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やさぐれわんこの逆襲をコミカルに綴ったブラックコメディだが、飼い主の虐待を愛情と信じて疑わない捨て犬の主張は、人間の児童におけるそれの構造と酷似しており、笑ってしまうほどに胸が痛んだりもする。アメリカ式のコテコテなユーモアのノリも、主体のビジュアルが犬であるからこそ見え方に変化がつき、人間を主語にしないことで語れるものがまだまだあるという可能性を実感する体験。欲を言えば小ネタ的に挿入される猟奇殺人鬼の飼い犬のアナザーストーリーも観たかった。
「バーニング」でデビューしたチョン・ジョンソは、猟奇的な怪演で度肝を抜いた「ザ・コール」の監督との再タッグで「バレリーナ」(Netflix)を発表したが、私生活でもパートナーであるイ・チュンヒョン監督はジョンソのハードな面ばかりを強調。モナ・リザもその延長線上にあるが、アメリカに生きるアジア系女性がシングルマザーとその子供を巻き込む、弱き者たちのしたたかな共犯関係を描いたアナ・リリ・アミルプール監督の魔術的な演出がポップで痛快。
同性愛者であると知られることは社会的な死に値した80年代シチリア島の時代劇。よくも悪くもクラシックな作劇と演出であり、眩しい太陽と美しくも儚い花火の光に彩られた少年たちの描写は、イノセンスへのロマンチシズムに溢れていて、若さゆえの刹那を含め、その顚末は是枝裕和監督の「怪物」を想起させる。自分たちの価値観が正しいと信じて疑わない、ステレオタイプな父親や叔父の対応に反し、少年たちの双方の母親が示す葛藤とその発露に、当事者以上のきめ細かさが滲む。
同じ空間を共有しながら別々の時間を生きる夫婦。人生の終わりに向かう日々を、複数の監視カメラ映像をスイッチングしつつモニタリングするようにつないでいく構成は、悲劇と呼ぶにはあまりにも写実的で等身大。そこにあるのは否応なく流れる時間の静かな暴力性だ。しかしすべてが終わったと見えたとき、エンドロールからの始まりを思い出して、時系列を逆にした「アレックス」の「時はすべてを破壊する」という言葉にたどり着き、時間に抵抗するノエの執着を思い知るのである。
可愛いワンちゃんたちが口を開けばオチンポ様とかウンチとか聞くに耐えない下ネタを言う。わざと言う犬もいるが、犬は他の犬の肛門の臭いや排泄物や吐瀉物が好物なので真顔でも言う(犬の真顔とは?)。人間もウンチまみれ、キノコ食ってラリった犬の視界もごきげんだが、飼い主との悲しい関係は人間同士の共依存のメタファー。こういう映画大好き。吹き替え日本語版で牝犬を演じたマギーの声もよかった。てっきり犬は全部CGだと思って観てたら、リアル犬による演技だったと知ってびっくり。
口ずさみたくなるロックの歌詞をそのまま脚本にしたみたいな映画。「寡黙で神秘的な東洋娘」とか「よい黒人」とかは類型なんだが、新しいことは特に何もやってないんだが、とにかく人の顔がいい。チョン・ジョンソの顔を見てるだけで最高だし、脇役も子役も全員いい。お金かけてないのに画ヅラもいい。あと、いかにもなストーリーだったのに人が一人も死んでない。これはなにげにすばらしいことではなかろうか。こういうのでいいんだよ、こういうので。ていうか、こういうのがいいんだよ。
僕は美少年は大好物なんですけど、本作は無難に美少年と美少年が愛しあうのを小エロく描いといて最後に二人は差別に殺されて悲しくも美しかったですね、じゃ済まなかった。最初ゲイの子をいじめてた不良どものホモソーシャルは、ひどい差別をしながら同時に発情もしてることが描かれ、主人公を愛情で包んでいた家族や親戚たちが同性愛をマジで忌み嫌ってるのを終盤で目にした不良たちはドン引き。「正しさ」と世間の常識と普通の宗教と家族愛が地獄であるという、重い傑作。
とてもつらい映画。頭が曖昧になって、いろんなことが次第にわからなくなっていくのに体は達者なのは本当にさみしい。頭がハッキリしてるのに体の自由が利かなくなっていくのもさみしい。がんこになるのもさみしいし醜い。むこうも中年になった昔からの愛人に、相手にされなくなるのも実にみじめ。過去の偉そうな仕事の実績が老いた自分を救ってくれるわけじゃないのもみじめ。いずれ老いゆく者、つまり現代の我々全員にとって必見の映画だと思ったが、あまりにもつらすぎて星は2つ。
想像以上に下品で気分が悪くなりそう。下ネタのオンパレードで、「テッド」の製作チームによるものというのもむべなるかな。自分が飼い主に嫌われていると気づいておらず、しかしそれがわかった途端、恐ろしい復讐に燃え立つ主人公の犬が可愛いが、原語のアテレコはウィル・フェレル。アメリカンコメディ界は人材がくすぶっていて、時が止まって感じる。実写とCGの技術が高く犬の表情がナチュラルで、その天然性によって観ていられるし、犬の感情が感じられる編集は良かった。
韓国人俳優チョン・ジョンソが良い。気の強さと無垢であることが無言で同居し、クールな表情をしていてもチャーミング。「ハスラーズ」のような女同士の連帯は、私欲の前では吹き飛ぶが、母に代わる飛行場での子どものシークエンスは、チケットの名前から自己犠牲まですべていとおしく完璧。モナが何者かわからず、人を操る超能力ゆえに、精神病院に12年も入っていた経験は重い。だからこそTシャツ1枚の違いで楽しい。彼女の新たな人生の始まる赤い月夜のフライトはワクワクする。
シチリアの風光明媚さがかき消されるほどの、同性愛者への差別。世界中で映画はLGBTQに対する嫌悪や差別を露わにする人々を描き続け、同性愛の映画の中でも〈迫害〉はもはや一ジャンルを成すだろう。同性愛嫌悪と女性差別はセットになっていることも多く、シチリアも男がのさばってきた歴史がある。本作も差別主義者とは断絶があり、同性愛者を毛嫌いする人を説得するのは難しいという諦念に囚われる。ただし映画の出来不出来はまた別の話で、銃声だけで処理したラストは端折りすぎではないか?
ノエは時折ひどく切ない愛の映画を撮る。恋愛で相手を深く愛する者は、裏切られた時の心の痛みが尋常ではない。正気ではいられないくらいに傷を負う。本作はスプリットスクリーンで、夫のアルジェントがいまだに浮気をして、他の女性に依存している様子を写す。かたや妻のルブランは認知症が進行して徘徊や不始末を起こす。だが夫の大事な原稿を流すのは意図的だろう。彼女は憎悪するほどにまだ愛がある。ノエはまた、彼らの息子を麻薬の売人にし、愛の結晶も負け犬な人間に育つ現実的な苦みを描く。