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この監督の「パディントン」シリーズを熱愛する者としては、やや優等生気味な作品に感じて物足りなくも思うけど、楽曲と振り付けのチャーミングさだけに頼らず、撮影と編集でも映画を踊らせるのはやはりさすが。撮影監督はパク・チャヌク組の人、美術監督はクリストファー・ノーラン組の人という、豪華布陣のスタッフワークも見どころ。SNLで物議をかもしたT・シャラメだが、この作品での彼はキャリア史上最高級と言っていい出来栄え。H・グラントのウンパルンパは反則級の可笑しさ。
ケータイもネットもあるけどほとんど使われず、テレビすら誰も見ておらず、年代物のラジオからウクライナ侵攻のニュースが流れつづける。まるで時空がねじれたかのようだが、ここには第二次世界大戦時のフィンランド国内の雰囲気(特に対ソ感情)が重ねられているのかも。いつにもまして強いシネフィル風味は、(映画)愛だけが暴力に対抗しうると言っているかのようでもあり、単なる趣味の爆発のようでもあり。チャイコフスキーの6番と、雨の窓辺のヒロインのショットに陶然とする。
主人公を特定しない複眼的な語りだからわかりやすくはないが、撮影と編集がハイレベルで見ごたえ大。仏人監督を筆頭とするスタッフは多国籍、キャストは全員UAEの俳優。個人的には「中東で最も豊かで文化が欧米に近い国」ぐらいのイメージしかなかったUAEが、人の顔を持つ国として一気に身近に感じられ、〈映画〉は本質的にコスモポリタンなものだとあらためて感じ入ったのだが、それとは無関係に現実の紛争はなお続いているやりきれなさを、ラストシーンは伝えているようでもある。
主人公が最初に勤める娼館が暗く非人間的な空間として描かれるのに対し、「ラ・メゾン」はまるで女たちの楽園のようだ。プロである娼婦たちは自己決定権を持ち、本名も知らぬまま互いに助け合う。けれどもそれは、そこがあくまで虚構を演じる世界であるからだ。なぜ彼女たちがそこへ来たのかわたしたちは知ることがなく、いったん暴力が乱入すれば、楽園の幻想などあっけなく崩壊してしまう。性の非対称性をめぐる古くからの論争は、この挑戦的な作品でもやはり解決されることはない。
ロアルド・ダールの児童文学『チャーリーとチョコレート工場』に登場する菓子職人ウィリー・ウォンカ。若き日の彼が自身のチョコレート工場を作るまでを描くファンタジー。主演がティモシー・シャラメ、共演がオリヴィア・コールマン、サリー・ホーキンスとシネフィルにはたまらない顔ぶれなのだが、ティム・バートン監督作ジョニー・デップ主演の「チャーリー〜」と比較すると、イメージや演技に「跳び」のない凡庸な出来。小人ウンパルンパを演じたヒュー・グラントの「小人でもヒュー様」な演技に星ひとつ追加。
アキ・カウリスマキ監督6年ぶりの新作。ヘルシンキの街で仕事を失った女と酒に溺れる男が出会い、惹かれ合うが物事はうまく進まない。ラジオはウクライナ戦争のニュースを絶え間なく流し、女も男も工場や建設現場の過酷な仕事を日々の糧にする。そのような天国とは遠い場所に身を置きながら、いかにロマンを持ち続けるか。カウリスマキはますます洗練されたユーモアとメロウネスを持って、辺境の街から普遍的ロマンスを描き続ける。精緻な色彩設計による映像美も特筆すべき。
2018年のイエメン内戦時の実話を基にしたミリタリー・アクション。治安維持のため派遣されたUAE(アラブ首長国連邦)軍がパトロール中に渓谷でゲリラに待ち伏せされる。先発隊が急襲され、彼らを救おうと向かった後発隊も待ち伏せされ、泥沼の戦いに。「96時間」で知られる仏監督ピエール・モレルの技術が活きる大迫力の戦闘シーンが白眉。しかし製作がUAEの会社で、死亡した兵士の「威厳ある移送」シーンがUAEのプロパガンダになっていることに興醒め。
フランスからベルリンに移り住んだ女流小説家がネタ探しとして高級娼館で働いた実話を基にした原作の映画化。極めて魅力的な題材に思えるが、主人公は自分が何を求めているのかはっきりしないため、映画も文芸性とポルノ性の間で揺れ動く。数多くの濡れ場を演じるアナ・ジラルドは惜しげもなくすべてをスクリーンにさらけ出すが、娼婦の同僚からも見透かされるように常に冷静で「我が心ここにあらず」な視点を維持し続ける。半端な客観性が本作をフラットな体験談実写版に留めていることが惜しい。
ティム・バートンのクセも毒気も強い世界観が好きな人間はどうしても比較してしまうが、本作は万人受けを狙う王道なミュージカル映画。天才チョコレート職人ウォンカのピュアな子供心と、ウォンカを陥れる悪意の対決は終始安心して見ていられる分かりやすさで、子供たちにもぜひおすすめしたい。ティモシー・シャラメがジョニー・デップに引きずられることなく実に素直にウォンカを演じていて、イノセントな美しさを放っている。ヒュー・グラント扮するウンパルンパは出色の面白さ。
ウクライナ侵攻のラジオをBGMに繰り広げられる、不器用な中年男女のすれ違いと再会。依然として、カウリスマキの無駄を削ぎ落とした演出が研ぎ澄まされており、極めてシンプルな物語を崇高な次元へと昇華させている。日常のささやかな幸せを大切に紡いでゆけば、戦争なんてなくせるかもしれないと本気で思えてくる、祈りのような作品だった。思いやりとユーモアに満ちたラストシーンを思い返すたびに胸が熱くなる。カウリスマキの透徹したまなざしによって生み出された、珠玉の一作。
UAE映画を見るのはおそらく初めてだが、よくあるハリウッドの戦争映画の様相を最初から最後まで貫いていた。アメリカ人が他民族に入れ替わっただけで何の特徴も見出せず。主演が誰であるのか曖昧な上に人物の掘り下げも浅いので、誰にも感情移入できない。ひっきりなしに続く戦闘シーンも似たような状況の繰り返し。戦死した兵士が英雄として讃えられる演出、感動を促す音楽など、戦争賛美にしか思えず、嫌悪感と虚しさが増すばかり。この類のプロパガンダ映画には辟易してしまう。
内容的にも性描写の多さからしても衝撃作である事は間違いないだろう。難題に挑戦した心意気は称えつつも、エマがなぜ娼婦として2年間も働いたのか、どんな過去がその衝動に導いているのか、空虚さや欲望がどこから来るのか、エマの内部が窺い知れず終始戸惑う。そのほかのキャラクターも上っ面しか描かれないので魅力を感じられない。売春で自分自身を試し、「女性の解放」や「自己受容」を目指すのはあまりにも安易だし時代遅れではないか。複雑な問題を曖昧に誤魔化している。