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素材が提供されなかったため本篇との関わりについては言及できないが、通常メイキングであれば削ってしまうようなスタッフとの軋轢や議論、さらには撮影終了後の当局からの検閲との闘いといった要素が生々しく記録されており、中国の映画制作の現状に関する資料としても非常に興味深い。国内での上映を諦めるか体制に迎合するかの二択しか許されないように見える中国映画界にあって、タフな交渉を厭わず作家性を押し出した作品を国内で公開し続けようとする試みの貴重さが伝わる。
とても新作には見えないアニメの絵柄には明らかに改善の余地があるように思われるが、日本以上に加熱している韓国での受験戦争というキャッチーな要素をまぶしつつ、ホラーとラブコメを思わぬ形で結びつける設定は抜群に面白い。貞子や口裂け女にギャグの小ネタとしてオマージュが捧げられている点も、近年のJホラーにもみられるコミカルな演出として目をひくし、枠組が荒唐無稽な分だけ、内容はむしろベタすぎるほどにベタに振る判断も、個人的にはうまくいっているように感じた。
その点について作品自体に罪はないのだが、ロックダウン生活をめぐる予見的な細部の大半が、コロナ禍後に見るとかえって陳腐で安直な演出のようにも見えてしまった。また、撮影やリズムの単調さはあえて選ばれた戦略であったとしても、ほぼ全篇が室内で展開する作品にあっては、あまり機能しているとは思えず。ただ、息子の雲への向き合い方は未来予測として非常に考えさせられるし、カップルそれぞれのリモート浮気を描いた場面は、ユーモアとペーソスの配分が絶妙で大いに笑った。
ワンシチュエーションでここまで押すならもう少し短くするべきだったとは思うものの、随所に工夫の跡がうかがえる意欲作であることは間違いない。ドローン、スマホ、自撮り棒といった現代的なガジェットを有効に活用しながらも、同時にきわめて限定された空間を舞台に、上昇と落下というシンプル極まりないアクションだけで何ができるかという古典的ともいえる問いをストイックに追求している。文字通り手に汗を握るスリルを味わえる、私のような高所が苦手な人間には恐すぎる一本。
ロウ・イエ監督の映画作りを通して見えてくる、中国での映画作りの困難さや表現の自由に対する検閲との闘いの記録。しかしその過酷さをきちんと捉えられているかは少々疑問。なにより検閲について、ロウ・イエ監督自身「最も手ごわい仕事」と評しているにもかかわらず、本作は検閲との闘いを数シーン描いただけで終わりする。検閲との闘いは文面のやりとりばかりで画にならないから省略されたのか。もしそうだとすればその態度はロウ・イエ監督の映画からとても遠いものだろう。
見習い幽霊と霊感だけは強い青年との間でなされる、超常現象を題材としたラブコメディだが、徐々に惹かれ合う二人やライバルの妨害など、新鮮味のないベタな展開ばかりで、ラブコメ映画としてはありきたりな通常現象という印象。ただ、ベタな展開だからつまらないかと言えばそうではなく、むしろお決まりの展開をそれはそれで楽しめるのがラブコメ映画の大きな魅力だろう。そういう意味では本作も十分に楽しめるかもしれない。ただ他にもたくさん傑作ラブコメはある気はするけれど。
何年間も外に一歩も出られないという極限状態を描く映画ならば、私は思いもよらない、見たこともない世界を見たい。しかし本作は、このような状況ならば、彼らのような感情や関係性になるのだろうと思わせることばかりだ。それは人間描写が丁寧で、登場人物たちに共感できると言えるかもしれないが、私にはあまりにも常識的に映った。あるいはもっともっと絶望的に退屈な映画にするという手もあったかもしれないが、それにしては良心的に面白く仕上がってしまっている。
遠景ショットでは緊張感が弱くなる点は惜しいが、落下のスリルだけで映画を撮り切ろうとする姿勢は好感が持てる。超高層鉄塔の頂上という限られた水平方向のスペースと、どこまでも落ちていける垂直方向の空間の妙も単純でありながら面白い。ただし、誰が見てもツッコみたくなるあり得ない行為を描きつつ、それに対して映画自らがつまらないオチをつけてしまうのはもったいない気もした。臨場感を売りにする本作にあって、あり得なさと真実味のバランスは極めて重要なはずだから。
闘う映画人、ロウ・イエが自作を世に送るまでの長い長い道のりを、共同脚本家でもある妻が程よい距離から見つめる。洗村でのロケの難航、小道具の手違い、俳優の負傷、弁当足りなくなっちゃった問題など、トラブルの大波小波が打ち寄せる様は、時におかしく、時に痛切。さらに、その先に待ち受ける厳しすぎる検閲の壁――。ロウ・イエの頑ななまでの熱と執着、究極的な愛と使命がなければ、これまでの作品は存在しなかった。喜怒哀楽が色濃く渦巻く映画作りは、まさに人生の縮図だ。
過去に制作された修了作品が今、日本で特集上映されるとはさすが、俊英を輩出してきた韓国映画アカデミー。序盤こそ脱力度100%の作画とパンマル(ため口)も若々しい台詞の応酬にやや面食らったが、その素朴さが観る者をいつしかぐいぐい惹きつけてゆく不思議なチャーム溢るる快作。スター幽霊の貞子アリ、オーディションを審査するJYP&ヤン社長アリのパロディを筆頭に、細かいところでくすぐり倒すセンスが憎い。キャラと会話で魅せる脚本の盤石さに、原石の輝きを見た。
監督がブニュエルの「皆殺しの天使」を意識したと語るように、あくまであり得ない状況下に突如置かれた人々の心のざわめきを綴る不条理劇……だったはずが、皮肉にも現実が映画に追いつき、そして追い抜いた。結果、ピンクの雲に込めたフェミニズム的な比喩も、浮き彫りになる男女の価値観の相違も、そもそもロックダウンが人に及ぼす心理的影響も、本来の仕上がり以上に曖昧でピントを大きく外した印象に。後に残る監督の若さと狙いを昇華し切れぬもやもやは、また別の話だが。
大海原に取り残される「オープン・ウォーター」やスキー場のリフトで極寒と闘う「フローズン」など局所的パニック映画の系譜を継いだ高所恐怖ムービー。従来の要素にユーチューバーの無謀さや、身を助けも滅ぼしもするSNSの功罪、最新機器としてのドローンなど現代的あれこれを盛り込み、細かな伏線を逐一回収する脚本は見事。ヒヤヒヤさせる演出も巧みで、比喩でなく手に汗握った。ただ、開きっぱなしの胸元以上に、彼女たちの複雑な関係や心情にこそ深く迫ってほしかった気も。