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前作とは比べものにならないくらい面白かった。そりゃあ井上監督自身の青春時代を描いてもいるのだから、記憶も鮮明で生き生きとしているし、実在の人物描写にも遠慮がない。何より半分コメディであるところが楽しく、それぞれに苦い現実と格闘する人々の悲哀を引き立たせてもいる。若松孝二監督の「微妙な時期」を伝えるドラマも興味深く、シネマスコーレ誕生記としても貴重。井浦新扮する若松監督はもはや寅さんのようで、いくらでもシリーズ化可能だ。次はぜひ90年代篇を!
部屋の間取りという無機質な平面図から立ち上がる、不可解な禍々しさを描いた前半は本気で怖い。森田芳光作品みたいな佐藤二朗のエキセントリックな芝居もすこぶる楽しい。ただ、幽霊は出さないというシバリのせいか(それはそれで心意気や良し)、後半はデタラメな因習ホラーになり、悪ふざけに走るのが残念。ご都合主義的な「展開のための展開」が重なりすぎると、遊びに付き合う意欲もなくす。根岸季衣の大暴走もちともったいなく、もう少し丁寧に作ってもバチは当たらないと思った。
あられもないビジュアルで子どもに大人気のキャラクターだが、見た目ほど品のないギャグは少ないので親御さんは安心して家族で観に行ってほしい。むしろ節操のなさでは「劇場版 SPY×FAMILY CODE:White」のほうが遙かに上だった。密偵アクション風のストーリーはたわいもないものだが、終幕には大画面にふさわしく特大の一発を浴びせてくれる。りんたろう監督版「メトロポリス」の超巨大ビルと「スチームボーイ」のエフェクト作画が合体したようなクライマックスは一見の価値あり。
今の世の中で「生きづらさ」と「解放」を描くなら、こういう話じゃなくない?という違和感が拭えず。恋愛や結婚に生きづらさを覚えている主人公たちがいて、しかし映画としては恋愛成就を帰結とするジャンルムービーなので、矛盾は当然生じる。その矛盾を突破するべきドラマに、強度も説得力も感じられない。彼らが完全に恋愛から解放される瞬間がないからだろうか。後半の展開はホラー映画にも転用できそうで、介護職員の人材不足という問題は痛いほど伝わる内容ではある。
正直に言えば、ここで描かれているあれこれの実話は、わざわざ映画にするまでもない極私的な回想録である。いったい誰が監督/脚本・井上淳一の若き日の葛藤を知りたい? 誰が名古屋のミニシアター支配人の人生を覗いてみたい? そして人騒がせな仕掛人、若松孝二監督のこととか。いくら80年代という時代がポイントだとはいえ、しょせん“映画”という井の中に足を掬われた蛙たちが飛んだり跳ねたりしているに過ぎない。と思いつつ、この作品の一途さに嫉妬を感じ、どうしたアタシ。
YouTubeで話題になった動画の映画化だそうで、試写時に渡された作品資料の中に、その動画のQRコードがあり、つい観てしまった。シンプルなだけに動画の方が想像力を掻き立てその間取りまで点検したり。が映画版はクセのある人物たちや、不可解なエピソードを盛り込み過ぎて何が何やら、途中で飽きてくる。“この家は殺人のための殺人代行の家だ”なんて台詞があるが、政治やスパイ絡みのミステリじゃあるまいし。監督は『世にも奇妙な物語』の演出家、本作もその路線に近い。
子どもたちに人気というこのアニメを観たのは今回が初めてだが、かなり感心した。人間や動物たちが混在するキャラクターは確かに児童向きだが、どうしてどうして大人でも楽しめる。まぁ当然だろう。テレビアニメと違って児童が劇場版を観に行く場合、大人同伴も少なくない。とあればキャラはともかく雑なドラマは許されない。そもそも“さらば愛しき相棒よ”というサブタイトルからして大人向き。お尻顔の探偵が、隠し球というか、黄色の切り札!を乱発しない節度にも感心する。
失うのが怖くて愛に臆病な恋人たちの10年越しの因縁メロドラマだが、国内ロケでも辺鄙な場所を選べば十分通用する話を、わざわざ異国の絶景でロケ、いやその絶景は確かに素晴らしいが、だからといって話が広がるわけでもない。原作者の川村元気としては、恋愛や結婚にいまいち消極的だという世代の一面を描いたのだろうが、未練と感傷の遠回り、君たち、本気で愛したの? いつもテキパキ颯爽とした長澤まさみが、獣医役はともかく、こんな曖昧な行動をするのもいかにも嘘っぽい。
若松孝二が映画館を作り、支配人と共闘するシネマスコーレ・パラダイスが観たいのであって井上淳一の自伝が観たいわけではない。終盤も蛇足でしかない。井上監督も承知だろう。だが、それでも自らを劇中に投入することでしか映画にならないと見極めたことが出色の青春映画を生んだ。若き日の自身を醒めた目で描く筆致は若松や映画との距離を描く際にも発揮される。小さな映画だが、シネマスコーレを活用し、井浦&東出、杉田&芋生が大きな存在感を見せることで豊かな広がりを見せる。
YouTube特有の面白さが映画にできるかと訝しみながら観ると、見事に怪奇伝記ミステリへと拡張されている。間取りを自在に作り出す映画ならではの美術セットが駆使されるだけに、実は映画との相性が良かったことに気づく。石坂浩二も登場する後半はまさかの横溝正史的世界へ突入。謎解き役・佐藤二朗の四角い顔が渥美清に似ていることもあり、いっそう松竹版「八つ墓村」へ接近していく予想外の展開を愉しむ。登場と同時に川栄であることを忘却させる薄幸のヒロインも印象的。
1歳の息子とTV版を見ているため、本欄で担当するアニメとしては珍しく(失礼!)予備知識があった本作。もっとも昔の相棒との馴れ初めが発端になるため一見さんでも問題なし。中心となる元相棒との再会と、贋作絵画すり替え事件の顚末も目新しさはないが飽きさせない。陰のあるキンモク先生を奥行きのある声の演技で聴かせた津田健次郎に引けを取らなかったのが、元相棒スイセン役の仲里依紗。声優としての出演作は少ないものの、その声を高く買う者としては今回の役は絶品。
手紙を読む森七菜の柔らかな声と共に、彼女がプラハ、アイスランドなど各地を歩く姿に瞠目する。まるで佐々木昭一郎のドラマを観ているかのような美しさに魅せられたからだ。都内の何気ない風景も繊細に映し出し、中島歩、河合優実を脇に配した配役も申し分ない。映像技巧に走らず、じっくり芝居を捉えるのも好感を持って観ていたが、失踪していた長澤まさみの謎が明かされると、単に自分がすっきりしたいだけの自己満足的行動かつ、ストーカーめいた真似をしているので白けてしまう。