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007やヒッチコックをちりばめつつ、大枠が「ザ・ロストシティ」そっくりだなあと楽しく観ていたら、中盤で凄いひねりが。そこまでが楽しすぎたせいで、騙された気分で脱落する人も出そうだけれど、これを許容できれば後半も楽しい。赤毛とブロンドの2部構成自体、もしかしたら「めまい」の引用なのかも。主演二人が完全に対等な男女を演じて魅力的。これまでのマシュー・ヴォーン作品同様、人を選びそうな悪乗り気味のアクションが愉快。フィギュアスケートファンとネコ好きは観ると吉。
第1部は作品世界の説明だけで終わった感があるが、話もスペクタクルもほんとうに面白くなるのはここから。巨大砂虫と対決する重要シーンに興奮。熱愛する「ボーダーライン」のときは気づかなかったけれど、その後持ち上がった「もしやヴィルヌーヴはアクションが撮れないのでは」という不安が、今回少しだけ払拭されたかも。もちろんプロダクションデザインは今回も必見。「予言」に翻弄され、苦悩する主人公をティモシー・シャラメが熱演するほか、これでもかという豪華キャストにもびっくり。
プロットが穴だらけなのはひどいが、カンパニー内や友人同士の信頼の大切さと、「踊らずにいられない」表現者の思いの切実さを描いているのがとてもいい。心情を語るような歌詞の曲に合わせて主人公らがモダンバレエを踊るので、「フットルース」的な青春疑似ミュージカルの趣も。本物の実力者がそろっているからダンスはみな素晴らしく、クライマックスの公演シーンは、撮り方の成否はともかく、パウエル&プレスバーガーの名作と並んでも恥じないものをという作り手の気概を感じる。
20年以上前の傑作がデジタル・リマスターを機に劇場公開。出演してくれた証言者たちがいまでは全員鬼籍に入っていることを思うと、この作品の意義は一層大きくなる。彼らの人生には、当たり前だがひとつとして同じものはなく、事態を多面的に見せてくれると同時に、このほかにも膨大な数の人生が失われたことを思い知らされて愕然とする。ここで語られる事態が、自由と寛容の頂点というべきワイマール時代の直後に訪れたという恐ろしさ。「人々はすぐ無関心になる」という言葉の重さ。
スパイ小説の人気女性作家が謎の組織に狙われるという設定で、彼女の小説世界と現実が交錯する。「キングスマン」でもスパイ映画をひねっていたマシュー・ヴォーンは、今回さらにひねったメタ・スパイ映画に仕上げている。主演もスパイ大作に絶対抜擢されそうにないサム・ロックウェルとブライス・ダラス・ハワードというひねりよう。「キングスマン」で披露したVFX遊戯はさらに過剰になり、だんだん真面目に見ていることが馬鹿馬鹿しくなる。これで製作費200億と聞くとやれやれとしか言えない。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による同名SF小説映画化の続篇。ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポールが砂漠の民と共に反撃する。今回は少年ポールの成長譚という側面が強く、繊細華奢なシャラメとシリアスなヴィルヌーヴの化学反応が、壮大なSF大作に精緻な美学とシェイクスピア演劇のような格調高きドラマ性を導入することに成功した。至高の映画館体験をアップデートする、21世紀の超大作映画のベンチマークになる記念碑的傑作。
オーストラリアの若きバレエダンサーの物語。姉の事故死のショックに立ち直れずバレエを引退した少女が、バレエ学校で清掃員として働きながらも夢を捨てきれず、再びバレエに取り組む。ほとんどC級少女漫画のような設定で脚本は0点に近いのだが、実際にバレエをやっている人たちをキャストしているだけに、バレエ・シーンは見事。俳優たちがバレリーナを演じた「ブラック・スワン」と比較するとバレエ・シーンの迫力が段違い。いっそ物語パートを省いたヴァージョンを見たい。
ドイツで施行されていた同性愛を禁じる「刑法175条」を題材にしたドキュメンタリー。特にナチス支配下で男性同性愛者は激しく弾圧され、収容所に送られたという。そのわずかな生存者に迫る本作は、かなり高齢となったサバイバーの鮮烈な体験談を収める。ゲイ、ナチス、強制収容所と強い題材であるにもかかわらず、映画はあまり工夫のない淡白な出来。貴重な証言を世に伝えることが主眼であれば、映像よりもノンフィクション小説に仕上げたほうが良かったのでは。
謎が謎のままである前半は楽しめるものの、主人公の過去が明かされてからは、その設定が中途半端なのでヤキモキする。主演のブライスは前半の鈍臭さからの変貌ぶりが見ものだが、終盤に向かって加速するアクションに身体が追いついていない印象。突然スケートが始まったりと、奇を衒ったド派手なアクションシーンも随所に盛り込まれたギャグもあざとすぎて不発で終わっている。ギミックが無駄に多すぎるし、莫大な製作費の割に全体的にチープな作り。デュア・リパをもっと見たかった。
この手の叙事詩はどれも似たようなものだろうと高を括っていたが、緻密なアートディレクション、ハイレベルなVFX、類をみない世界観に終始目を奪われた。人物の心の機微も丁寧に掬いとっており、主人公ポールが心に従うか運命に従うかで葛藤し、カリスマ指導者へと変貌していく過程は見応えがあった。演じるシャラメはますます覚醒。モノクロの使い方も良い。宗教、権力闘争、資源枯渇など普遍的な問題がちりばめられた重層的なストーリーなので、パート1を見てからの鑑賞がおすすめ。
トラウマと向き合い、自己表現を追求する物語は胸を打たれるものだが、本作は肉親の喪失や友人とのすれ違いが深く掘り下げられないまま、既視感満載なエピソードが次から次へと積み重なってゆくので、感情移入しにくい。現代的な側面を強調したいという意図のもと、クラシック音楽の合間に頻繁に流されるポップソングは、人物の感情に表層的に寄り添っているだけだ。とはいえ、バレリーナでもある主演のドハーティは憂いを帯びた表情が美しく、そのしなやかな筋肉のキレには息をのむ。
ナチが同性愛者を迫害していたという事実をはじめて知った。壮絶な過去を持つ人間が数十年後にその体験を語ってほしいと言われても、そう簡単には語れないだろう。言葉をつまらせ涙を浮かべながら明かされる、彼らが受けた拷問や人体実験の数々。語りたい/語りたくない想いの狭間で引き裂かれる彼らの苦悩と、聞くことを躊躇する若い聞き手の葛藤。歴史を掘り返す双方の勇気が描かれていた。「人間はすぐに無関心になる」という劇中の言葉は真実だけれど、それに抗おうとする真摯な映画。