パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
かなり大胆な設定の怪談ふう因縁話で、ペットロボットが狂言回し的な役を担っているのがミソ。舞台となっている榛名湖に〈甦りの女神〉が棲むという伝説があり、湖畔や森の映像はそれなりに美しい。けれども器用でいくつもの仕事を掛け持ちしている主人公少年の周辺エピソ-ドが不必要にゲスっぽいのと、説明台詞が目立って多いのが興を削ぐ。榛名湖伝説を伏線にした少女の登場も、後付けの説明台詞で処理されている。奇跡にも背景は必要だが、説明ではない演出が欲しかった。
むろん私も小中監督の商業映画デビュー作は公開時に観ているが、80年代前後は日本映画の大変革期にあり、斬新な自主映画や作家性の強い娯楽作品が次々と登場、そちらの方ばかりに気が行って、少年少女が二つの世界ですれ違うという話、どうもスッキリしなかった。でそのセルフリメイク、今度は違う戸惑いが。あら、あの少年と少女、そして監督はまだパラレルワ-ルドから抜け出せてなかったのね。ひょっとしたらこれも宇宙のいたずら? いやこれは冗談。若い方、ぜひ体験を。
日本復帰前の沖縄の人々にかけられていた無謀な物品税。その代表とも言えるサンマ税に異議を唱えた魚問屋の女将、ウシさんを追った裁判ドキュメンタリーだが、残念なことに、素材と資料等の情報不足で、実に中途半端な作品に。それをはフォローするためなのか、沖縄の噺家を使って笑い話に仕立てているのだが、それが逆にウシさんまでからかっているようにも見えなくもなくいささか本末転倒気味。当時の沖縄の実情にも触れているが、ザックリ感は否めない。
あらゆる色のパステルカラーで彩色されたカラフルな画像に、ヘッドフォンを耳から離さない無口な俳句少年と、カワイイを連発するマスク少女。互いの泣きどころの視覚化ってことらしい。それはともかく、俳句という言葉による心情スケッチを字幕化しつつ、青春の定番要素をゴッソリ盛り込み、さらに思い出のレコードを探す老人のためにせっせと大奮闘、なんとまぁ良い子たち。夏祭りに花火という定番中の定番のクライマックスも、お約束事として据わりはいい。悪意ゼロのアニメ。
主演・土師野隆之介の表情、そのあざとさのない喜怒哀楽の変化に引き込まれた。彼をとりまくひとびとの描写は時に冗長にも感じられるが、豊かな実在感のあるセリフといい、一人ひとりを生きた人間として描こうとする田中監督の実直さゆえと大目に見たい。本吉修の撮影、自然描写は文句なしに素晴らしいものの、屋内のさりげない対話シーンにもう少し工夫がほしいところ。なにより近年の日本映画では珍しく、音楽が適切に盛り上がり、適切に抑制されている点に感心した。
映画少年の面影あざやかな小中和哉監督が少年少女の「時」を初々しく刻み込んだオリジナル版から35年。このリメイク版における監督の視線には、親の世代としての慈愛と達観が見て取れる(劇中でそれを象徴する存在がヒロインの母親を演じる有森也実だろう)。その大人の視線があればこそ、鈴鹿央士、秋田汐梨ら現在の少年少女の「時」が、ノスタルジーの枷を逃れ、いきいきと迸る。撮影(高間賢治)もVFXも特別斬新なものはないが、「時」に対する堅実さが品格をうんでいる。
沖縄のドキュメンタリーは数あれど、サンマの輸入関税をめぐる、いわゆる「サンマ裁判」を軸に据えたユニークな一作。落語の語りや再現劇、アニメーションなど、さまざまな意匠をぶち込みつつも視点が拡散しすぎていないのは、玉城ウシという人物に対する山里孫存監督の個人的興味が根っこにあるためだろう。沖縄においてさえ(あるいは沖縄であるがゆえに)政治と生活を分断させしめようとする日本的メディアの風潮のなかで、生活が政治を動かすことの意味を再考させられる。
鈴木英人か永井博をほうふつとさせる色使いと均質な描線。シティポップ隆盛の昨今を意識しての企画だが、さらに俳句というファクターがそこに加わる。かつて80年代に風景の均質化をポップに切り取る映画作家とみなされた森田芳光は、同時に地方都市の空洞化と日本的言語表現の変容の問題にこだわりつづけた。この作品は、シティポップの言語面でのアンリアルなリアリティが、こうしたいくつかのねじれと二重化の上に成立していることをみごとに描き出していて虚を突かれた。
モデルや実際の事件に取材した部分をもつ話の進む方向が、いわばシナリオ教室的ルールを無視しているようで、筋とは別なハラハラがあり、編集や音楽の入れ方に粗さもある。とはいえ、そんなことを欠点としないような、技巧やクオリティー信仰に足をとられない田中監督の家内工業的情熱に拍手したい。16歳の主人公倫太郎の造型が最高。能力の高い「いい子」。演じる土師野隆之介は、どの作業服を着てもよく似合う。そしてみなさん、大空眞弓さんがさすがという感じで出てますよ!
自作のリメイク。小中監督の作戦、どうだったのか。評者は未見の35年前の作品でヒロイン理沙役の有森也実が、ここでは秋田汐梨演じる理沙の母親役。そんな作品を撮るふしぎさ。それが他作品で変わった子を演じてきた秋田と昭雄役の鈴鹿央士のオーラに作用するのを期待したが、見えてこない。パラレルワールドに元の世界での意識を持続させて入る昭雄の心理も、あまり画に出ない。CGのシリウス流星群以上に人と風景と言葉に誘発するものがあれば、ラスト、もっとときめいたはずだ。
海辺にうちな〜噺家・志ぃさーが登場して語りだす。微温的の一歩手前のその語り、そして似た調子の川平滋英のナレーションに乗って、さまざまな質の記録映像がつながれる。サンマ裁判の玉城ウシが目玉ではあるが、下里恵良と瀬長亀次郎という対照的な政治家も「主役」の一角。下里のところは、再現映像によるサイレント活動写真。沖縄の過去をめぐる「啓蒙」には、「啓蒙」で終わることの一般的な限界とは別なモヤモヤを感じることが多い。山里監督はドタバタでなんとか乗り切ったか。
俳句を使ったアニメ。老人フジヤマの俳句は監修役でもある歌人黒瀬珂瀾の作。主人公チェリーの俳句は複数の高校生たちの作。まず、そのへんが微妙にユルイ。劣等感もつ者どうしのボーイミーツガールで、作画、演出、ともに古い手が連発される。なにかが割れそうだと心配させたら、ちゃんと割れるという具合だ。でも、チェリーも、彼がなかなか好きだと言えないスマイルも、憎めない。そして大事な歌がなんと大貫妙子の曲でその歌声が響く。イシグロ監督、俳句好きだったらうれしい。