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作品評とは関係のないところに存在する映画がある。例えば千葉真一のカラテ映画のような。本作然り。小沢仁志60歳の肉弾戦。「ベイビーわるきゅーれ」のスピード感はそこにはない。でも肉体は確かに存在している。それって映画にとって重要なことでは。唯一の不満はもっと小沢に特化した映画でも良かったのではないかということ。小沢さんの気遣いが全方位に及び、それが逆に話の弱さを露呈させている。小沢さん、還暦おめでとうございます。今度は一人称映画をやりませんか。一緒に。
雰囲気だけの映画というか。弟分を地震で亡くし、その喪失から立ち直れない半グレが、弟分に似た相棒と出会い、立ち直っていく話だと思うが、亡くしたのが弟分なのかも地震が原因なのかも半グレ組織もよく分からない。致命的なのは主人公がなぜ相棒を受け入れるか分からないところ。ここがすべての起点なのに。せっかく名のない役者だけで映画を作るなら、「竜二」のような一発逆転を目指さないと。これじゃ埋もれてしまうだけ。クドいようだが、まず脚本をちゃんと。髙橋雄祐がいい。
今年は高齢者の性愛をやろうと思っていたら、こんな映画が出てきてしまった。芝居もでき絡みもやれる高齢の俳優をこれだけ集めるのは大変だったと思う。高齢者による高齢者への売春という目の付けどころもいい。ただどこかスケッチの感が拭えない。高齢者の孤独も若者の空虚も点描としては丁寧に描かれるが、それがドラマになる前に事件が起こり、人間は所詮身勝手という世界観に回収され、問題提起しか残らない。傑作になり得ただけに残念。ずっと気になっていた岡本玲、ついに開花。
児童虐待が本当に赦せない。それを描いた映画も極力観たくないし、その重さを凌駕するだけの覚悟を持った映画もあまり観たことがない。だから本作には驚いた。虐待母と娘と対を成す、地下アイドル娘とシングルマザー。娘もまた未婚の母の道を選ぶ。この置き方には唸った。これによって、家族という枠など最初から必要ない、それでも残る親子という厄介さにどう向き合うかというテーマが明快に浮かび上がる。この脚本家と監督に早く仕事を頼んだ方がいい。あっという間に売れるはず。
「小沢仁志還暦記念作品」というノリがいい。市長候補も検事も刑事もみんな悪党とつるんでいるゴッサムシティみたいな都市で小沢が大暴れする。マフィアを殺した罪で服役中の元警部が秘密裏に仮釈放されたという設定で、特捜班を率いて市長候補の闇を暴く。そんな荒唐無稽な物語を生身のアクションで見せ切る。はぐれ者のアウトローをスタントなしで演じる小沢とVシネ俳優たちの不良性感度は健在で、勝ち目のなさそうな殴り込みも、悪党どもへの決め台詞も、さまになっている。
映像で語る力がある新人監督だと思った。弟分を亡くしたことが心の傷となっているチンピラが、どこか不思議な新しい弟分に少しずつ癒されていく。ところが……。そんないかにもありきたりな筋なのだけど、主人公の感情の振幅を具体的な身振りと風景によって的確にとらえている。抑え込んでいた激情のほとばしりも、忘れていた心の穏やかさを取り戻す瞬間も逃さない。新しい命に一縷の希望を見出すというステレオタイプの物語も許そうと思えるくらいの幸福感がある。
高齢者向けの売春クラブを若者たちによるコミュニティビジネスとして描くという大胆な発想に一本取られた。寄る辺ない高齢者たちの孤独も、斡旋する若者たちの閉塞感も実に生々しいのだ。女性起業家役の岡本玲が母親とのねじれた関係まで見事に演じている。老齢のコールガールたち、客たち一人ひとりの造型にも意を尽くしている。どちらの世代もステレオタイプの描写から逃れているから、芝居もスリリングだ。今の日本社会を如実に映し、結末の苦さが希望にも連なる。
この新人監督も非凡な演出力がある。虐待のトラウマをもつ主人公が押し殺している心の声を、幻覚としてつきまとう男に託す。いかれた母親への抑えられない思慕がその声を制する。そんな複雑な心理劇を3人の俳優の演技で見せ切ってしまう。画面も力強い。傷ついた女児が空のバスタブで怯えながら、母親のために誕生日の歌をうたう強烈なショットから始まって、ずっと目が離せない。脇筋の地下アイドルの話がいまひとつ本筋と嚙み合っておらず、図式的なのが残念。
長い俳優人生の中で玉石混交の脚本を読み込んできた経験も活かされたであろう小沢仁志の還暦を記念し、“任俠ものアベンジャーズ”さながらの超豪華キャストが集結。観る側も自ずと身体が動き、筋違いを起こしてしまいそうな渾身のアクションが惜しげもなく繰り出される中、「ベイビーわるきゅーれ」のアクション監督の作品だけに、紅一点の坂ノ上茜が、屈強な男どもにボコボコにされつつも這い上がる、新米刑事の躍進を力演。“最後の無茶”とは言わず、シリーズ化にも期待したい。
制作本数だけは膨大な業界で闇雲に出演を重ねても、俳優が代表作にめぐり逢うのは至難の業だろうが、三十路を目前に岐路に立つひとりの映画への情熱と執着が、ふたりの役者仲間にも飛び火して、三者にとっての重要作に結実した幸福な作品であるとは思う。ただ、ひとの生死にも関わる因果応報的な悲劇を、かなり強引にファンタジーへと落とし込んだことで、色々と未解決・不確定な要素が棚上げされたまま宙に舞うも、それを無視して唐突な大団円に突き進むのには、違和感を覚える。
老いらくの生と性に肩入れする一方、何かと訳あり風の若者連中のチームにまつわる描写が希薄なため、手のひら返しのごとき仕打ちに遭い、夢見た〝家族〟が幻想にすぎず、呆気なく崩壊してしまう絶望感に、いまひとつ切実さが乏しい。厳格で威圧的だった母親との確執などを通し、人道的には正しくても必ずしも正義とは限らないと疑問を呈してきたはずなのに、最後に取り調べを担当する婦警の説教まがいの正論が妙に説得力があるのも、作品としてはマイナスに働き、蛇足に思えた。
永田洋子役での怪演が未だ鮮烈な並木愛枝が、“毒親”以前の人間像に肉迫し、親子間の悶着とは、報道されるものは氷山の一角で、誰もが当事者になり得ると痛感させられる。娘の側も、そんな身勝手な母親を信じたい幼さと、おっさん姿だが分身のようでもある幻影が示唆する成熟が混在し、切っても切れない肉親の愛憎のせめぎ合いの行方に真実味をもたらす。二代にわたりシングルマザーの道を選ぶ地下アイドルとの絡みが、楽曲を売り出す以上の意味を成さぬように見えるのが難か。