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NY派の代表格も21世紀以降はすっかり欧州への亡命作家の様相を呈していたが、ジャブのように米国ロケの作品も繰り出してくる。本作もそんな一本で、人生に厭きた哲学教授が、人助けのために殺人計画を思いついた瞬間から、人生がバラ色に見えてくる。インテリの陳腐なエゴイズムを黒い笑いに包み始めると、アレンの才気は留まることを知らない。他界したゴードン・ウィリスやスヴェン・ニクヴィストらの衣鉢を継ぎ、現在の伴侶であるダリウス・コンジのカメラも素晴らしい。
低迷したキアヌ・リーヴスは昨年公開の「ジョン・ウィック」でV字回復を果たしたが、余勢を駆って、あろうことか恐怖のマゾ映画「メイクアップ」のリメイクに手を出した。少年期に見た筆者にはトラウマとなった作品で、ゴーストやモンスターよりも女性の本性の方が遥かに怖いという真実の杭を、無垢なる少年の心に打ちつけてくれた。あの時のシーモア・カッセルの怖がり方は絶品だったが、今回のキアヌの怯えぶりもなかなかだ。怖がる芝居で魅せるのは、映画の重要な特質である。
肥満オタクが踏み出す、勇気の第一歩の物語。北欧の冬景色のもとでカウリスマキ流のニヒルな悲喜劇が踏襲されるかと思いきや、主人公が思いのほか行動力と包容力を発揮。苦境の女性を介助するくだりでは、図らずも目頭が熱くなった。空港職員の彼に対して女性が「空港は好きよ」と言う。しかし彼は、管制塔から下界を見下ろす存在ではなく、荷物の積み下ろし場から人々の往来を観察してきた人間なのだ。せり上がるヒューマニズムが、彼の仰ぐ視線から湧き水のごとく生起する。
腐敗警官たちがなんと覆面強盗との二足のわらじを履きつつ、警察組織とロシア系マフィアの間で危ない橋を渡ろうとしている。強引な作戦、ボロ布のような人命。きわめて非情なる犯罪活劇で、しかもLAやNYといった馴染みのロケ地ではなく、南部アトランタの不規則な街景によって、ますます油断ならぬ恐怖の空間が現出された。演出、撮影、編集に無駄がなく、地味ながらもアメリカ映画の醍醐味が充満する。問題の焦点たる重要機密ファイルが何なのか結局わからなくても楽しめる。
「どうだい、師匠の新作は」「いやね、サスペンスもんでね」「お、久しぶりにマジなヤツ?」「うん、ちょいとね、ドストエフさんがまぶしてあって」「相変わらずインテリだね」「ヒッチ御大の〝疑惑の影〟もちらっと匂った」「じゃ、はらはらどきどきかい?」「ていうかマジな顔でぼそぼそ呟いて、ほのかにオカシいってやつ」「師匠も近頃アブラが抜けて」「どんどん枯淡の域だあね。ケレンなくなり、アレンかなってね」「ちえ、一杯やりたくなるね」「うん、そういう気分の映画。ま、気楽に愉しんで」
中年のおっさんが2人の娘っ子にいたぶられるという展開は、原型の「メイク・アップ」と同様。前作はお話にヒネりがなく、ただ漫然とサディスティックな描写が続くだけだったけど、今回も似たようなもので。新たな道具立てにアナログ・レコードとかSNSを使ってるが、あまり効果を上げてない。キアヌ君は製作まで兼ねて、どうしてこんな映画に出たんだろ。この監督なので、いつ血ドバドバ、内臓グチャリの画面が出てくるかとハラハラドキドキ。あ、その興味で引っぱったわけね!
例によって、淡々、おとぼけ系の北欧映画かと思ったら、じわじわと沁みてきて。一見鈍感そうな中年独身男が、実は弱い者の気持ちを汲みとる繊細な神経の持ち主というところが泣ける。この監督「マーティ」のファンかしら。ある時は躁、ある時は鬱といった人間の精神状態のごとく、人生にも陽と陰の繰り返しがあり、それならばいっそ陽の側に軸足を置いて生きて行こう――なんていう主人公像がよく練られている。ラスト・ショット一発で男の明日を暗示させた、この脚本&監督に感嘆。
5人組強盗集団の銀行襲撃がきびきびしたタッチで描かれて、久しぶりにイケるノアール物かと思わせるが。本筋に入ってロシアン・マフィアだの警察の動きなどが絡んで、登場人物も増加。それにつれて脚本・演出ともに焦点がふらふら。ま、群像劇をネラッているのは分かるけど、人物描写の濃淡があいまいなので観てるこちら側は誰に肩入れしていいのか分からず腰が落ち着かない。ちとタランティーノの悪影響の感も。ただ、スーパーヒーロー全盛の米映画の中ではわりと楽しめたほうで。
青春香る大学の風景。謎めいた哲学教授と早熟な女子大生のロマンティック・コメディかと思いきや、中盤からは「~重罪と軽罪」(89)が頭をよぎる真正面から哲学する映画だった。強引な発想と理屈で実行された教授の完全犯罪を、彼に恋する女子大生がモラルを突きつけ揺さぶる。愛と憎しみは紙一重なのかと思わせるクライマックスは本当に怖い。〝実用的・実践的〟とは本作のキーワードのひとつだが、実際女の子にとって実用的な映画だと思うし、作劇上でもこの要素が最も効いている。
よき父である主人公。妻と子どもが旅行に出かけた夜、見知らぬ若い2人の女を家にあげてしまったことから男の悲劇が始まる。「メイク・アップ」(77)のリメイクだが、いまさらこんなにベタに男性原理への女の復讐みたいな映画はいかがなものかと。だいたいキアヌ・リーブスは、最初は下心の隙をつかれただけで、その後は反省してるし、次第にかわいそうになってくる。若い女優にいたぶられるだけのこの役はキアヌじゃないでしょ。でも最後の〝いいね!〟は笑ってしまった。ごめん。
アイスランドに住む43歳、オタク、独身。母と二人暮らしの実家から、荷物係として働く会社に通う。そんな彼が、ひょんなことから女性に出会って、何やらいい感じになっていくのだが……。オタクの恋物語と一口に括れない意外な広がりに魅了される。〝チャンス〟はどこから降るのかと本作を観ながら考える。それはやはり〝他者〟ではないかと、主人公フーシがじわじわと、かつ物怖じせず関わり発見していく外の世界を共に体感しながら思う。秀逸な脚本。役者も演出も繊細でとてもいい。
アトランタが舞台のクライム・アクション。ロシアン・マフィアに絡む5人のギャングの犯罪と、彼らに翻弄される刑事たちの捜査と混乱を描く。リアリズムを優先したような演出は荒々しくも手堅いが、複数の人物が錯綜する物語を引っ張るにはやや不親切な気も。そこが魅力と言えば魅力だが。だからこそ、より重要になってくるのが俳優陣の個性。実力派の渋いスターが並んでいて結構贅沢だ。ウディ・ハレルソンの存在感。最初誰かわからないケイト・ウィンスレットもインパクト大。