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監督自身の記憶が元になって作られているという。訳あって未婚で臨月状態のサミアと彼女を放っておけないシングルマザーのアブラ、ふたりの距離感が素晴らしい。過剰さよりも日常に寄り添う優しい光の中で、何度となく心を通わせるエンパシーの物語。アブラの「私に男が必要に見えるのか?」というセリフは純粋にかっこいい。女性が女性として生きてゆくことの過酷さと尊さをこれでもかと嚙みしめる。二人の間を行き来するアブラの娘も愛おしくサミア同様思わず微笑みがこぼれる。
ダンスとはこんなにすごいものなのかと思い知る。血の滲むような猛練習を感じさせない無重力に生きるかのようなしなやかな動き。古典とストリートを融合させた新しいスタイルに始終目を奪われる。治安の悪いメンフィスに生まれ育ち世界的ダンサーとなるまでの奇跡の物語であると同時に、リル・バックの飄々とした軽やかな人物像にも惹きつけられる。世界が広がってゆく瞬間を見た。特に映画後半のスピード感に安心して身を委ねることができ心地よい。創作意欲を刺激する幸せな作品。
チープなこと自体は何も悪くないのだが(むしろそういう演出は好きなのだが)ひとつも目新しいアイデアが盛り込まれていないのはちょっと残念。どうしても過去のB級ホラー系作品と比べてしまう。殺人鬼の兄弟が気持ち悪い演技をしているのが見どころだろうか。最初に監禁された妊婦の女性がキーになるかと思いきや、あっさり物語から退場してしまうなど脚本も中途半端な印象。ラストに出てきたアレにも思わず苦笑だが、驚いたといえば驚いたので何か気になる人はぜひ本篇で!
好き勝手に生きる夫とそんな夫を愛し健気に生きる妻。夫婦の価値観の違いに焦点を当てているが、モンゴルの美しく広大なロケーションのなかで、延々と続く夫婦のすれ違いが間延びして感じられる。夫が都会へ出たい衝動と、妻が草原地帯のゲルに止まりたい理由をもう少し深く掘り下げて垣間見たかった。妊娠と体調不良で夫が愛に気づくのも、愛の物語としては男性的ご都合主義でやや昭和調。極めてホモソーシャルなカラオケのシーンではビール瓶のあまりの多さが可笑しく楽しい。
冒頭のショットに欺瞞を感じ、それが晴れることはなかった。サミアのクロースアップにオフの声。「その体で大丈夫?」。フレーミングが彼女の顔を「見せる」ためではなく、その体を「隠す」ために用いられている。しかも隠すことで、小さな謎を作り出し、観客にその開示を期待させる。これは信頼できない、まずそう思った。実際、原題「アダム」も同じからくりだと最後にわかる。脚本の展開はあたかもピタゴラ装置のようで、撮影手法もカット割りも機能の確認に終始している。
物語性が希薄である。むろん良い意味だ。基本は時系列に沿って進んでいくので、展開はやはり成功譚を免れないものの、どこか起伏に欠けているのだ。メンフィスからロサンゼルスへ、そしてパリへ。あたかもストリートからショービズの世界へ、そしてアートワールドへの移行だが、この映画はそれをあくまで平行移動として描き、上昇の運動を導入しない。リル・バックはSNS時代のスターにちがいないし、その立役者S・ジョーンズは登場するとはいえ、それも逸話の一つにすぎない。
邦題から想像されるとおりで、それ以上でも以下でもない。犠牲者は初めから最後まで犠牲者のまま、犠牲者の役から逃れられない。殺人鬼は殺人鬼であり、狂人は狂人であり、怪物は怪物である。辺鄙な場所は辺鄙だから辺鄙なのだ。驚きはいらない。逸脱も過剰も御法度だ。「なぜ浮気したのか」「なぜならそういうことが起こったから」。みなが決められたことを決められたとおりに執り行うさまを茶番と呼ぶなら、これはホラーではなくコメディである。別に面白いわけではないんだけど。
羊と雲が形態の類似で繋がれるなら、青い空は緑の草原であり、馬とバイクは並んで走る。広大な草原も、はるかな地平線も、雲以外に陽を遮るもののない一面の空も、街に出ればカラオケのビデオに使われている。吹雪がもたらすドラマもありふれたものだ。いかにしてクリシェの上流にとどまるか。この映画が西部劇を思わせるとすれば、それはたとえばこんな問いを通してである。神話と伝説の生まれた地点を指し示すこと。それにはのっぺりと人物を照らす均一な光が必要なのだ。
びっくりしたシーンがある。ずっと我慢していた妊婦が、いきなりカセットテープをかけ、パン屋の女主人に聴くことを強要するシーン。女主人は、夫が死んでからずっとそのカセットテープを封印していたのだが、妊婦の過剰なお節介がその封印を解く。摑み合いからの抱き合ったままの踊り、そして涙。そんな無茶なと思うが、無茶を通り越して、感情がむき出しになるすごい芝居になっていた。傑作です。ラスト近く、子どもを抱きながらボソボソ歌う子守唄はマジ号泣でした。
リル・バックという人を知らなかった。どういう人かを知るには、いい映画と思う。見れば見るほどすごいダンサーだ。どうやったらあんな動きができるのか。「瀕死の白鳥」も本当に鳥に見える瞬間がある。軽やかな動きは見ているだけで気持ち良かった。しかしこれ、ライブで見たらもっと楽しいだろうなと思ってしまった。それに、貧しい少年が努力の果てに成功するって話にいまいち乗り切れなかった。ダンスに興味がある人が見ればもっと面白かったかもしれない。
何考えてるかわかんない殺人鬼の喋ってることが、割とわかりやすいセリフだったのが、がっかりした。やられるやつらもどこかで見たことあるようなキャラばかりで、新鮮味がなかった。躊躇なく人を殺す殺人鬼たちは気持ち悪いし、残虐描写が徹底的に汚く臭そうなのは、すごいと思ったが、真面目に描写するほどこちらが冷めてしまう。妊婦が自殺したり、よく考えてみるとひどいことが起こっているのに、そこへの言及がないからだろう。せめてユーモアで包んでほしかった。
行き先を言わずに出ていきたくなる夫の気持ちがよく分かる。なんか縛られてる気がするんだよな。久々に帰ってきた夫に、最初ブスッとしていた妻がお土産一つでコロッと笑顔になって甘える仕草のなんと可愛いことか。朴訥な二人の戯れあいが実に微笑ましい。そして二人が初めてスマホを買って、離れた部屋でお互いの動画を見ながら話すシーンがいい。スマホという道具があって初めて自分たちの本音が言えるのだ。簡単に夫婦愛を謳いあげないラストも良かった。