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英国ウェールズ地方、谷あいの僻村の清涼な空気感がいい。組合組織の共同馬主というシステムは実話に基づくとのこと。競馬映画というのはフランク・キャプラの「其の夜の真心」が典型だが、走らせる側の経済事情をリアルに描き出して初めて面白くなる。本作ではそこに加えて馬主代表の主婦とその夫のぎくしゃくした関係が抜群。もちろん関係改善の過程がいいのだ。多幸感あふれるエンディング・クレジット、〈デライラ〉の大合唱も楽しい。歌手トム・ジョーンズはウェールズの誇り。
冒頭、エログロのつるべうち場面にめげるも、中身は正統的な青春SF特撮映画で狂喜する。少年主人公が健気。発想源が「エイリアン」と「アバター」というのは一瞬で分かるが、監督はロバート・A・ハインラインの明らかな信奉者。名作『人形使い』とか『宇宙の戦士』への敬意が感じられて評価が上がる。女の子にもてないラドゥ君の扱いは少し疑問だが、ラストで華を持たせているので大目に見たい。プロムパーティ、血みどろの惨劇というホラー青春映画の定番にも手間をかけている。
市街を実際に使用したカーチェイスがさすが韓国。日本ではこうはいかない。欠点はどこを切ってもどこかで見たような物語ということで、ぐっと点が落ちる。主人公ドライバーが脱北者というのが中盤から活用され、ここはグッド。悪役の正体も、意外じゃなきゃいけないのだがそうでもない。結構ある線で、脚本家の計算違いだ。最大の問題はやはり計算違いか、演出の調子がバラバラで今一つ乗れないこと。ユーモラスに行くか、あくまでダークに迫るか、どっちかにしてほしかった。
まず書いておくがプーチン治世“極悪”ロシアのルーツがここにある、という映画ではない。背景はもうちょっと複雑、ただし若き日のプーチンの姿は見られる。ソ連崩壊前後の混乱の一時期を8人のプロキャメラマンが街路に繰り出し記録したもの。価値は極めて高く必見作であるが、解説を読んでから鑑賞しないと意味が分からないというのは困るよ。この監督の映画を一本で判断するのは辛い。ご免なさい。日本には大内田圭弥「地下広場」という傑作“街路”ドキュメンタリーがある。
ムラ社会における「主婦」の鬱屈とした人生を、無関心な夫の態度、やり過ごすだけのパートタイムの仕事、親のケア労働などの描写の連なりによって開巻から伝えてゆくが、フェミニズム的な主題はそこまで広がりを見せない。あまりにトントン拍子にことが運んでゆく説話構造には、「実話である」というエクスキューズが予め用意されている。嫌味がなくウェルメイドな本作は観客に好かれるかもしれないが、ゆえに多くの類型の映画に埋没しやすく深く心に突き刺さるような作品ではない。
浜辺で性行為に耽溺する軽薄そうな男女のカップルが早々に犠牲者になってしまうオープニングをはじめとして、B級映画のクリシェの数々が詰め込まれている。終盤にかけて突如怪獣映画の様相を呈していくのにも驚きがあって飽きさせない。「グレムリン」など80年代あたりのこの手のジャンルの古典的名作へのオマージュ的な作品でもある本作は、「15歳の自分がビデオ屋さんで見つけて楽しくなれる映画」というベロルツハイマーの製作意図に鑑みれば十分な成果をあげているだろう。
女性アクション映画好きとしても最高峰と称していいほどすべてがハイレベルな一本。カーアクション自体も十分に魅せるが、そんな主軸であるダイナミックなアクションと同時に、少年がお漏らししたズボンをそっとカバンで隠すショットや、少年が母なのではと言う女性のタバコを持つ手の微かな揺れ動きを捉えたショットなど、細部までこまやかに作り込まれた繊細さを持つ映画でもある。終盤、主演のパク・ソダムの悲しみから怒りへの感情の変化を一瞬の表情で伝える芝居も素晴らしい。
映画でくどくどしく何度も挿入される「白鳥の湖」は、8月クーデターの最中テレビ局がニュースを報じる代わりにこのバレエを繰り返し流し続けていたことに由来するという。ドキュメンタリーは民主化に傾く市民たちが共産党保守によるクーデタに抵抗する様を物語る。ベンチと木箱のバリケード、カメラを訝しむ人々、雨のレニングラード、拳を突き上げる大衆、空に靡く新たな国旗。これらの精彩を湛える生々しいまでの現実に、そこに確かに存在した歴史に、目を見張らずにはいられない。
実話に基づいているためか、世界のやさしさに甘んじ、物語はつつがなく進んでいく。しかし演出は非常に丁寧で、フレームの中いっぱいに広がるウェールズの景色はただただ美しい。そこでは人と馬を中心にさまざまな動物がたしかに息づいていて、もはや今の世界に必要なのはこれだけなのではないかという気すらする。あとは「うまい」トニ・コレットとオーウェン・ティールの芝居に身を任せて、マニックスを歌うのが大好きで陽気な町人たちが愛情を交わすのを見ているだけでいい。
あざといタイトルからして、物事をあまりまじめに考えず、こんなものさえ楽しめる自分を楽しむ系のいわゆるトラッシュ・フィルムだろうと思って鑑賞したが、演出も美術も予想外に頑張っていた。カーハウスがあり、プロムがあり、というアメリカの郊外に広がるホワイト・トラッシュの日常を描いた現代映画として悪くない。車椅子生活の主人公少年と彼を支えるポジティブな女友達、掛け合いがなかなか決まっているバディ警官など、魅力的な人物さえ写っていれば映像は映画になるのだ。
同じく孤高の凄腕ドライバーが主人公であった「ドライヴ」や「TAXI」シリーズなどの影響を感じつつ、後半にかけての主人公と少年の擬似母子的関係性はカサヴェテスの「グロリア」を思い出した。カーアクションはハリウッド・クオリティに遠からずでなかなか見応えがあり、何よりも韓国の街には坂がある。サンフランシスコやローマを例に挙げるまでもなく、高低差のある街を舞台にしたカーアクションはいつだってスリリングで、われわれに映画的満足を保証してくれるのだ。
セルゲイ・ロズニツァによる匿名のアーカイヴ映像をカットアップして歴史的な事象を再現するシリーズ。ペレストロイカや昭和天皇崩御など、現代にも劣らぬ激動の時代の中、1991年にロシアでクーデターが起きたという報道は当時それほどなされなかった印象がある。興味深いのは、およそ30年前に撮影されたこれらの白黒映像を見ていると、これがプーチンが国民を欺き、自由を制限し、ウクライナに侵攻をつづけている現在のロシアの行く末を予見した映像のように見えてくることだ。