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常に生き急ぐような危うさと表裏一体の感覚は、決してべルーシの笑いから切り離すことはできない。その意味で、単に最盛期の活動を賞賛するのではなく、移民の子としての疎外感を抱えつつ笑いへと向かった幼少期から、ドラッグの濫用により破綻していく、『ハリウッド・バビロン』を体現する晩年までの姿を虚飾を交えず淡々と追う構成は正しいし、だからこそ最後に添えられた歌唱場面がひときわ胸を打つ。彼を知らない世代でも、とりわけ『ボージャック・ホースマン』ファンは必見。
色とりどりのド派手な衣装がいずれも最高なイ・ジョンジェ演じる殺し屋レイが、主役を食う圧倒的な存在感を放っている。東京のヤクザの屋敷や背後に鉄道が走るビルの一室、バンコクのごちゃごちゃした市街地といった、異国の地ならではの要素を魅力的に捉えるロケーションと撮影、グロさを抑えつつ痛みを伝えるスタイリッシュな暴力描写など、活劇としてのツボをきっちりと押さえた良作ノワール。なかでも多彩なパターンで観客を飽きさせない車を使ったアクションの演出は特筆もの。
第一子誕生を控えた刑事というトム・クルーズも真っ青の年齢不詳設定のもと、全盛期の激しさや速さとはまた異なる重みや円熟味を増したアクションを見せてくれるドニー・イェン、対する動きのキレと色気で勝負するニコラス・ツェー、二人の闘いは見応え十分。九龍城砦のようなドラッグ密売人のアジト、車や人でごったがえす街路などで展開される肉弾戦や銃撃戦は、アクションそのものに加え、随所に見られる香港ならではの空間の狭さを生かそうとするさまざまな工夫にも要注目。
どこか森崎東「女咲かせます」を想起させる展開のケイパー映画。全体をわかりやすい復讐の物語としてまとめつつ、おそらくは直接的に意識したはずの「パラサイト」のように、穴と高層ビルの対比をはじめとする高低差を階級差の主題と絡める演出を効果的に用いている。各キャラの出自を掘り下げるなど、もう少し階級のテーマを強調すればさらに深みが出たようにも思うが、気楽に観られるエンタメ作品としては、あまり深刻になりすぎないこのぐらいのバランスがちょうどよいのかも。
べルーシの目まぐるしい人生を表すように、さまざまな声や音楽が矢継ぎ早に入り乱れる編集が楽しい。人を笑わすことで自己を見出し、天狗になり、他人に嫉妬もし、女性蔑視もひどく、ドラッグに溺れた天才コメディアン。唯一無二でありながらもよく聞くスターの悲惨な末路にも思えるのは、べルーシの登場がコメディをどう変えたのかへの踏み込みが今一歩足りなかったからかもしれない。喧騒から一転、無敵だったべルーシの死後を語る最後の15分の静寂が一層の悲しみを誘う。
要は殺し屋同士の対決なのだから、まだ登場人物の名前も属性も関係性も見えていない中で、複数の時間軸と空間が交錯する構成で映画を始め、物語を複雑に見せるにたる理由を本作に見出すことは難しく、単に見る者を混乱させる作りになっているように思える。また、凄惨な拷問描写が多々あるが、残虐描写をどの程度、どういうように見せるかという点において、中途半端なカメラのフレーミングのみで処理する本作は、無駄にカメラと作り手の存在ばかりを意識させてしまっている。
ドニー・イェン演じる警部と、その警部に恨みを持つ元同僚のバトルという至極わかりやすい物語であることを早々に告げる展開がまず良い。つまりドニー・イェンらの武闘を楽しく見させられるかが映画の勝負どころで、大勢の悪漢たちに立ち向かうシーンは映画の武闘シーンの醍醐味が凝縮されており素晴らしく、子供を車の衝突から救う場面の見事なカットとアクションには思わず声をあげてしまった。そしてやっぱり武闘のトレーニングシーンがある映画は好きだと確信する。
独特なテンポとテンションで流れていく映画で、最初は下手くそで違和感のあるシーン繋ぎだと思って見ていると、いつしか癖になり、固有の文体を持っているように感じてくる一風変わった映画。もちろんそれは本作が詐欺師の映画であることと関係があり、奇妙な主人公の話術と映画の語り口がシンクロするようになっているというわけだ。派手なブラフもなく、やっていることはくだらないギャグと地味な穴掘りだったりするのだが、なんだか上手に乗せられて面白く見てしまった。
『SNL』での侍キャラや「ブルース・ブラザース」誕生の瞬間など、懐かしい映像や音楽を盛り込み綴られる、閃光と陰翳に彩られた、わずか33年の男の人生。ダン・エイクロイドとの友情、チェビー・チェイスへの嫉妬、成功と共に加速する尊大さと薬物への依存……知られざる側面が抉り出される中、特に胸を打つのは、妻に宛てた手紙に並ぶ繊細かつ率直な言葉の数々だ。孤独の淵で薬に頼ってでも逃げたかったのは、誰より厳しい自身の目、からだったのか。笑いの底の生真面目さが切ない。
東京、仁川、バンコク。次々に色や湿度を変えて繰り広げられる“殺しの痛み”の物語。狂気の殺し屋レイに、主人公インナムは問う。「ここまでやる必要があるか?」と。この一言に、映画の真髄が! イ・ジョンジェ扮するレイのやりすぎ感と、対峙するインナムの、その目に湛える哀愁の対比。ファン・ジョンミンは、どんなに過酷なアクションに挑んでも鍛えない。肉体を持たない、年を重ねた男の賭す死闘にこそ意味があるのだ。細部にまで独自の美学を宿す監督の今後にも刮目したい。
ドニー・イェンvsニコラス・ツェー。「かちこみ!」以来の好カードだ。激しく対立する二人だが、どちらが善とも悪とも単純には割り切れない。白と黒、善と悪とがマーブル模様のごとく混じり合い、表裏一体となる妙味も含め、久々の香港らしいアクションに血湧き肉躍った。実はセットだという「廣東道」での凄まじい銃撃戦やギリギリを衝くカーチェイス、撮影に二週間も費やした二人だけのラストの肉弾戦と、見どころたっぷりの126分。ベニー・チャンへの哀悼漂う劇終にも、感無量。
「ビッグ・スウィンドル!」などチェ・ドンフン作品を彷彿とさせる痛快盗人集団活劇。いつになく饒舌で軽やかなイ・ジェフンに、インディー・ジョーンズ風味のチョ・ウジン、登場からして異彩を放ちまくるイム・ウォニと、韓国映画通には面子だけでノリのよさが伝わりそうな王道の娯楽作だ。とはいえそこは韓流、裏には相当ヘビィな過去も潜んでいたりはするものの、最後まで痛快さは崩さず。公開時、本国で評された通り、“コロナブルー”を吹き飛ばすには最適の一本なのでは。