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低予算やゲリラ撮影ゆえの制限によって、画面のレベルで見ると弱い部分があるのは否めないし、やや甘口な脚本も賛否が分かれるところだろう。だが同時にそうした甘さは、ある意味で芸術としての完成度をある程度犠牲にしても、民主化デモを捉えたドキュメンタリーでは表現できない直球のメッセージを、あえて今劇映画で打ち出さねばならないという製作陣の切迫感や使命感と表裏一体のものでもあるはずだ。ベタさの裏に透けて見える覚悟に泣かされる一本。学生はぜひ観てほしい。
貧困、親の不在、ドラッグの蔓延といった、一見殺伐とした物語と結びつきそうな設定を用いつつも、攻撃性や差別とはまるで結びつかない陽性のユーモアのみで作品を成立させている点が現代的。憎めない人間味に溢れたバカたちが披露するドラッグ絡みの小ネタや振り切った下ネタには大いに笑ったが、あからさまに誰も傷つけない笑いとシスターフッドを押し出す姿勢には、流行の要素を押さえようとする小狡さも感じてしまい、個人的に抱いてきたA24への不信感が改めて強まりもした。
神経症と精神分析に代わり、ホラーの設定に解離性同一性障害と催眠療法を取り入れようとする試みは挑戦的だが、それが映画的な面白さに結びついているかは微妙なところ。特に主人公が見る幻覚の手垢にまみれた描写は、隠喩や徴候と結びつかない新たな視覚的恐怖の表現に達しているとは到底言えない陳腐なもの。また、終盤にかけてのひねりもありがちな発想の範疇に収まっている。しかしながら、それらの欠点を補って余りある、娘への妄執に取りつかれた母役イ・へヨンの怪演は圧巻。
土地の性質から引き出したものを融通無碍に取り入れるような演出と撮影には、実に奇妙ながら独特の味わいがある。ダンスする二人の背後で輝く自動販売機、語りと結びつくトンネルや橋、いくつもの印象的なベンチ、ハッとさせられる競艇選手養成所など、日本の空間をこのように切り取れるのかと驚かされる場面多数。土地や場所の名が複数の言語を跨いで多彩な意味や身振りへと転化する様は、劇中で時に翻訳を経ず共存する多言語や、思わぬ方向へ転がり続ける会話と共鳴するかのよう。
香港の民主化デモを捉えた優れたドキュメンタリーが作られるなか、フィクションを通して果敢に現代の香港を映し撮ろうとする試みはとても心強い。デモそのものを描くのではなく、現状に絶望し自殺を試みる若い女性と、彼女を救おうと、町中を駆け回る若者たちの、そのエネルギッシュな様はドキュメンタリータッチな映像と相まって実に魅力的。しかし、泣く芝居や回想シーン、女性を発見する際の演出に特に顕著だが、物語的な場面になると途端に嘘くさくなってしまうように感じた。
バカンスどころか、トイレすらまともに行くことができない、二人の女の子のどうしようもない青春。しかし、劇中のセリフにもあるように、そんなどん詰まりの世の中にあって、彼女たちの「底抜けに明るい性格こそが唯一の救いだ」。という店長の彼女たちにかける言葉さえ、ハイになってろくに聞いていないところがまた良い。ファーストショットから悪童っぷりを遺憾なく発揮し、最後まで底抜けにダーティーであり続ける彼女たちはビーチリゾートに差し込む夕日よりも眩しい。
女性の社会的なキャリア形成の困難さは、とてもホラーであるということを訴えている、実に社会派なホラー映画である。真相に近づくにしたがって、自分がミスリードしていることに気付かされるという展開は、サスペンス・スリラーのような映画ではよくあることだが、本作が特徴的なのは、視界が晴れてくるにしたがい、主に男性登場人物に対する見方が変化する点だろう。また視界が晴れれば晴れるほど、男性の登場人物はどこまでいっても蚊帳の外にいることも明らかになって面白い。
柳川という名は、福岡県の地名でもあり、北京語ではリウチュアンと読み、それは昔愛した女性の名前でもある。日本のとある地名と愛した女性の名前というまったく違うものが、たまたま結び付いてしまう不思議。しかしこの福岡の地が、なぜ柳川という名を持つのかという必然があるのと同じように、その女性にもその女性でしかない固有の人生が当然ある。この世界が偶然と必然の不思議なバランスで出来上がっているとするならば、本作はそんな世界の秘密を丁寧に描き出そうとしている。
「メイド・イン・ホンコン」(97)を含む返還三部作のフルーツ・チャンに師事したというレックス・レンと共同監督ラム・サム。彼らが描くのは、時代革命のさなか若者の自殺を阻止すべく奔走した民間捜索隊の奮闘と葛藤の日々だ。返還後20年以上経て若者たちが背負う底なしの絶望と、それでも手を取り合い繋ぐ一縷の希望。軽んじられる個の自由や身近な者との価値観の相違など、時代が抱える普遍のテーマがずっしりと響く。「メイド・インk~」の頃とは異なる香港の熱に胸が詰まった。
女優でもある監督の暗黒時代を笑い飛ばす意図で作られたそうで、なるほど微塵も暗くも辛くも深刻でもなく、徹頭徹尾バカバカしい青春コメディに仕上がっている。主演二人の愛らしいバディぶりも、しょっぱいながら壮大な先の読めない夏の冒険も、観ている分には痛快で単純に面白い。ただ、ドラッグ、ゲロ、脱糞、犯罪スレスレの悪さなど、連発される不浄ネタを不快から快へと転じさせ奏功させるには、やはりどん詰まった現実をもう少ししっかり見せて欲しい……と思うのは、野暮!?
ニュースキャスターの女性に宛てた一本の電話に端を発する物語。花形職業を巡る嫉妬や熾烈な競争、家庭との両立の難しさ、娘に過度な期待をかける母の存在――毎日見慣れたニュース番組の裏側に多様な問題を盛り込み、複雑に入り組む脚本を練り上げて巧みな緩急と共に演出した女性監督チョン・ジヨンの才気に瞠目。「哭声/コクソン」でもミステリアスな存在感を示したチョン・ウヒ、怪しげな佇まいのシン・ハギュン、熟練の演技が光るイ・ヘヨンの三つ巴演技合戦も見応えあり。
チャン・リュル監督“福岡三部作”の〆とされる一本。個人的な感触としては、共にゲストハウスの主人に扮したチョン・ジニョンと今作の池松壮亮の纏う空気、日本人形と少女が醸す神秘性、曖昧なまま綴られる人間関係など、「群山」に通じる匂いを強く感じた。日・中・韓の境をたゆたう監督独自の視点がより強調された本作。詩や文学への造詣、土地土地の、そして時々の空気を取り込む刹那のゆらぎ、唐突に始まるダンスや歌――川に浮かぶ小舟のごとくただ、身を委ねるのが正解。