パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
過去と現在がややこしく交錯するスタイルは、(元ネタ映画があるとはいえ)最近のハリウッドのサスペンス物によくあるパターンだけれど、高度な話法であるかのように見えて、こういうのって端的に安易だと思う。更にしばしば目を覆うほどに大仰で下品なカメラワークがあったりもするのだが、にもかかわらず、この映画はけっして悪くない。何と言っても二人のヒロインが良い。いつもながら完璧にエロいキッドマンも流石だが、別人かと見紛うやつれ果てたジュリア・ロバーツが素晴らしい。
監督ジョディ・フォスターは実にそつがない。派手さはないがこじんまりとまとまったシナリオを過不足なしにしっかり撮っている。物語の展開はすぐ読めてしまうので後は演技を眺めるしかないのだが、「シークレット・アイズ」と全然違うジュリア・ロバーツも、「ヘイル、シーザー!」とそんなに違わないジョージ・クルーニーも大変良い。しかしこんなタイトルでこんな題材なのに、一皮剥けば昔ながらのヒューマンな勧善懲悪&人生讃歌を一歩も出ていないのはどうなのだろうか?
色々と手が込んでいる。最初のうちはいかにもテレビ的な画面と編集にやや白けながら観ていたのだが、中盤でそれも(たぶん)狙ってやってたことがわかる。オリヴァー・マスッチのヒトラーぶりがあまりにも上手で、演説口調の長台詞になると思わず聴き入ってしまう。しかしこういう幾重にも屈折したアイロニカルなユーモアと一筋縄でいかないポピュリズム批判って今の日本でちゃんと受け取られるのだろうか? 単に「タブーに挑戦」した「危ない映画」として消費されないことを願う。
正攻法の人物ドキュメンタリーとして非常によく出来ている。未公開フッテージがふんだんに盛り込まれているだけでなく、ジェームス・ブラウンという不世出の天才シンガーを、ひとりの黒人、ひとりのアメリカ人、ひとりの人間として描き尽くそうという制作側の真摯な姿勢、そして野心を感じた。インタビューイも極めて豪華な顔ぶれで、ソウル/ファンク/ジャズのファンにはたまらない。しかし怒っている時も冷静さを湛え、クールな佇まいの中に熱情を漲らせるJBの人間的魅力よ!
あの「瞳の奥の秘密」を下敷きにしているとはまったく気づかなかった。そうであるならば少なくとも設定とストーリーラインとオチの面白さは保証されていたはずだが、それを守るあまりか、演出も編集も辻褄を合わせるためのご都合主義に見えてしまう。時制の違いはわかりづらく、テロ対策の導入も、アメリカに置き換えて語る手段以外の必要性を実感しづらい。元FBIの私立探偵はターゲット捕獲の計画も手順も脇が甘すぎてびっくり。キッドマンと惹かれあう理由も結局わからなかった。
クルーニー演じる人気司会者はお調子者。もし自分の影響力を自覚して利用していたらそれこそ脅威になり得る立場の人物だが、犯人の言い分が正しいとわかるやあっさり動揺してへこんでしまうハートの持ち主だ。一方の犯人も気持ちはわかるがほとんど逆恨みの勢いで乗り込んできており、対決としてはどっちもどっち。その他の登場人物も皆モンスターというよりはモンスターになりきれなかった小者たちといった感じだが、賢者ぶって教訓を語り出すよりはよっぽどいい。
アイデア勝ち、と見られても仕方ないほどの強烈な題材。街頭の一般人とゲリラで接触させ、生の反応をとらえるリアリズムを演出するため、ヒトラー役には世間にあまり面の割れていない舞台俳優が起用されているが、それによって完全なフィクションを前提とした場合の「ヒトラー」という人間の人格の掘り下げは叶わなかったようにも思う。本作におけるヒトラーはタレントが芸能活動で得た知名度と人気を元に政治家に転身する構図と酷似しており、その危険を再認識できる。
ライブ映像で踊るJBのキレキレな動きに釘づけになる。超絶的な足さばきのステップと、曲のソウルを体現する卓越したリズム感。もしサイレントで観たとしても、それだけで彼がどんな音楽をやっているのかわかるんじゃないかと思うぐらい。ダンスは音楽を視覚で表現する重要で優れた武器であり、今日に至るまでアメリカ的なエンタテインメントのあり方とクオリティを支える基盤となっている。彼を人権運動にかき立てたのは音楽と同じく情熱の発露だ。ファンクは目に見える。
オリジナルと比較されるのはリメイク映画の負う宿命だが、アルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」に惚れ込んだビリー・レイは、そのリスキーな試みに挑み、9・11以後のアメリカに舞台を移し替え、新しいアイデアを盛り込み、骨太なサスペンス映画に仕立て上げた。我が子を殺された女刑事の10数年にわたる執念をJ・ロバーツはほとんど見せ場の連続で熱演するし、ハーバード出の検事N・キッドマンの一瞬見せるビッチぶりも楽しい。オスカー女優二人を相手にC・イジョホーも健闘。
「グッドナイト&グッドラック」では自らの脚本監督で赤狩りに抵抗するエド・マローの活躍を描いたG・クルーニーだが、今回はそれとは対極の脳天気なTVのアンカーマンを楽しそうに演じている。J・フォスターの演出は手堅く、ジュリア・ロバーツとのやりとりなどTV局内の描写はリアルだが、肝心のサスペンスがさっぱり盛り上がらないのは、脚本に難があるのだろう。すべてが表面的で、ウォール街の描き方も常識的だ。最後のクライマックスももう少し力技を見せて欲しいところだ。
もし今ヒットラーが再来したら、意外にも人気者になり、強いリーダーシップを求める大衆は再び彼を選ぶのではないか……何とも空恐ろしい不敵なテーマを突きつける喜劇だ。まさに我らの内なるヒットラーである。かつて彼を選んだドイツ人だからこそ作れた映画かも知れない。素直に笑える喜劇ではない。すべて、自虐的などす黒い笑いだ。ファンタジーとドキュメンタリーを織りまぜたこの映画の世界が現実になりつつある予兆を感じる。歴史に無知な若い世代の擡頭が恐ろしい。
天才的才能を持ちながら、驕慢で矛盾にみちた人間像が露わになる。不幸な生い立ち、バンド仲間との終生にわたる軋轢、公民権運動にコミットしながらも最後はニクソンの怪しげなブラック・キャピタリズムに寄り添っていく晩年。バンドマン口調で忌憚のない意見を述べる仲間の言動が面白い。物議をかもしたTV番組やキング師暗殺の翌日、ボストンの公演で興奮した聴衆を説得するシーンなど語り草の映像が見られるのも貴重だ。同じくミック制作のドラマ版と併せて観るのがオススメ。