NSAに属したスノーデン青年がリスクを承知で訴える、情報機関の監視体制の恐怖は、どういうテクニックによるのか分からないながらも、スリリングに伝わってくる。大学で映画製作を教えていたというポイトラス監督は、アメリカから亡命した青年の訴えを粉飾のない演出でみごとに提示した。
テキサスの平和な一家の主婦クリスティに愛娘の消化器疾患の重病が襲う。すべてをなげうってボストンまで出向き、名医に頼み込むが、治らない。この名医のキャラクターが深刻なドラマに救いの笑い。アインシュタインの「奇跡」は信じるか信じないかだという言葉が引用されていて、観客はひたすら、いかなる奇跡が起きるか、待ち続ける。そこで、クライマックスは伏せておくが、実話としては驚くべき事態が起こり、熱演したジェニファー・ガーナーは教会に通うようになったとのこと。
1960年代の英国ではビートルズと共にギャングのクレイ兄弟が有名だった。邦題のサブタイトル「狂気の美学」は、主演格の兄レジーよりも、心を病んで凶暴な弟ロンから付けたものだろう。レジー役を依頼されたトム・ハーディが一卵性双生児のロンを演じたいと言ったのも当然。映画の成功は彼が二役を演じたことにあり、それを支えるメイキャップや衣裳もみごと。脚本監督のブライアン・ヘルゲランドはヒロイン、エミリー・ブラウニングによるナレーションにひねりをきかせていた。
実際に奔放だった妹マーガレットがエリザベスを冒険へ誘うニヤリな導入、皇室マニアのギャングに間抜けな護衛コンビといった魅力あるキャラ群、そして恋と笑いと成長の物語。初期クリス・コロンバスが英国王室をネタに撮ったようなノリに頬が緩みっぱなし。王室と一般大衆の齟齬みたいなものも盛り込むが、あまり活きてこず。舞台である45年というと、マーガレットは英空軍の大佐と大恋愛中だったはず。意図的なのか、妹同様にエリザベスも空軍兵士とイイ感じになる点も面白い。
傍受システム〝エシュロン〟の存在は以前から有名だし、「カンバセーション…盗聴…」「エネミー・オブ・アメリカ」あたりを観て育った者からすると、米の人類監視なんてやっていて当然だと思っていたので、とりわけ驚きもせず。だが、スノーデンの告発と取材を映像に収めていたのには驚いた。といっても殺られるか否かみたいな話でもないので、ハラハラせず。昨今的にはエシュロンみたいなシステムに頼らず、人力でとんでもない情報を引っ張り出す『週刊文春』のほうが凄いと感じる。
劇中でも医師が語るが、娘の偽性腸閉塞完治は大木から落ちた際の衝撃が中枢神経になんらかの作用をもたらしたと思う。大木から落下しても無傷だったのも、木が腐っていたのと腐葉土がクッションになったのだと思う。それを〝神の奇跡〟とするのは勝手だが、一家を救ってくれた他者の善意をも神がもたらしたとする姿勢には、救われなくてもいいから神よりも人を信じたい者としてはスッキリしない。偽性腸閉塞が治ったら治ったで、すぐさまデカいピザを娘に食わす一家の食育も疑問。
兄ロナルドと弟レジナルドの固い絆と反目、ふたりの間に挟まれて壊れていくレジナルドの妻。エンタテイメントとしても実録ドラマとしても楽しめながら、その関係と行き着く先をきちんと追った仕上がりに。が、離れたくても離れられない双子の歪んだ愛憎の奥底までには深く踏み込んでいるとはいえず。ま、こういうのは当の本人たちもハッキリと意識できる類のものではないだろうから仕方がない。ギャングでさえもキラキラしていた、スウィンギン・ロンドンの別面が覗ける好篇。