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ギャングスタ・ラップの生い立ちがよくわかる映画だが、そういう興味がなくとも、尋常ならざるリアリティと迫力にぐいぐい惹きつけられる。ドクター・ドレーやアイス・キューブ、イージー・E役の俳優たちが「一見ほかの若者と違わないようだけれど、やがてスター街道を駆け上がっていく」雰囲気を初登場時からただよわせているのをはじめとして、キャスティングがみな素晴らしく、怒りや欺瞞、幻滅、簡単には語れない愛情など、あらゆる感情が生々しくスクリーンに叩きつけられる。
D・デハーンの容貌はそんなにジミーに似ているわけではないが、視線の使い方やしゃべり方など、やり過ぎなくらい似せている。で、ジミーの人物像は、これまでの映画や書籍で語られている範囲を出ていない(これはこれで問題だが)から不明な点はないのだけれど、問題はデニス・ストックのほう。彼が自分の才能をどう考えていたのか、自分にいら立っていたのか環境にいら立っていたのかがわからないので、ジミーとの衝突も盛り上がらず、二人がお互いをどう変えたのかわたしはわからず。
予想したとおりにことが運ぶ部分が多いし、台詞の書き方もすごくベタだったりするが、ここではそんなことはどうでもよくて、これはもう開巻からしてどう見ても「フルートベール駅で」の監督の作品であり、屋内外の風景を巧みに取りこみながら動き回るキャメラが、実に渋い生活感をにじませる。予想したとおりとは言ったものの、物語全体の構造は(詳しく論じるだけの字数がないのがとても残念なのだが)さまざまな読みを可能にする重層的なものになっており、そこもたいへん面白い。
スパイ映画量産(?)の波に乗るかのように、これまた一種のスパイ映画。チャン・ハンユー演じる実在のスパイが最高にかっこいい。京劇で知られる実話が基だが、なじみのない観客にはすっと入っていきづらいのと、ある程度のリアリズムが要求されるからここ最近のツイ・ハーク作品の魅力があらかじめ封じられてしまうのとが不安材料だったけど、相変わらずの抜群の画面構成力で魅せる魅せる。中盤の雪山での戦闘場面には西部劇的な「距離の美学」が貫かれ、理屈抜きに感動させられる。
いいように使われた果てに猛るアイス・キューブは広能、のらりくらりとN.W.A.を利用するマネージャーは山守など、なんだか「仁義なき戦い」を観ているような気に。それゆえに、まったくヒップホップに明るくないのに楽しめた。人気グループの興亡劇ではあるが、ストリートで生きてきた者たちの激情もガツンと描いて感傷的に終わらせていないのも良いし、F・ゲイリー・グレイならではの緩急自在なタッチも冴えに冴えている。ドープでイルなサグたちの姿にトノップした147分!
普段から、若返ったサム・ニールだと思っているデイン・デハーン。そのせいか、ジェームズ・ディーンには見えない。カメラマンで映画監督でもあるA・コービンが、後に不世出の俳優と名写真家となるふたりの邂逅に憧憬を抱いているのは強く伝わるし、その瞬間を俗っぽくせずピュアに完全再現したいのも理解できる。だが、ほんとに切り取っただけなので両者を知らぬ者には、この2週間がどれだけ凄いのかはわからない。だからといって変にBLっぽくされても困るし、難しいところ。
鶏トレーニングに「女は脚にくる」といった場面&台詞のオマージュもさることながら、改めて1作目のテーマを深く描こうとしたR・クーグラーの想いに泣いた。そして、控室~リングまでの移動、国内デビュー戦全ラウンドを長回しで捉えることで生み出される、尋常ならざる臨場感に燃えた。ロッキーからアドニスへ、スライからクーグラーへ。そんな継承の被りもタマらない。誰もが危惧しているだろうが、セコンドにクラバーが付いたドラゴの息子とアドニスが戦うなんて続篇はやめて。
ベースとなっている実話も小説も、その京劇版も知らないが、そこはツイ・ハーク。そんな輩も満足できる血沸き肉踊る娯楽作に仕上げてくれている。3D(日本公開は2D)だからと血飛沫、爆炎、弾丸、ナイフと、飛び出せるものはなんでも噴出させる姿勢は素晴らしいし、いまごろ「マトリックス」でお馴染みのバレットタイム風ショットを繰り出すのもなんだか愛おしい。人民解放軍万歳なムードが横溢していて〝赤み〟が強いが、大中みたいな中華雑貨店を覗いていると思えばなんとかなる。
くれぐれもヒップホップやラップ・ミュージシャンの伝記映画だと思って敬遠なさらないよう。これは音楽映画、黒人映画といったジャンル映画ではなく、80年代のL.A.の街を、いやアメリカを描いた映画だ。窺い知ることの出来ないアメリカの中の民族社会が眼前に露になる。あらゆるシーンに緊張感が漲っている。身体に震えを覚えるのはラップのリズムのせいではない。この種の音楽に不案内で、アイス・キューブを特異な風貌の脇役としてしか知らなかった私も、襟を正し息を呑んだ。
「エデンの東」を撮り終えたばかりの未だ無名のディーンが、ニコラス・レイのパーティで、写真家デニスと出会うシーンから始る。アメリカ映画のファンには、まさにたまらない瞬間だ。ピア・アンジェリ、ナタリー・ウッド、アーサー・キット、カザン、ワーナー社長、周囲を彩る人物には事欠かない。早世の天才が故郷イリノイでデニスと過したわずか数日の至福の時間がこの映画の全てだ。なんとも切ない。デハーンは芸術家の繊細さとカントリーボーイの不器用さを巧みに演じた。
前作「フルートベール駅にて」では警官による黒人青年射殺事件を取り上げたライアン・クーグラー監督なので、社会性の強い黒人映画かとの予測に反して、「ロッキー」のファンを満足させるウェルメイドなボクシング映画になっている。勿論、黒人の視点はしっかりと貫かれており、シリーズのやや古いスポ根的ヒロイズムに現代感覚が付与されている。ここ数年、スタローンが選ぶ役どころには違和感を感じるものが多かったが、脇に回りアクションシーンの一切無い今回はなかなか魅力的だ。
久しぶりにツイ・ハークのアクション映画を堪能した。昨今、本土との微妙な関係を反映した香港映画が多いが、本作は中国映画で主役は人民解放軍の戦士たちだ。とは言え、政治臭の全くない冒険活劇で、近年ハリウッドで撮ったものより、彼の真骨頂が発揮されている。太平洋戦争直後の中国北東部、圧倒的優勢の匪賊を相手に全篇雪上で繰広げられる戦闘シーンの数々は壮観。「ナバロンの要塞」「荒鷲の要塞」などアリステア・マクリーンの初期の名作を原作とする名画を思い出す。