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あとから考えるとどうしてあんなことになったのだろうと思うのが青春だが、デプレシャンはそのニュアンスをよくとらえて演出。青春を生きる者の生意気さ、憧れ、読んだ書物、聴いたレコード、ダンスと暴力沙汰。すべてが懐かしく感情移入できるのは監督みずからの記憶が作品に投影されているからだろう。そうでなければ、かくも唐突で興味深い構成はできないはずだ。ドルメールとルコリネをはじめ、登場する新人たちが瑞々しく、現在の主人公アマルリックとその人類学教師が印象的。
「キャロル」で50年代の古いニューヨーカーを見たあと、ネットで相手を探す現代の男女の物語に接し、いかにも貧しいものに思えたのだが、話が進むにつれ、彼らの悩みがそれなりに伝わってきた。パートナーがいない状態にコンプレックスを持ち、孤独に耐えられないのだ。さいわい、一夜の関係をもったあとでも、やれ服の脱ぎ方が早すぎたなどと体験を分析し、そのディテールはリアルで面白い。ニューヨークが最先端の街だと思っているひとは、主人公たちの保守性にあきれるかもしれない。
冷戦下、ソ連のチェス・チャンピオン、スパスキー(リーヴ・シュレイバー)に挑戦するアメリカのフィッシャー(トビー・マグワイア)。二人のキャラクターが巧く演出されていて、クライマックスはアクション映画のように盛り上がる。キッシンジャーの政治的メッセージやソ連側の反応なども、ニュースリールを交えて的確。ネクラなスティーヴン・ナイトの脚本と知性派エドワード・ズウィック監督の組み合わせもよく、ゲイル・カッツ企画立案の勝利だ。天才のパラノイア性が興味深い。
サローヤンの翻訳者としてトルコ人によるアルメニア人ジェノサイドの史実はよく読んだが、本作は両親がトルコからハンブルクへ移民した監督によるものなので、主人公ナザレットを救うヒューマンなトルコ人も登場し、微妙な物語構成。たぶん、監督の故国トルコでは撮影不可能な作品だ。主人公が騒乱で行方不明中の娘たちを想い、チャップリンの「キッド」を見て涙する場面やキューバからラムの密輸船でアメリカに渡るルートなど、調査充分に描き出され、国境を越えた時代考証も丁寧だった。