パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
360度パノラマ撮影が躍動する序盤に瞠目するが、中盤は荘厳な超ロングショットとこれでもかの接写で構成され、「自然」や「神」への主人公の接近を描く趣向。なんかテレンス・マリックの映画みたいだな。だが蘇ってからの主人公が、復讐心に燃えて仇敵を追跡しているというよりも、呆然自失で彷徨しているように見えてしまったのは、やはりわたしがおかしいのか。アカデミー賞をそれほどありがたがる人間ではないけれど、レオは以前の作品のどれかで受賞してほしかったと正直思う。
どんな阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのかと身構えていたが、たぶん10代の少年少女に観てほしいという意図からか、生々しく悲惨な画はない。でも、音楽の使い方といい無駄なほのぼの感といいご都合主義のクライマックスといい、「10代の観客をターゲットにした映画」は、なぜこうなってしまうのか。話のほころびをたどると早い段階で謎が解けてしまうので、何も考えないで観るのが吉。驚いたのは、「グランド・ブダペスト・ホテル」でゼロを演じたトニー・レヴォロリが出ていたこと!
イタリア兵たちのドラマが展開される塹壕内が、どういう構造なのかまるでのみこめず困惑するが、時間経過までもが判然としないことからすると、これは意図的なものだろう。ロケ撮影であるにもかかわらず風景が妙に非現実的に見えること、そして言うまでもなくほとんど色を感じさせない画面であることと合わせ、戦場での一夜の物語を客観的・具体的に語るのではなく、兵士たちの記憶を介して描こうとしているのではないかと思う。静寂をつんざく砲撃や銃撃の音がほんとうに恐ろしい。
スピリチュアルの宣伝映画かと思ったら、記録映像(その多さも驚き!)や再現映像、現代のヨガ・シーンをとらえた映像、様々な人々へのインタビュー映像を、自在に行き来する語り口の意外性と流麗さに意表を突かれ、相当面白く見入ってしまった。量子物理学や神経科学と共鳴していると評する人もいる教えを説き、米国内の偏見と向き合い、ガンジーと交流し、啞然とするほど見事な死に方をした男の人生が面白くないはずはなく、彼の教えがなぜ欧米で受け入れられたのかも示唆される。
ワンカット&カメラぐるぐるの先住民襲撃や人馬一体での崖落下には、たしかにハッとしてグー。だが、荘厳で雄大な風景として繰り出される雪崩やバイソン大激走などに、賞欲しさのあざとさを感じる。高尚な雰囲気なんぞ置いといて、雪崩とバイソンのなかでデカプーとトムハーを一騎打ちせたほうが燃えるだろうに。零下20℃でのロケ敢行とか牛レバー生喰いだけでデカプーが評価されたとは思わないが、『世界の果てまでイッテQ!』的現場に出たらオスカー獲得かよとはチラリと頭によぎる。
人類の99%が死滅し、両親を亡くし、弟の行方も知れぬなか、謎の美青年が薪を割り、水浴びする姿によろめくクロエ。原作はYA小説、観客となるのも〝この世の終わり〟と〝一世一代の恋〟に憧れる世代だろから問題はない。俺も40過ぎてそういうのが嫌いではなく、可愛いクロエの喜怒哀楽を2時間にわたって拝めるから申し分なし。とはいえ、異星人が人間の姿で紛れ込んでいるという状況が巧く描けておらず、傍目に怪しい奴は本当に怪しかったというノリでスリルを感じぬまま終了。
随所に挟み込まれる詩的なセリフ、争いをよそに金色に輝くカラマツの樹、シンガロングされるナポリ民謡。そういうものにグッとくる人はくるのだろうが、反戦的なものににせよ、アクションにせよ、戦争映画はドンパチが決め手と思っている向きには、なんだか退屈で辛気臭く感じるだけ。その辛気臭さが厭戦に結びつくのは確かだが。舞台がほぼ塹壕で常に薄暗く、出てくる連中もオール髭面で誰が誰だかわからず。作品が悪いのではなく、こちらのチューナーがいろいろと感じ取れないだけ。
ヨガナンダが体験する数々の奇跡をめぐるエピソード、ヨガが心と身体にもたらす効用みたいなものにはピンと来ず。それよりも、通信教育の走りともいえる郵便を使った伝導、イエスを避けずにヒンドゥーの神々と共に崇める姿勢、物質主義が極まって人々が精神的な拠り所を求めていた20年代アメリカという市場照準と、彼とグルたちのとんでもない商才に驚かされ、興味津々となった。アメリカでなにかを売りたい、なにかを広めたい輩にはヒント満載となるドキュメントではなかろうか。
今や人気実力共に№1のイニャリトウの力作。「アモーレス・ペロス」以来、複数のエピソードが並行して展開する構成の作品が多いが、この映画は徹底的に一人のヒーローに絞り込み、艱難辛苦に耐えて果たす復讐譚を描く。極寒の地を背景にした撮影は見事。アカデミー賞にふさわしい堂々たるエンタテインメントになっているが、根底には人種問題があり、イニャリトウの抱くアメリカ人とは異なる世界観が濃厚に出ている。主演スターであるトム・ハーディが卑怯未練な敵役を演じ花を添える。
オーソン・ウェルズに始まる宇宙人の地球侵略もの。「宇宙戦争」と「盗まれた街」を重ねたような初期SFの懐かしい感じのストーリーが、極力説明を排してスピーディーに展開される。いささか荒っぽいが快適に見せてくれる。ただし一般向けなのか、ジュブナイル向けなのか対象が判然としない。例えクロエ・グレース・モレッツ主演のジュブナイル映画だとしても、もう少し大人の視点からの掘りさげが、設定や人物の造型にあったら、より厚みのある映画になったと思う。
1時間16分の映画だが、長篇大作を見たようなずっしり重い手応えを感じる。第一次大戦、アルプスの前線の一日、それもほとんど塹壕の中の兵士たちに密着して描かれる。壮大な戦闘シーンなどはないが、雪の降りしきる戦陣から眺める景色の神々しいまでの美しさ、戦火の合間の静寂が生命の貴重さ、戦争の愚かさを何と雄弁に語りかけるのだろう。最後に生残った若い兵士の手紙「人が人を赦さなければ、人間とは何なのでしょう」がエルマンノ・オルミ監督の思いを伝えている。
1920年代にヨガ、瞑想の奥義を西洋に伝えたヨガナンダの伝記ドキュメント。ヨガナンダの映像はすべてライブラリー・フィルムなので少ない材料で伝記映画を作った苦労はうかがえるが、彼の生涯の概略をなぞっただけで、彼の説く教義、思想の深奥がどんなものかはほとんど語られていない。何が当時の西洋人を魅了し、今もなおスティーヴ・ジョブズやジョージ・ハリスンを惹きつけたかを知りたくなる。東洋思想や瞑想の世界に関心を持つ契機をあたえてくれる映画ではある。