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個人の飲む打つ買うから、家族における家父長制、さらには国単位での一人っ子政策まで、あらゆるレベルを貫く有害な男性性に翻弄される女性たちが、個と家族の価値観の狭間で板挟みにあう様をメロドラマ的に誇張して描く戦略は、見事に奏功している。家族のために自分の人生を犠牲にし続けてきた伯母と夢を諦めたくない主人公との、一筋縄ではいかない関係性を繊細に捉えた演出はなかでも白眉。検閲をかわしつつ挑発的な問いを投げかけるように映画を締めくくる強かさにも舌を巻く。
ほぼバスという閉鎖空間とスマホでの通話だけで物語を完結させるという挑戦的な試みはうまくいっていない。多彩な通話、止まらない出血、ケヴィン・ベーコン演じる存在感十分な父親との駆け引きなど、手数は十分すぎるほどに打っているが、隙間の時間をなくせばサスペンスが成立するというわけではないだろう。座席で主人公が見る幻覚や、少女を狙う怪しげな乗客をめぐる仕掛けも、画面の単調さをなんとか補おうとして入れてみた小ネタの域を出ず、有機的に機能しているとは言えない。
旧作かと疑うほどに直球の国威発揚映画となっており驚く。敵の米兵については一切それぞれの背景が描かれないだけではなく、司令官級の人物を除き、顔さえもほぼ映らないままに次々と殺されていく。一方で兵士の顔がはっきりと捉えられる中国側についても、続篇ゆえの省略の関係か家族や背景をめぐる演出は控え目で、仲間のために命を捨てる、捨て身の行為の美徳ばかりが強調される。金のかかった戦闘場面はさすがにある程度の迫力はあるものの、俯瞰とスローの乱用は看過し難い。
タイトルやあらすじから想像される内容そのままの、高級ホテルを舞台に幅広い世代の美男美女が繰り広げるこれ以上はあり得ないほどにベタでハッピーな物語は、意外性こそ全くないものの十分に楽しめる。なかでもホン・サンスの新たなミューズとなったイ・へヨンがコメディエンヌとして披露する快演は見もの。カップルの数を多少減らせば2時間に収まったのではという疑問は残るが、尺の問題さえ気にならなければ、年末年始の無難なデート映画としては自信を持って薦められる一本だ。
登場人物の誰もが皆、自分勝手で、わがままで、素直でなくて、浅はかだけれど、優しい笑顔を持っている、複雑で矛盾に満ちた人々だ。金持ちの家の実に丁寧に作られた、とても美味しそうな四川料理に比べたら、家庭的な肉まんは取るに足らないが悪くはない。悲しく辛い出来事ばかりで、思い通りにならないことばかりの私たちの人生を、そのまま見つめて描く、厳しさと誠実さが本作にはある。そしてもちろん、そんな人生を歩まされること自体を問う社会的な側面も強く持っている。
ほとんどが長距離バスという空間的に限定され、行動に縛りもあり、しかも主人公が映画開始から既に瀕死という状態で、どのようにアクションやサスペンスを展開させるかが腕の見せ所だと思うのだが、あまり有効な策はなかったように見える。同じような画が続き、展開もほとんど一本調子で、最後まで映画がドライヴすることなく終わってしまった印象。長距離バスの中という自ら選んだルールに行儀よくしたがってしまい、結果とても小さくて魅力の乏しい映画になっている。
前作を見ていればそれなりに解消されると思われるが、本作単体で見たときには、中心になる人物を把握するのも困難で、語りの視点も散漫になってしまっているように感じた。また主要人物や各隊の描き分けも視覚的なレベルから不十分だと思われる。そのため、一向に人物は個として立ってこず、最後までとある一群の兵士たちのままだが、にもかかわらず唐突に始まる人間ドラマには戸惑うしかなかった。また“英雄的”な特攻ばかりが挿入されるハイライトのオンパレードで、食傷気味に。
クリスマス、そして大晦日のホテル舞台に、様々な人たちの恋の模様を映すクリスマス群像恋愛映画だが、特にホテルの男性CEOと女性契約社員のパートは、女性を権力勾配の下に位置させ、性格は純真無垢であり、少し抜けているけど、そこがチャーミング云々という、定番的な描き方を無批判に繰り返しているように感じてしまった。ほかのエピソードでもベタな関係性や展開ばかりが目立ち、また男性同士で人工呼吸をするプールのシーンを揶揄するような演出もかなり疑問が残る。
一見ありがちな「いい話」に、中国ならではの一人っ子政策のもたらす歪、男子偏重の思想が長女に与える苦痛と犠牲、何より女性の自立の厳しさと四方から迫る理不尽を丹念に織り込んだ佳品。同じ枷を抱える伯母との対比で時代の変遷を浮かび上がらせ、母性の象徴とも言われる入れ子のマトリョーシカをさりげなく利かせるなど、人物造形含め細やかな小技が光る。社会問題を描きつつ、家庭における一人の女性の孤独と心の渇きをこそじっと見つめる監督・脚本二人の視線が沁みた。
前号の「ナイトライド」が運転する車なら、本作は乗り込んだバスの中。そこからつながる電話が事態を刻々移ろわせ、主人公の命運を左右する。無駄に動き回らぬ、今日的な省エネ・アクション。映像のトーンや音楽、夢と現を漂う思わせぶりな演出など、特異なムードは悪くないが、女ボスを巡る主人公と父親(ケヴィン・ベーコンが怪演)の関係や、別れた妻子への思いなど肝心な点までがムードに巻かれうやむやに。黒人少女に我が子を投影するならなおさら、来し方を堅実に描いてほしい。
前後篇合わせて約5時間半。製作費270億円、エキストラ7万人、中国歴代1位の興収1130億円と、異様なまでにすべてが破格。無尽蔵に続く爆撃、止まない高らかな音楽、終始浮遊するカメラがそれらと共に延々映し出すのは、朝鮮戦争における中国軍の対米死闘、その一点。ツイ・ハーク単独演出の今作は、見せ場が終盤に集中し、より平板な印象に。第7中隊の自己犠牲精神への賛美は、現在の国際情勢に鑑みるだに複雑な思い。伍万里役イー・ヤンチェンシーの眼光が唯一、映画的美点。
「猟奇的な彼女」から、既に20年以上経っていることに、改めて驚く。クァク・ジェヨンが幅広い人々の悲喜こもごもを華やかに、軽やかに描くグランドホテル形式の初春映画。歌手のマネージャーに扮するイ・グァンスのエピソードには、「猟奇〜」のチャ・テヒョン名場面を自らパロディ化する遊び心も。笑いパートを一身に請け負う自殺志願者役のカン・ハヌルが見せる恋模様も印象的。ゆるさ全開ながら、それでこそお祭り映画。暗いご時世、「狸御殿」シリーズを味わう気分で、お気楽に。