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6人の監督のアプローチはさまざまで、観れば必ずお気に入りのパートがあるかと。ベルリン・フィルハーモニーを取り上げ、都市の文化と歴史、建築家の人生、建物のコンセプトを重ね合わせたヴィム・ヴェンダースのパートは模範的な仕上がり。マイケル・マドセンの撮るハルデン刑務所は監視の力学と内部の暮らしを鮮やかに浮かび上がらせ、「バレエボーイズ」にも登場した美しい建造物、オスロ・オペラハウスのパート(マルグレート・オリン監督)は、バックステージ物のような面白さ。
まっぷたつになったタンカーの船内と船上で起こることの描写がすべて面白く、「砂州」と呼ばれる難所をちっぽけな救助艇が越えるシーンは大迫力で、ぜひ劇場の音響と映像で観てほしい。でも、救助してから帰港するまでのくだりは、こんなに工夫がないならばっさり短くしたほうがいいし、何よりもまず、シンデレラの愚かで意地悪なお姉さんの役が抜け切れていないように見える女優さんの出演シーンを全部カットしたら、この3倍は面白い映画になったのではないかと思わずにいられない。
R・クロウがこの題材に思い入れがあるのは理解できるのだが、画面構成もつなぎも散漫で、無用な繰り返しが多い上、難題と思われた事柄がみな、主人公のほとんど超能力と言っていいような能力で解決されてしまうため、映画がいっこうにうねりをつくってくれない。でも、オーストラリアの大地にマッドマックスみたいな嵐が襲ってくるところと、ギリシア軍に列車が襲撃されるシーンはわりといい。どこまで描写が正確かはわからないが、第一次大戦後のトルコが描かれているのも興味深い。
閉じこめられた8人がぶつけ合うのは、憎悪というよりも「物語」だ。純正タランティーノ! ところで基本的に室内劇であるこの題材を、70ミリで撮ることにこだわった理由がものすごく気になる。そもそも日本ではデジタル版でしか公開されないのだから、これより上映時間が長く、一部の場面はショットの構図も異なると聞く70ミリ版を観ないことには、監督の意図を正当に評価できないのではという気もする。タイトルバックに流れるモリコーネのテーマ曲のオーケストレーションに感涙。
どの建物も、なにかしら名を耳にし、姿を目にしたことがあるものばかり。だからこそ、建造物自身の目線と言葉で、歴史や存在意義を伝えるのはユニークだし、監督各々の手腕も如実に反映されていて楽しめる。だが、そうなってくると一篇約25分なのが物足りなく感じ、一棟にじっくりと迫った連作にしたほうが良かったのでは思ってしまう罪な作品。なぜかレッドフォードだけがコンセプトを無視し、建物に関わる人々に語らせている。もしも誰かが彼と話せたら、そこを注意してほしい。
ミルクレープか、ミルフィーユか。そんな断面をさらして荒れ狂う海を漂うタンカーは、CG全開とはいえ圧倒される。さぞ人が死にまくるのかと思いきや、そこはディズニー。凄惨な画はほどほどに、品行方正な仕上がりに。実際にそうだったのだろうが、もうすこし展開にケレン味を振りかけるべき。定員12名の救命艇で生存者32名を救う秘策も期待したが、目一杯乗せるだけで面食らう。ひねたタンカー船員に扮して妙な存在感を放つ、マイケル・レイモンド=ジェームズは本作最大の収穫。
砂嵐めがけて果敢に馬を走らせるクロウ、異国情緒満点のイスタンブールで佇むクロウ、オルガ・キュリレンコとクサいメロドラマに耽るクロウ、神妙な顔付きでダウジングのL字型棒を持ってうろつくクロウ……。彼の監督&主演だからしかたないが、〝俺の映画、ディバイナー〟とでもいうべきプロモーション・フィルムと化している。これで演出が冴えていたら観られるが、とにかくベタベタ。名匠巨匠と仕事してきたからといって、彼らのように撮れるわけではないのだと教わった。
タラ版「龍門客棧」というべきか。とりあえず、OPクレジットで飛び出すウルトラ・パナビジョン70のカッコいいロゴにやられる。ただでさえ舞台は密室、延々かつ畳み掛けるようなセリフの応酬は怨嗟と疑念が込められており、横長過ぎる画面は油断ならぬ人物たちの一挙手一投足を捉えており、過分にサスペンスフル。それでいて根底には、人種間の軋轢とそれが生み出す混沌と悲劇というテーマがしっかと横たわる。それゆえか、サミュエルが放つ銃弾はことさら破壊力があるように思える。
優れた建築家は常にユートピアの創造を目指すのだろうか? 6人の監督が描く6つの建物にはどれもそんな志が覗える。マイケル・マドセンの撮るハルデン刑務所は懲罰の場所と云うよりはまさにユートピアだ。自宅を自慢する如くカメラに向って思わず笑みを見せる受刑者の顔は忘れがたい。ベルリン・フィルハーモニーのホールに守護神の如く現れる建築家の亡霊はまさにヴェンダースの映画だ。3時間近いドキュメンタリーだが、それぞれの監督の個性が興味深くいつしか時間を忘れる。
海難シーン、救出シーンは大変に迫力がある。ギレスピー監督は良き時代のハリウッド映画への思いが強いらしく、CGを多用しているが、正攻法の撮り方で、昨今の映画に多いこれ見よがしなショットがほとんどないのに好感を持った。ヒロインの描き方にも、男勝りで気の強い往年の名女優たちの面影がうかがえる。もっと人気、演技力のあるドル箱スターを起用して大作にする手もあっただろうが、ディズニー映画らしい渋めのキャストで見ごたえのある作品になっている。
ラッセル・クロウの監督デビュー作は主人公をヒロイックに作り過ぎたため、やや大味な作品になっているが、古風でメロドラマティックな冒険譚を面白く見せてくれる。百年前の戦争とは言え、戦争で子供を失った父親の悲しみ、敵味方、人種を越えた人間同士の関係などは今日的なテーマだ。第一次大戦で連合軍の一員として苦渋をなめたオーストラリア軍の悲劇『ガリポリの戦い』は、メル・ギブソン主演の「誓い」のテーマとなっているので合わせてご覧になると背景がよく判る。
雪のワイオミングを舞台にした西部劇、しかも密室殺人劇だ。といっても閉塞感は全くなく、ギャグとヴァイオレンス満載のスタイリッシュなアクションドラマだ。南北戦争を背景としたシナリオも見事。ガン首を揃えた常連キャストが皆容疑者で探偵役はS・L・ジャクソン、昨今良い人を演じ過ぎだが、今回は強面のタフガイ。北軍の捕虜に拳銃をつきつけてブロージョッブをやらせるあたりは、「肌の色以外は黒人だ」と自称しているタランティーノの面目躍如。彼の代表作となる傑作。