パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
基本的に「からかう」という行為はたやすく暴力になると思っているので、原作はあまり好きではない。そこに愛情やフェティシズムが存在するかのように描くファンタジーとしての巧妙さを、別媒体に置換するのは極めて難しく、そんな企画に監督もキャストも納得ずくで参加したのかどうか。漫画『高木さん』『(元)高木さん』の間に位置するオリジナルストーリーという発想は良いが、自由度にも想像力にも欠け、ヒロインの「からかい上手感」が伝わってこないのも、企画に乗りきれていない証左か。
まるで折り込みチラシや企業パンフのまとめ動画を眺めているようだった(せめて観ながらポイ活できる仕様ならよかったのに)。別にその情報自体が悪いとは言わないが、何もかも売らんかな精神で凝り固められているので、たとえば橋爪功演じる旦那がいくら口が悪くても「死ぬ間際にそんなムダ金ばっかり使えるかい!」とは絶対言わない。いまの日本人の「怒らなさ」に乗っかったような作りに、暗い未来を見た。豪華出演陣の健在ぶりを眺めていれば、ファンはいくらか安心できようが……。
こういう悲惨な現実があること、負の構造から抜け出せない人間の痛みを伝えたいという意欲はこれでもかと伝わる入魂の力作である。ただ、もはや時代的に、問題提起だけでは足りない気もする。ソーシャルワーカー的な視点が作り手自身にもっとほしい。社会を変えたいという思いより、悲惨な現実を見せつけたいという熱量が上回っている感もある。また、不祥事を起こした人間の悔悛を描くより、週刊誌報道のケア不足に物申すのが先立ってしまうのは、まさに業界の問題点そのものでは。
「実話ベースのお涙頂戴もの」というイメージで甘く見てはいけない良作。日本人好みの『下町ロケット』的な熱血技術開発秘話と、常に哀歓を湛えた家族の年代記が並行して描かれる物語は、現実の悲劇に対して不謹慎な物言いだが、秀逸な構造である。それに対してオーソドックスに徹する演出の賢明さも好ましい。ただ、IABPバルーンカテーテルという名称を劇中であれだけ連呼するなら、もっと専門的ディテールを見せてもよかった。観客の知識欲も満たすことが作品の厚みになるのだから。
気になる相手の気を引くために、わざとからかったり、たわいないちょっかいを出したり。幼稚園児にもたまに見かける。そんな高木さんと、ターゲットにされたボクの10年越しのラブコメディ(?)で、舞台となる小豆島の穏やかな風景もボクの居場所にピッタリ。けれども似たような場面の似たようなやりとりが、中学時代を含めて何度も何度も繰り返され、すでに先が見えているだけに途中でダレてくる。主役の二人が、彼らが教える中学校の生徒たちとあまり違いを感じさせないのは、わざとなのかしらん。
生きていれば人は誰でも歳をとる。「終活」に“お”をつけて軽みを持たせたこのシリーズ、今回も生前整理、葬儀の段取り、認知症の認定テストなど、シニア世代向きの実用的な情報を盛り込んでいるが、どの人物のどのエピソードにも笑いを忍ばせた脚本・演出はノリもよく、深刻にはならない。特に痛快なのは、前回同様、行動的で好奇心いっぱいの専業主婦役・高畑淳子と、彼女の掌でムダにぶつくさ言っている夫・橋爪功とのやりとり。実にお似合いだ。高畑淳子が歌うシャンソンも様になっている。
コロナ禍での実話をべースにしたそうだが、主人公・杏の生活環境が、昨年の秀作「市子」とかなり類似しているのはあくまでも偶然だろう。団地住まい。無職で男出入りの激しい母親。寝たきりの家族。市子は巧みにそんな環境から逃げ出して自分の人生を生きようとしていたが、杏はそこまで強くない。家族の生活費は杏が売春で稼ぎ、しかも杏はシャブ中。そんな杏がある警官に出会い自立の道を歩み出すのだが。入江監督のリアルに徹した演出と、河合優実の心身を投げ出したような演技は痛ましくも力強い。
かつてのNHKの看板ドキュメンタリー『プロジェクトX 挑戦者たち』が、『新プロジェクトX~』としてこの4月から復活したが、本作はさしずめ“プロジェクトX“の個人版。町工場の経営者が、心臓に疾患のある娘のために、自ら時間と資金を注ぎこんで医療器具の開発に挑み、やがて多くの命を救う器具を完成するまで。むろんその過程で大学の研究者や専門家なども関わり、具体的な器具がいくつも作られる。主人公の飽くなき探究心と家族愛には頭が下がるが、大泉洋の見え見えの熱演が煩くも。ごめん。
原作もアニメも未読につき、10年後を描いた脚色の妙を実感できなかったのは残念だが、〈からかう〉は〈弄る〉ではないことを示す作劇は悪くない。終盤の長回しなどに今泉力哉らしさは感じるものの、人工甘味料のような味わいになってしまうのは、オリジナルと原作ものとの違いか、あるいは口を出す者の多寡かとも思うが、そうでなければ性を排したプラトニックな描写で引っ張ることはできまい。しかし、江口洋介みたいに教え子が同僚になっても生徒扱いを続ける学校は嫌だ。
慌てて前作も観た不勉強な観客としては、続篇を期待する観客に水を差す気はないが、これだけのキャストを揃えて、こんなに緩くて良いのかと呆気に取られ続けた2時間を過ごす。後期伊丹映画が顔の知られたタレントを入れつつ、ハウツー映画の極北へ向かったことを思えば、そうした貪欲さは皆無と言って良い。こんなに芸達者なベテランを揃えれば、「九十歳。何がめでたい」を蹴散らす内容になったと思うだけに、大村崑のライザップぶりと、宮下順子の登場に喜んだのみでは寂しい。
コロナ禍に埋もれた実際の事件を掘り起こすのは良いとしても、現実の事件に対して虚構が追随するだけになっている。今や竹中直人と同枠の佐藤二朗のシリアスかつふざけた演技は虚構ならではの存在を持つはずだが、作者がどう捉えているのかわからず。河合優実が隣人の早見あかりから幼児を押し付けられる後半のフィクション部分は、早見の身勝手さと作者のご都合主義に呆れるのみ。好調の河合にしても、彼女ならこれくらいは演じられるだろうと思えてしまい、驚きがない。
冒頭でカテーテル開発をめぐる映画であることが明かされるので、人工心臓の開発に四苦八苦する前半に、いつカテーテル開発に切り替わるのかとやきもき。しかし、大泉の軽やかさが猪突猛進型のキャラを暑苦しくさせない。川栄、福本ら姉妹の関係性もさり気なく描かれ、押しつけがましい感動映画にならないよう慎重に計算されている。菅野美穂の吐息芝居が妙に引っかかった点を除けば流石は月川翔。70年代から現代へと時代性を程よく表出させた見せ方も大味にならず好感。